2017年4月3日月曜日

WORK SHIFT を読んで





・技術革新と人生観の変化

本書の構成は、将来(2025年)の働き方を想像するにあたり、どういった変化が世の中に生じ、自分達はどういった働き方に〈シフト〉していくべきか、どういった選択肢が広がっていくか、人生を積極的に生きるにはどうするべきかを、かなり幅広い視点から論じています。
話題の範囲は豊富なので、自分に必要な部分を本書から補っていけば良いと思います。

そう説明すると、なんだか将来予想図のように感じますが、この本は将来の仕事について語った本ではく、今まさに自分のキャリアや人生の価値観をどう考えるか。私達の日々の直近の問題を扱った本だと自分は感ています。

なぜなら、本書を読んで強く感じたのは、多くの技術革新が世界中の人の働き方や人生の価値観を変えることになります。そして、それは、今後ますます助長されることになり、恐らく非可逆的なものになるでしょう(トランプ政権みたいな、懐古的な話もありますが・・・)
そして、そういった本書で扱っている非可逆的な変化は、今すでに断片的にも発生していることがほとんどだからです。

こういった変化は今でも多くの仕事を奪うだけでなく、多くの人の人生観をネガティブにもポジティブにも変えています。
そして気をつけたいのは、多くの人には、知らぬうちに環境が変わってしまうことだと思います。
更に、もっと怖いのは、環境の変化から気づかぬうちに人生観も変わってしまうことが起こり得ることです。つまり、自分自身の変化にも意識的に気づかないことです。

そういったことを防ぐために、どういった変化が起こるかを考え、その変化に積極的に対応するために何をすべきか、本書から学ぶキッカケを得ることができると思います。

・来る社会の変化とは

今後予想される社会の大きな変化の流れについて、本書では5つの要因としてまとめています。

1.テクノロジーの進化

インターネットの更なる普及、A.I.の進化、ソーシャルな参加の増加、メガ企業とミニ起業家の台等などがあげらています。
もうすでに始まっている話だと思いますが、今後影響度が更に高まるのでしょう。
 
A.I.の進化でいえば、単純労働はもちろん、課題やルールが明示的な作業(囲碁や将棋が良い例でしょう)や一部の知的産業は、どんどんヒトと置き換えが進むと考えられています。

それは、より専門性の高い職種や置き換えが少ない職種へと意識的に変化してく必要があることを示唆していると思います。

2.グローバル化の進展

まだまだ、この大きなグルーバル化の流れは変わらないと予想します。

新興国型のイノベーションの発生、インドと中国が人材輩出大国へ、世界中でメガシティが形成、同時にスラム街も形成 等があげらています。

先進国が甘い蜜を吸っていた時代は幕を閉じ、人材のライバルは世界中に出現する時代と変わっていきます。
また格差も広がります。格差は劣等感と恥の意識を広げることに繋がり、孤独感を感じやすい社会を増長します。

また、「デコボコな世界」と呼ばれるような、地域の差異が顕著になります。これは、メガシティ、巨大生産拠点、クリエイティブクラスター、地方部といったような分類がなされ、各地域にその特色に見合った人が集まり、それらの人にむけて必要なサービスが発生します。

3.人口構成の変化と長寿命化

人口増加や移住の増加、更には長寿命化という影響が、働き方にも影響を与えます。

寿命が長くなることで労働できる年齢も増えます。
そのため、一つの仕事を続けて60歳で仕事を辞めるという旧来型の働き方ではなく、長い労働年齢の間で仕事を変えたり、時には30代40代のどこかで大学で学んだり、長い休暇をとったり、1年間ボランティアをしたりといった働き方にシフトするヒトも増えるでしょう。

4.社会の変化

表現を変えれば、価値観の変化です。

家族、自分、仕事とその他のバランス対する価値観の変化、大企業や政府への不信感、幸福感の減少、余暇時間の増加

などがあげられています。

こういった価値観の変化と現在の社会構造が提供する価値観が歪な状態にあると思います。特に日本は人材の流動性が低いことが、問題を難しくしていると感じます。

また、2025年には今の若い世代(Y世代)が社会への影響度を増すポジションに移行します。この世代は、自由な仕事を好み、専門性に磨きをかけ、自分たちの願望を雇用主が満たさない場合の我慢が短い世代と捉えられているようです。

5.エネルギー・環境問題の深刻化

目に見える形で被害が大きくなることで、持続可能性を重んじる文化が世界的に形成されたり、エネルギー価格の上昇や課税などによって、物理的な移動のコストが上昇する可能性があると著者は主張します。

・我々が取るべき行動は

上記の変化に対応するために、著者は3つの〈シフト〉が必要だと考えています。

1.専門技能のシフト(知的資本の強化)

 ゼネラリストの時代が幕を下ろし「専門技能の連続的習得」を通じて、自分の価値を高めていかく必要があります。ゼネラリストはA.I.やインターネットの普及や、何より一つの会社が社員と長い契約を今後も結ぶことが考えにくいため、必要性が減ると考えられます。また、時代の変化のスピードも増えるだけでなく、労働できる年齢も増え、更には、世界中にライバルが登場するため、専門技能を1つに絞ることは大変危険だと主張します。これは10年後、生き残る理系の条件と通じる部分があります。

 未来にどういう技能と能力が必要かを知り、その分野で高度な技能を磨くと同時に、状況に応じて柔軟に専門分野を変えることが求められます。

 個人の差別化も難しくなるので、自分の技量を証明する必要性も出てきてそういったサービスも登場するだろうと主張します。

 個人的に、肝に銘じておきたいことは、専門技能の習得には時間がやはり必要ということです。仕事がそういう場をたまたま提供したり、必要に迫られるも十分な時間が確保できる場合はいいですが、自分から横の領域に広げるには、ある程度の時間を有することになります。

 こういったことを助けるためにも、テクノロジーの進化や、下記の人的ネットワークというのが重要になります。

2.個人主義と競争主義を見直し人的ネットワークの時代へ(人間資本の強化)

 多様性のあるコミュニティや、精神のバランスを保つための愛情のある人間関係を意識的に形作っていく必要があると主張します。

 社会変化からも高度な課題が増え、イノベーションは、多くの人数で実践する必要も出てきます。こういったマスイノベーションが増えると著者は予想しています。
 
 人的ネットワークは、1の専門技能のシフトにも通じます。自分のキャリアを脱皮させる手助けにも人的ネットワークは力添えをしてくれます。学び合いの共同体を築くことができるからです。

 人的ネットワークを築くのが苦手な人がいます。私もそうです。著者は、カメレオン人間になれ。というアドバイスを送っています。自分の振る舞いをそのグループの暗黙のルールに合わせることが重要だと述べています。これは、核となる信念がないこととは異ります。

3.ライフスタイルの見直し(情緒的資本の強化)
 
 モノを消費するスタイルから、質の高い経験と人生のバランスを重んじる姿勢への変化の必要性を述べています。

 個人的には、残業して家庭をないがしろにし、リタイアすると何もない。という生き方を選択する人は今後減っていくと思います。もちろん、リタイアそのものの考え方も変わってくることでしょう。

最後に

上記のように整理すると、やはりこれは10年後の問題ではありません。今まさに直近で起こっていることばかりです。そのため、今後より一層こういった流れが増えていくのだと感じさせます。

自分自身に振り返ってみると、改めて専門領域を増やす必要性と大切さが身にしみます。
また、人的ネットワークは積極的に広げてこなかったタイプなので、もっと広げた方が良かったと反省しています。
特に、ポッセと呼ばれる同じ志を持つ仲間。こういった人を見つけるのは、自分は苦労するタイプですが、自分の働き方の選択肢を広げるにあたっては重要かと思いました。