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2017年12月3日日曜日

イーロン・マスク 未来を創る男 を読んで




断片的なセンセーショナルな記事でしか、知らなかったイーロン・マスク。

そんな彼をきちんと知るのに良い本です。

どういった流れでスペースXやテスラ、ソーラーシティの事業に携わったのか、知らない方多いと思います。

また、何故、宇宙やエネルギー分野に挑戦するのか?
彼なりの哲学や生い立ちを理解すると、彼が進もうとしている方向が分かります。

ものづくりの姿勢も、エンジニアとして見習う部分が多いですよ。


いくつかメモを残します。


”テスラはディーラー網を持たず、ウェブで直接販売する。・・・販売後の保守点検で儲けるようなビジネスモデルは考えていない。”
→素晴らしいですね。でも、まだ、テスラの収益モデルは構築段階という理解で良いんですかね?スマートモビリティやエネルギー産業などと呼ばれる切り口で、収益を得る方向に舵を切っていくんでしょうか?
このまま赤字続きで終わらないで欲しいです。

”彼はヒューズやジョブズとは比べものにならないくらい壮大な目標を持っているようだ。航空宇宙や自動車のような、すでに米国があきらめかけていた産業にあえて打って出て、これまでにない素晴らしい産業に再構築しようとしている。”
→厨二病と言われそうなアイデアを実現してしまう所が、彼の強みだと思います。
特にハードウェアが大きく絡む部分で、ここまで差別化し挑戦しているのは勇気がわきますね。
是非、今のプロジェクトもビジネスとしても成功して欲しいです。

”厳しい危機に見舞われても集中し続ける能力は、たしかにマスクの強みに違いない。
「普通の人間ならば、あれだけのプレッシャーにさらされたら、どこかで判断ミスを起こすでしょう。イーロンはそんな状況でも明快で長期的な意思決定が下せる人間でる。難しければ難しいほど、彼は力を発揮するんですよ」”
→プライベートも含めて、マスクみたいな人生を耐えることはできないと思います。

(ダイムラー幹部の)訪問前に、試作車2台を完成させてダイムラー幹部らを驚かせてやろうと考えた。訪問当日、何も知らない幹部らは、テスラでこれから話し合うはずの「AクラスEV版」を目の当たりにし、バッテリーパック4000個を即座に注文した。後にトヨタにも同様の”歓待ぶり”を披露し、契約を獲得している。”
→こういう職場羨ましいわ。

”大手ならアルファ版で200台、さらにベータ版になっても数百〜数千台を使う。それがテスラでは15台ほどで衝突試験からインテリアデザインまで終わらせてしまうのだから、信じられないのも無理はない。・・・
いちいち会議を開いて、何の代替案もないまま問題点を報告するよりは、優秀なエンジニアがその場で対処したほうが話は早いのである。”
→これは良し悪しあると思うけど、そういうスピード感や、それで完成車を市場に出した力はすごいと思います。

”『物理学のレベルまで掘り下げろ』”
→個人的には、一番ぐっと来ました。

”(ギガファクトリーについて)そんなことは電池メーカーがやればいいんだから、くだらないアイデアだとね。でも・・・どこも数十億ドルを投資する気はさらさらないと言っている。・・・自動車メーカーは電池の大量購入を保証しない。だから電池メーカーはこれ以上作れない。つまり自前で作らなければ、十分な量を確保できないできないんです。”
→電池産業を制するものが、今後のビジネスを制しそうですね。

”欧州も日本もロシアも中国も人口構造の内部崩壊に向かっている。・・・優秀な人々も子供を持つべきだと言っているんだ。少なくとも人口置き換え水準は維持しないと人口は減るばかりだからね。特に優秀な女性たちがまったく子供を産まないか、産んでも1人なんだ。そう聞けばとんでもない危機であることが分かるでしょう?”
→子供好きの一面もあるようです。
また、人類を存続させるという課題認識があるので、人口構造の問題も気にしているみたいです。

”本当に「たゆまぬ追求」という言葉が似合う人物との思いをあらためて強くした。しかも、その追求の精神は、我々の想像をはるかに超えたレベルなのだ。ここまで熱い思いで何かを追い続ける人を私は見たことがない。”
→普通は無理な解決策だと思ってしまうところを、可能にしてしまいますよね。それに、前人未到の数と規模の新規事業創出者。技術的にもビジネス的にもハードルの高いものに挑戦しいくつかの成功を得ているのが本当にすごいところです。



2017年5月18日木曜日

医療業界に破壊的イノベーションを 「医療イノベーションの本質」



 はじめに

自分は、エンジニアとして、医療業界に関連した仕事をしています。

しかし、医療業界は、非常に複雑な業界であるため、なかなか全体像を把握しにくく、俯瞰的に業界の問題や今後の方向性を考えるのが難しいと感じていました。

その中で、イノベーションのジレンマで有名なクリステンセンが、医療業界での破壊的イノベーションについて記した本書に出会ったため、読んでみました。

本書は、医療業界のコストを劇的に下げ、より品質の高いサービスを提供するには、どうすれば良いか?という問いに答える作品になっています。

医療業界にも破壊的イノベーションが必要

医療業界のコストを劇的に下げ、より品質の高いサービスを提供するにはどうすれば良いか?

その実現には、他の業界と同様に破壊的イノベーションが医療の世界でも必要だとクリステンセンは主張します。
それは、他の業界を見てきても明らかなように、コストを下げ品質も向上させることが可能なのは破壊的イノベーションだけだからです。(一つの例外もなく!)

一方で、医療業界には、国などが定める償還制度や規制があり、更には古くからの組織制度が残っている部分があります。

古くからの組織制度やビジネスモデルは、破壊的イノベーションを実施することを困難とさせています。

同様に古くなった償還制度の一部は、破壊的イノベーションを阻害する要因にもなります。

それは、様々な技術革新が業界を大きく変えるチャンスを逃すことにつながっています。

破壊的イノベーションを促すために必要な総合病院の変化とは

本書での大きな一つの主張は、複数のビジネスモデルを抱えてしまっている総合病院をそれぞれのビジネスモデルへ解体することです。

病院は下記の3つのビジネスモデルを実施してしまっている。と、クリステンセンは主張します。
・ソリューションシップ型
・価値付加プロセス型事業
・ネットワーク促進型事業

それぞれのビジネスモデルは以下のような特徴をもっています。

・ソリューションシップ型
問題を診断し、解決策を提示する。出来高払いで支払いを受ける
精密医療ではなく直感的医療に頼るような疾病、治療を扱う

・価値付加プロセス型

確定診断のついた問題を比較的標準化された手順で治療する
アウトカムに基づく支払いを受ける

・ネットワーク促進型

専門家や患者が情報交換し、助け合う
調整役は通常会費による支払いを受ける
慢性的な疾病が扱いやすい

適したビジネスモデルをもった組織に解体することで、非常に高額で不明瞭となってしまった、莫大な間接費の削減を狙います。

現状では、それぞれのビジネスモデルは異なった利益創出の方法を抱えているにも関わらず、組織が一つのため、組織体制やビジネスモデルを最適化することを拒み、問題を解決することができず、かなり歪んだ形で間接費を加えた価格設定になってしまっています。

解体することにより、コストだけでなく患者の用務に応じた合理的な統合を果たすことも可能となり、質も高まると主張します。

更に、病院が解体されると同時に、第2の波が来ると主張します。
それは、いわゆるテレメディシン(テレメディスン)です。

今の医療は解決策のある高コストな病院へ、患者を来院させるのが一般的ですが、音楽が自宅でダウンロードできるようになったように、解決策をより身近な場所へ移行し、医療費の発生場所を変える流れが来るだろうと主張します。

簡易的な自己診断は、すでにウェアラブル端末なども含めて実現されてきていますが、そういった流れがより一層強まる方向に進むということでしょう。
(もちろん電子カルテや通信技術などのインフラが整ったことも重要な要素です。)

イノベーションを阻害する償還制度

償還制度もイノベーションの阻害要因となります。

本書では、慢性腎不全を例にあげています。

動静脈シャントと透析センターが作られ、急性疾患から慢性疾患へと多くの腎不全は移行していきました。

しかし、近年では在宅透析が、透析センターと同様のインパクトと一層のコスト削減効果があるにも関わらず、その普及を遠ざけている現状があるようです。

その理由は透析センターなどを前提に作られた償還制度にある と筆者は主張します。


医薬品業界の未来


破壊的イノベーションを促す重要な要素の一つに牽引技術があります。

医療業界の牽引技術を持つのは、医薬品メーカーや、医療機器メーカーが主となるでしょう。

製薬業界では以下のような変化が発生すると考えられます。

①分散化、精密化された将来の医療では、ブロックバスター薬は滅多にみられなくなるだろう

②自己診断が医療の出発点となり、患者に直接医薬品を売り込む手法が広がりを見せるだろう

③診断薬が採算性の良いものとなり、償還制度も見直される可能性があるだろう

④現在巨大な製薬メーカーは、誤ったアウトソーシングを実施し、他の業界でも起こったように、将来の利益創出として重要な分野を自ら切り離すだろう

その重要な分野とは、臨床試験の管理と精密な診断薬の開発である

何故なら将来の牽引技術は、精密な診断と効果の期待できる治療を結びつける行為が利益の中心となると考えられるからだ


⑤ジェネリック薬品がメーカーが特許医薬品の開発を実施し、上位市場へ参入するだろう 

注目すべきは、精密な診断が一層可能になるにあたって、治療薬の選択肢が分散化されると同時に、効果が期待される治療と診断内容を結びつける行為が利益の中心となることです。

それにより、現在巨大製薬メーカーが現在のビジネスモデルの最適化からアウトソーシングしようとしている臨床試験の管理と精密な診断薬の開発が、今後のイノベーションの中心となると予言している点でしょう。

また、精密な診断は、医学の専門性自体が誤って定義されていたことを認識させるという主張も注目する点ではないでしょうか?

医療機器業界の未来

続いて医療機器業界の破壊的イノベーションです。

まず、診断機器は集約されていたものから、再び分散化すると考えられます。
それは、通信事業が電報局から家庭電話、携帯電話に変わったのと同様です。

例えば、血液検査や検体の分析作業は広範囲に近年集約化されましたが、小形な分析装置により一部は再び顕微鏡の時代のように医者の元に分散化されていくと考えられます。
また、それが個人の手元に移行すれば、テレメディシンをより助長することにも繋がります。

また、画像診断などは、より低コストの場所で、より高度な治療を行う事を可能とし、低コストの医療提供者が高コストの同業者を破壊する助けとなる。と主張します。
つまり、プロの専門性をコモディティ化することを医療機器メーカーは助長し、それは従来の病院組織の解体を助長することにも繋がります。

もちろん、医療機器は診断だけでなく、治療方法を根底から変えていくことも可能です。
これはすでに始まっている血管内治療がいい例だと本書では述べています。

そして何より、医療機器業界は、直感的医療 経験的医療 精密医療という流れに沿って疾患を推し進める組織となることができます。
これは医療がアートの分野からサイエンスになることを助長し、コストを大きく下げる要因につながるでしょう。


クリステンセン曰く医療の牽引的技術は診断能力です。

医療だけでなくどの業界にも、問題を精密に定義することは、解決策を開発する前提となるからです。

医療機器メーカーや製薬メーカーは、診断能力という索引技術を有する組織であり、その影響は、様々な分野にわたることを本書を通じて改めて実感しました。

最後に

本書はこれ以外にも、医療教育や、償還制度など多岐に渡るイノベーションの可能性について述べています。

米国に限定したような部分や、守備範囲の広さから理解に苦しむ部分もありますが、多くの医療業界に関連する人が読んで、ヒントを得ることができる一冊だと思います。


2017年4月3日月曜日

WORK SHIFT を読んで





・技術革新と人生観の変化

本書の構成は、将来(2025年)の働き方を想像するにあたり、どういった変化が世の中に生じ、自分達はどういった働き方に〈シフト〉していくべきか、どういった選択肢が広がっていくか、人生を積極的に生きるにはどうするべきかを、かなり幅広い視点から論じています。
話題の範囲は豊富なので、自分に必要な部分を本書から補っていけば良いと思います。

そう説明すると、なんだか将来予想図のように感じますが、この本は将来の仕事について語った本ではく、今まさに自分のキャリアや人生の価値観をどう考えるか。私達の日々の直近の問題を扱った本だと自分は感ています。

なぜなら、本書を読んで強く感じたのは、多くの技術革新が世界中の人の働き方や人生の価値観を変えることになります。そして、それは、今後ますます助長されることになり、恐らく非可逆的なものになるでしょう(トランプ政権みたいな、懐古的な話もありますが・・・)
そして、そういった本書で扱っている非可逆的な変化は、今すでに断片的にも発生していることがほとんどだからです。

こういった変化は今でも多くの仕事を奪うだけでなく、多くの人の人生観をネガティブにもポジティブにも変えています。
そして気をつけたいのは、多くの人には、知らぬうちに環境が変わってしまうことだと思います。
更に、もっと怖いのは、環境の変化から気づかぬうちに人生観も変わってしまうことが起こり得ることです。つまり、自分自身の変化にも意識的に気づかないことです。

そういったことを防ぐために、どういった変化が起こるかを考え、その変化に積極的に対応するために何をすべきか、本書から学ぶキッカケを得ることができると思います。

・来る社会の変化とは

今後予想される社会の大きな変化の流れについて、本書では5つの要因としてまとめています。

1.テクノロジーの進化

インターネットの更なる普及、A.I.の進化、ソーシャルな参加の増加、メガ企業とミニ起業家の台等などがあげらています。
もうすでに始まっている話だと思いますが、今後影響度が更に高まるのでしょう。
 
A.I.の進化でいえば、単純労働はもちろん、課題やルールが明示的な作業(囲碁や将棋が良い例でしょう)や一部の知的産業は、どんどんヒトと置き換えが進むと考えられています。

それは、より専門性の高い職種や置き換えが少ない職種へと意識的に変化してく必要があることを示唆していると思います。

2.グローバル化の進展

まだまだ、この大きなグルーバル化の流れは変わらないと予想します。

新興国型のイノベーションの発生、インドと中国が人材輩出大国へ、世界中でメガシティが形成、同時にスラム街も形成 等があげらています。

先進国が甘い蜜を吸っていた時代は幕を閉じ、人材のライバルは世界中に出現する時代と変わっていきます。
また格差も広がります。格差は劣等感と恥の意識を広げることに繋がり、孤独感を感じやすい社会を増長します。

また、「デコボコな世界」と呼ばれるような、地域の差異が顕著になります。これは、メガシティ、巨大生産拠点、クリエイティブクラスター、地方部といったような分類がなされ、各地域にその特色に見合った人が集まり、それらの人にむけて必要なサービスが発生します。

3.人口構成の変化と長寿命化

人口増加や移住の増加、更には長寿命化という影響が、働き方にも影響を与えます。

寿命が長くなることで労働できる年齢も増えます。
そのため、一つの仕事を続けて60歳で仕事を辞めるという旧来型の働き方ではなく、長い労働年齢の間で仕事を変えたり、時には30代40代のどこかで大学で学んだり、長い休暇をとったり、1年間ボランティアをしたりといった働き方にシフトするヒトも増えるでしょう。

4.社会の変化

表現を変えれば、価値観の変化です。

家族、自分、仕事とその他のバランス対する価値観の変化、大企業や政府への不信感、幸福感の減少、余暇時間の増加

などがあげられています。

こういった価値観の変化と現在の社会構造が提供する価値観が歪な状態にあると思います。特に日本は人材の流動性が低いことが、問題を難しくしていると感じます。

また、2025年には今の若い世代(Y世代)が社会への影響度を増すポジションに移行します。この世代は、自由な仕事を好み、専門性に磨きをかけ、自分たちの願望を雇用主が満たさない場合の我慢が短い世代と捉えられているようです。

5.エネルギー・環境問題の深刻化

目に見える形で被害が大きくなることで、持続可能性を重んじる文化が世界的に形成されたり、エネルギー価格の上昇や課税などによって、物理的な移動のコストが上昇する可能性があると著者は主張します。

・我々が取るべき行動は

上記の変化に対応するために、著者は3つの〈シフト〉が必要だと考えています。

1.専門技能のシフト(知的資本の強化)

 ゼネラリストの時代が幕を下ろし「専門技能の連続的習得」を通じて、自分の価値を高めていかく必要があります。ゼネラリストはA.I.やインターネットの普及や、何より一つの会社が社員と長い契約を今後も結ぶことが考えにくいため、必要性が減ると考えられます。また、時代の変化のスピードも増えるだけでなく、労働できる年齢も増え、更には、世界中にライバルが登場するため、専門技能を1つに絞ることは大変危険だと主張します。これは10年後、生き残る理系の条件と通じる部分があります。

 未来にどういう技能と能力が必要かを知り、その分野で高度な技能を磨くと同時に、状況に応じて柔軟に専門分野を変えることが求められます。

 個人の差別化も難しくなるので、自分の技量を証明する必要性も出てきてそういったサービスも登場するだろうと主張します。

 個人的に、肝に銘じておきたいことは、専門技能の習得には時間がやはり必要ということです。仕事がそういう場をたまたま提供したり、必要に迫られるも十分な時間が確保できる場合はいいですが、自分から横の領域に広げるには、ある程度の時間を有することになります。

 こういったことを助けるためにも、テクノロジーの進化や、下記の人的ネットワークというのが重要になります。

2.個人主義と競争主義を見直し人的ネットワークの時代へ(人間資本の強化)

 多様性のあるコミュニティや、精神のバランスを保つための愛情のある人間関係を意識的に形作っていく必要があると主張します。

 社会変化からも高度な課題が増え、イノベーションは、多くの人数で実践する必要も出てきます。こういったマスイノベーションが増えると著者は予想しています。
 
 人的ネットワークは、1の専門技能のシフトにも通じます。自分のキャリアを脱皮させる手助けにも人的ネットワークは力添えをしてくれます。学び合いの共同体を築くことができるからです。

 人的ネットワークを築くのが苦手な人がいます。私もそうです。著者は、カメレオン人間になれ。というアドバイスを送っています。自分の振る舞いをそのグループの暗黙のルールに合わせることが重要だと述べています。これは、核となる信念がないこととは異ります。

3.ライフスタイルの見直し(情緒的資本の強化)
 
 モノを消費するスタイルから、質の高い経験と人生のバランスを重んじる姿勢への変化の必要性を述べています。

 個人的には、残業して家庭をないがしろにし、リタイアすると何もない。という生き方を選択する人は今後減っていくと思います。もちろん、リタイアそのものの考え方も変わってくることでしょう。

最後に

上記のように整理すると、やはりこれは10年後の問題ではありません。今まさに直近で起こっていることばかりです。そのため、今後より一層こういった流れが増えていくのだと感じさせます。

自分自身に振り返ってみると、改めて専門領域を増やす必要性と大切さが身にしみます。
また、人的ネットワークは積極的に広げてこなかったタイプなので、もっと広げた方が良かったと反省しています。
特に、ポッセと呼ばれる同じ志を持つ仲間。こういった人を見つけるのは、自分は苦労するタイプですが、自分の働き方の選択肢を広げるにあたっては重要かと思いました。



2016年9月24日土曜日

海堂尊さんの本を読んでAi(Autopsy imaging)について知ったこと



海堂尊とは

海堂さんといえば、ミステリー作家としての一面が有名でしょう。
代表作はなんといっても、映画化もされたチーム・バチスタの栄光などのミステリー小説です。

しかし、本職は別にあり医学博士で病理医として働かれていました。本名は江澤英史さんというそうです。

もともとミステリー小説を書いたのも、彼が提唱したAiを普及する活動の中で書き始めたものです。
小説の方はまだ読んだことがありませんが、Aiを織りませだ作品になっているとのこと。

小説を書いた経緯を本書で、海堂さんはこう述べています。
"よく誤解されるが、実はこの小説はAi普及のために書いたのではない。面白くかっこいい物語を書きたかっただけだ。だが、Aiの活動をしなければ材料を消化できず、物語の推進力を得られなかったのも事実だ。つまりAiと不即不離の物語だ。"

才能ある人は羨ましいものです。二兎を追って二兎を得ている気がしますね。

確かに実際に本書を読むと、Aiの活動が物語の推進力を得たというのは納得できるものがあります。
なぜなら、Aiを普及しようとする活動は、Aiの意義を信じる海堂さんと、その周りの立場の違う人々の政治的な駆け引きがあるので、それ自体が一種の小説であり、その中で物語的な世界を想像してしまうのも理解ができます。ただ、それを多忙の中で形にでき、多くの人から支持を得る作品にしあげることは、凡人には困難な作業だと思います。

さて、そんな海堂さんが提案したAiとは一体何なんでしょうか?

Ai (Autopusy imaging)とは
※Ai 人口知能のAIとの誤解を避けるために小文字のiを利用しているとのことです。

一言でいってしまえば、死亡時にCTやMRIで画像診断し、きちんと死因を解明しましょう。といえるのかと思います。また、重要なのは、解剖だけでは社会構造上対応できないし、情報的な質も異なる画像診断も用いることで、有益な情報を多くの人が共有できるようになる。という点です。

Aiの有用性をきちんと理解するためには、死因を理解することの重要性と、そのうえでAiを利用するメリットを理解する必要があると思います。

死因を理解することの重要性
海堂さんの本を読むまでは、死んだ人にお金や時間をかけることの意味をあまり理解していませんでした。「死因不明社会(ブルーバックス)」で、以下のように死因の不明に関する問題提起をしています。

(以下引用 一部書き換え)
①身内の死因が確定されずに済まされる。このため医療過誤発見が困難になったり、保険金請求で問題が生じる・・・本当の死因が不明なら、問題があったかどうかをどう判断するのだろうか。
②診療行為の効果判定が正確にされない。死亡時の医学検索が行われなければ、再発か、治療で完治したが別疾患の併発で死亡したのかはわからない。現状で解剖が行われなかった場合、治療効果判定は行われないことになり効果的な治療法の確立はできない。
③・・・異常死体の多くは、体表から調べる検案(あるいは検死)だけで死因を確定される。体表から見ただけでは死因は確定できないことは素人にもわかる。かくて殺人や虐待は看過され、犯罪が繰り返される。
④死亡統計が不正確になる。統計は医学の基礎だ。治療法が功を奏した例は○○例中✕✕例、したがって奏効率△△パーセント、というようなデータを基礎にし、治療の有効性が決定される。死亡時医学検索が行われなければ土台が崩れるから、当然医学が壊れていく。
(引用終わり)

③に関しては、そもそも警察がきちんと異常死として拾い上げられないというリスクも、多くの事例から述べられています。異常死が拾い上げられない場合は、その犯罪がそもそも見過ごされるということになります。また、体表だけからの情報からの死因特定が誤る可能性が高いことも想像できることです。

また、②と④がないがしろにされるのは素人目線ながら不安を覚えます。医療の成果の一つを判断するのに、治療効果の判定は重要なのではないでしょうか?結果的に何が死因だったのかはよく分からない。というのは、自分達の仕事の成果がよく分からない。ということに繋がらないでしょうか?つまりは、それは本当に効果的な医療ができていると言えるのか。という不安を覚えます。

もちろん①に関しては、親族としてはきちんと死因を知りたいという思いは強いでしょう。また、医療過誤が疑われる場合、病院側も死因がクリアになることで責任の所在がはっきりするので、社会全体としてはプラスになります。

こういった問題を解決するには、まずはしっかりと死因を解明する必要があると述べています。

・現状はどうなのか?

死因を解明する必要性はわかりました。では、現状の死因の診断はどうされているのでしょうか?

日本では監察医制度がありますが、解剖を実施し死因を診断されるのは2%程度。それ以外は、ある意味外見のみから死因が診断されます。更に、臨床診断と病理診断が異なることは10~30%程度起こり得ているという研究結果も出ているとのことです。

こう考えると、ほとんどの死因はよく分からないか、間違っていることがあるのが世の中の常識になっていると想像できます。

また、日本の監察医制度は地域による格差が大きく、東京などの大都市では機能するが、それ以外はほとんど機能していない、もしくは存在しないという現実があります。つまりは、地域によって得られる医療の質が異なってしまうという問題もある訳です。

・では何故Aiが良いのか

死因を推定する方法はAiだけではありませんが、Aiが優れている点はなんでしょうか?
本書からAiの有効性について、抜粋してみました。

解剖の欠点を補いやすい利点が多数あるようです。例えば、
・広範囲の組織検索が行いやすい。
・腹水などの液体の存在状況が観察できる。
・解剖の質は均一性が困難だが、Aiでは実施しやすい。
・傷をつけないので、患者の遺族から理解が得やすい。
・医学情報を迅速に遺族に伝えやすい(解剖は診断結果が出るまでに時間がかかる)
・コストが解剖に比べて安い
・遠隔診断も可能なので、中立的な診断が行われやすい
・画像は保存しデーテベース化しやすい

また、日本の場合は、CT/MRI先進国のためインフラが比較的整いやすいという利点もあります。解剖の方が死因の特定率は75%と高いですが、AiもMRIなどを用いれば60%近くの死因の特定が可能なようです。

何よりも強調したいのが、解剖で死因特定を増やそうとすると、人的にもコスト的にも足りないので現実的に困難であるが、放射線技師や放射線科医の人数を考えるとAiを導入するのはまだ現実的な解であるだろう。という点です。

そう考えると、良いことづくしのAiに聞こえますが、何か問題があるのでしょうか?

・具体的な問題は何か

何事もそうですが、やはりヒト・モノ・カネを誰がコントロールし、設計するのか。ということになるのでしょう。
得にAiの場合は、カネを誰がどれだけ払うのか。誰が診察/撮影をするのか。という点が問題になります。
撮影をするのは放射線技師がいますが新たな業務の発生になります。診察は放射線科医か法医学の人間が行うのか。診療報酬が死者には出ないので、誰がお金を払うべきか?病理医の解剖との連携はどうするのか?といった課題が発生する様です。

医療の場合は公共性の高い仕事になるので、カネの設計をするのは厚生労働省になるでしょう。報酬がどう定義されるかで、医療現場の人々のインセンティブは大きく変わります。民間病院になればその傾向は顕著です。また、制度設計がしっかりしないと、現場では歪が生じてしまうのは素人からみても明らかです。

・国が決める部分が多い
・各学会で考え方が異なる
・医者の世界には白い巨塔的な側面がある
こういった状況を勝手に想像すると、政治的なアレコレが発生するのは想像しやすいところです。実際に著者の海堂さんもこういった渦中に飲み込まれ闘っていくわけです。それは、本書"ゴーゴーAi"を読んで頂ければよく分かることです。

海堂さんの主張するAiは以下のAiプリンシプルを読めば明らかです。
①Aiは医療現場の終点で医療従事者が行う
②Aiを行ったら診断レポートを作成し、その情報を遺族と社会にオープンにする
③Aiの費用は医療費外から医療現場に支払われる
プリンシプルとしてはよく理解できます。

個人的には以下の点が疑問としてあがってきます。
確かに、Aiは解剖より安くすむが、多くの人がスクリーニングのように実施するだけの費用を出すのは現実的には難しいのではないでしょうか?
また、そこまでの費用対効果があるかは現状として解明されているのでしょうか?
まずは優先度が高い人から実施するのが理解しやすいが、1個人としては、少なくとも患者が希望すれば実施できるようにあって欲しいと思います。しかし、そういった体制はどこまで作られているのでしょうか?

・最後に

なにはともあれ、2007年に「死因不明社会(ブルーバックス)」にて、以下のようにAiの制度導入の困難を述べていた海堂さんが、2011年の「死因不明社会2(ブルーバックス)」では、Aiの制度化への予言をもとにあとがきを終えているのは、感慨深いです。
こうやって社会制度が大きく変わり医療現場が変わっていくことに感動を覚えますが、同時に、新しいことを実施することが如何にハードルが高いかも伝わってくる面があります。

「死因不明社会(ブルーバックス)」プロローグより引用
”私は、Aiが制度として確立して欲しい、と祈るような気持ちで本書を上梓した。だが、そう言いながらも、このシステムが日本に根付かなければ、それはそれで仕方がない、という諦めの気持ちも半分混じっていることは、正直に告白しておきたいと思う。”

「死因不明社会2(ブルーバックス)」あとがきより引用
”2007年に前著『死因不明社会』を執筆して4年。社会のAiに対する理解が進んだことは、本書執筆陣を見れば一目瞭然だ。Aiは他分野の人々に広がり、その支持は確実に浸透している。本書が一般市民のAi理解に貢献し、日本社会に早晩、Aiを基本にした新しい死因究明制度が出現することを予言しつつ、擱筆したい。”

これをきっかに、チーム・バチスタの栄光を読んでみようと思います。





2016年7月18日月曜日

エンジニアのジレンマ 

10年後、生き残る理系の条件
竹内 健
朝日新聞出版 (2016-01-20)
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10年後、生き残る理系の条件
朝日新聞出版 (2016-02-29)
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イノベーションのジレンマで、クリステンセンは成功した企業ほど新たなイノベーションを成功させることが困難であることを述べました。
企業は新たな市場を創出することに失敗し、別の企業が作った市場に飲み込まれていってしまいます。


そういったビジネスの新陳代謝は、最近の日本メーカーに大打撃を与え、誰もがヒトゴトとしては考えられない時代になってきました。


そういったメーカーで働くエンジニア達は、ここまで不透明になった時代をどのように生きていけば良いのでしょうか?


エンジニアのキャリアを一緒に考え、確認していくのが本書です。
著者は、自身も東芝のエンジニアとして活躍しながら、アメリカでMBAを取得し、現在は大学教授として活躍する竹内氏です。


エンジニアのジレンマ


エンジニアは、一つの技術領域の専門性を高くすることが求められます。
しかし、産業の新陳代謝が早くなった今の時代では、それだけでは、新たな市場の登場に対応できない可能性があります。

会社のビジネスが突然成り立たなくなると同時に、エンジニアの仕事も存在しなくなる可能性があるということです。

ひとつの技術で成功している期間が長いほど、新たな技術領域の分野に転身することも非常に難しくなってしまいます。

これは、イノベーションのジレンマに習って、エンジニアのジレンマと言っても良いのではないでしょうか?


エンジニアのジレンマにどう対応するか?


このエンジニアのジレンマにどう対応するべきでしょうか?

恐らく一つの解はないと思いますが、いくつかヒントになることはあると思います。
個人的に、意識したいことをいくつか抜粋しました。

☆個人のスキルの伸ばし方
 ・T型人材
 ・階層的なスキル向上
 ・一つの分野を深く掘った後は、横にその穴をつなげていくことが重要
 ・自分の強みを抽象化する(隣の分野が分からないのはみんな同じ)
 (半導体の回路設計 → 
  電子回路、ストレージ → 
  自動車、医療機器への応用 データベースやデータセンタなどのサービス)
 ・技術を追っているだけでは勝つことができない
 ・マネタイズの視点をもち、ソフトとハードの両輪でソリューションを提案する
 ・課題解決の前に良質な情報のインプットを行うこと
 ・ロールモデルを探す
 ・シンプルなルール
  1.新たに挑戦したい分野の先駆者に聞く
  2.やると決めたら自分が挑戦することを周りの人に宣言する
  3.チャンスが来たら全力でやり遂げる
 ・人生は逆張り

☆組織と個人のあり方
 ・よい時代は長くは続かず、次の苦境に備える必要がある
 ・組織を飛び出す勇気も時には必要
 ・組織が不安定だからこそ活躍するチャンスが与えられることも
  (半導体のエンジニアはサービス企業に転身すればよい)
 ・異分野連携のキーパーソンはエンジニアだ
 ・ソフトとハードの最適化に成功するには、社内でバラバラのデータを統合・活用する必要がある 

☆その他
 ・転職の活動をするには、推薦者などが2〜3名必要となる
 ・大手企業の人事制度は国の制度とも連結し、実質空洞化している
  

エンジニアも変わりましょう♪

2015年5月18日月曜日

マルチマテリアルと接着技術

自動車軽量化のための接着接合入門
原賀 康介 佐藤 千明
日刊工業新聞社
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マルチマテリアルを活かすための接着技術を知るのに

経産省もまとめているように、マルチマテリアルという考えが今後の構造材料の世界で求められていくと考えられています。

鋼やアルミ、CFRPなどのようなそれぞれ異なる特性を持った材料を必要に応じて使い、またそれらをうまく結合・締結することによって、今までとは異なる次元の軽量化や高強度化を達成しよう。というのがマルチマテリアルの考え方でしょう。

もちろん、それぞれの材料の特性が向上していくことも非常に重要なことですが、マルチマテリアルの設計を行う上では、異種の材料を結合する結合技術が非常に重要になってきます。

本書はその結合技術のひとつである”接着”を、マルチマテリアル化を目指す機械設計者に向けて、説明している本です。

今後も期待が大きい接着剤

マルチマテリアルを考える上では、重要となる接着技術ですが、今までの構造材ではあまり接着は積極的に使うものではなかったように感じます。

というのも、
・分解できない(やり直せない。検査もしにくい。)
・硬化時間が必要
・バラつきやすい
・接着剤が多く選定も難しい
・被着材も変われば接着剤との相性も変わり、更に選定を困難にさせる。
・被着材の表面状態に影響を受けやすい
(・化学結合なので機械エンジニアから敬遠される)

という短所が目立ったからだと思います。

しかし、異種材料を結合するという点では、多様な材料に用いやすいのはもちろん、ひずみの集中を避けれたり、高剛性化しやすやったり、シール性や振動などといった面では長所もあります。

短所と考えられてきた部分を補い、マルチマテリアル化という大きな長所を得ることは、接着に対する今後の重要な大きな仕事とも思えます。

といってもすでに、自動車分野では、軽量化を十分に発揮するために、BMW i3(下の動画の1分くらいから、接着剤を塗布している様子が見れます。)やトヨタのLFAなどは構造材に接着剤を使って締結しています。(どちらもCFRPをボディに用いています。)




BMW i3は電気自動車です。電気自動車の重要な指標のひとつは航続距離だと思います。なので、接着技術を使って、無駄なく材料特性を活かすことも重要な要素です。

(正直、CFRPボディを接着材で結合していると知った時は、”何かあった時、怖いな。”と思いましたが、多くの自動車メーカーが量産化(一般的な大衆車ではないが)しているというのは、うまくコントロールしている。というのを実証している気もします。
もちろん、本書にもあるように、リベットと接着を併用するなど、設計側でも安全性を考えることで成り立っているのだと思います。)

本書は、こういった注目をあびている接着技術の、持つべき観点や知識を、マルチマテリアルという軸をもって広く説明していますので、多くの方に参考になるのではないでしょうか?

以下は個人的なメモです

・塗装の焼付け工程の時に接着剤の硬化も同時に行うことがある。
・CFRPとの線膨係数や耐蝕性の観点から、航空機ではチタンが選ばれやすい。
・異種材を締結する場合、全体の剛性を維持しつつ、熱応力の緩和を考える必要がある。
 ドアのインパネとアウターを接着する際もいえる。
・接着材の粘弾性特性を周波数に応じて変えられれば、熱応力や衝撃耐性、剛性維持との併用に応用できる可能性がある
・ラジカル重合で硬化するアクリル系接着剤は硬化時間と可使時間の比率が短縮しやすい。また、2液を混合する比率が厳密でなくても強度がでやすく、混合装置がなくても重ね塗布や、別々に塗布することが可能な場合も。
 本書は、アクリル系接着剤を将来的に有望な接着剤と推奨しています。
・接着剤は硬化し、収縮するのが普通で、界面を引っ張ろうとする。
・外気に触れる量で、耐久性が変わる。



自動車軽量化のための接着接合入門
原賀 康介 佐藤 千明
日刊工業新聞社
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2014年6月3日火曜日

企業は価値創造よりも価値獲得を考えるべき。 Intelのプラットフォームリーダーシップと-MOT入門-

MOT“技術経営”入門 (マネジメント・テキスト)
延岡 健太郎
日本経済新聞社
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価値創造ではなく価値獲得を

日本企業はすばらしい商品を開発するのは得意だが、最終的に利益を得ることが苦手であるといわれます。

もちろん、世界トップクラスの企業が日本にはいくつもあり、高利益を出している分野があるのも事実です。
しかし、近年の傾向としては、デジタル家電と呼ばれる業界では、利益創出につながっていない状態に陥っていることをよく聞きます。

過去よりも収益を得る形が変わっていたり、単純にモノを作って売れば良いというような構造ではなくなっているからでしょう。

では、どのように収益構造を作っていけばいいのでしょうか?
対象とする業界・サービス・商品、または時代によって、適した収益構造も変わってくるでしょう。
また、適した収益構造を維持するには、小手先の商品機能の差別化ではなく、組織そのものの構造を俯瞰的な立場で見直す必要もあるでしょう。(商品機能は差別化のひとつですが、表層的な差別化のひとつにすぎません。重要なのは、組織プロセスや事業システムのレベルでの差別化です。それらは、他社には簡単には真似できないため、コアな差別化といえます。)

それらの課題に対して助けになると思ったのが、MOTです。
経営に携わっていなくても、エンジニアの多くは、自分の将来の事業・仕事を考えていくうえで、本書は一読する価値があると思っています。

摺り合が得意。でも、プラットフォームリーダーにはなれない

日本のメーカーは、標準化されにくい摺り合わせの技術の世界では、完成品のような自動車から電子部品まで非常に強い影響力を持っています。
これは多くの電子機器や製品が日本の部品が多く使われている点や、トヨタなどを筆頭とする強い自動車メーカーを見ていると納得がいきます。

しかし、標準化されやすく、価値の基準が頭打ちされやすい分野、いわゆるコモディティ化してしまう製品では、日本のメーカーはコストの観点などから価値獲得を維持するのが非常に難しいといった点があります。

日本の多くの電気メーカーは、時代の変化により、こういったコモディティ化の流れに飲まれてしまった製品が多く、利益が獲得しにくい状態が続いているといわれています。

一方で、摺り合わせの技術は組織的にも得意ではないと言われている米国企業ですが、価値獲得の構造を維持するのは得意だと言われます。

これは、標準化されるモジュール製品のプラットフォームリーダーになることに長けているからです。(製品や技術のプラットフォームではなく、業界プラットフォームになることが価値獲得のインパクトは大きい気がします。)
例えば、MicrosoftやIntelが本書ではあげられます。最近ではAmazonやApple、Googleもそうでしょうか?

Intelは何故プラットフォームリーダーになれたか?

上述したMicrosoftだとWindowsやOfficeなどの製品からも、プラットフォームリーダーとしての想像がたやすいですが、PCの一部品でしかないCPUのIntelは何故プラットフォームリーダーへと成長したのでしょうか?

以下の資料やBlogが参考になります。
PCのバス・アーキテクチャの変遷と競争優位 ―なぜ Intelは、プラットフォーム・リーダシップを獲得できたか― 
頂点に立つインテルの王者の戦略

Intelは利益率の低いチップセットをあえて設計・販売することで、高い利益率を出していると言われています。チップセットの設計・販売により、USBなどのインタフェースをもち、サードパーティの周辺機器を開発することを容易にし、更には高機能CPUの恩恵も受けやすい状況へと変わりました。

そして、より重要なことは、CPUとノースブリッジのインタフェースをブラックボックス化することによって、Intel互換のCPUを作ることができない状態にしてしまいました。
サードパーティやユーザーには恩恵がある一方で、ライバルCPUメーカーを追い出すことに成功したといってもいいかもしれません。この戦略が高い利益をもたらしたことは言うまでもないでしょう。

技術のモジュール化と組織の差別化に成功したキーエンス

本書を読んでもうひとつ興味深い事例がありました。
日本のFAを支えるキーエンスです。

摺り合わせ型(インテグラル型)とモジュール型は、技術的な話だけでなく、顧客との関係にも応用ができます。

BtoBの製品開発になると、顧客との関係はインテグラルな関係になりがちで、技術や部品をモジュール化することが困難な一面があります。

しかし、キーエンスは、社員の半分以上の営業部隊を作り、潜在的ニーズの把握と、部品の標準化に成功しているようです。
販売を普通はもたないという同業界では、いかに組織を構築することに成功したかが分かります。

価値獲得への挑戦

プラットフォームリーダーや組織を変えることで強い価値獲得構造を得る可能性があることが分かりました。
しかし、現状のプラットフォームリーダーや利益構造も、時代が変われば、リーダーの立場を維持していけるとは限りません。

摺り合わせを得意とする日本の企業組織も、十分に、次の時代にはプラットフォームリーダーや強い価値獲得構造を得ている可能性があると思います。

では、次世代のプラットフォームリーダーや強い価値獲得構造を得るために、何ができるのでしょうか?
価値創造にここまで執着できる日本企業やエンジニアが、インセンティブの与え方や視点を変えるだけで、価値獲得に強い日本の企業が続々と出てくるのではないでしょうか?

自分も考えてみたいと思います。

色々と気付きの多い本書、オススメです。


MOT“技術経営”入門 (マネジメント・テキスト)
延岡 健太郎
日本経済新聞社
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2013年8月25日日曜日

機械設計者にオススメの本 設計の面白みを知るのに

最近読んだ本で、設計の面白さを知ることのできる書籍、三冊を紹介したいと思います。


零戦 その誕生と栄光の記録 (講談社文庫)
講談社 (2013-07-26)
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”風立ちぬ”で更に有名になった、堀越二郎氏の設計です。海軍から与えれた要求仕様を満足するために、設計主任として、どういった優先順位で設計を行なったかが分かると思います。特に、当時の日本の情勢から、使える材料、エンジン、人材が限られているという条件の中で、最適と思える判断していたことは、感心するばかりです。

また、零戦が当時の日本の戦略の上で重要な役割を担っていたことを知ることもできます。資源や人材に乏しい日本が、戦争の初期において、戦果を出せていたのは、零戦が大きな役割をしていたことを、僕は初めて知りました。また、諸外国での零戦に対する脅威や、航空機後進国であった日本が最先端ともいえる飛行機を作ったという実績を知ることもできます。

このように、設計した航空機が重要な成果を果たしたことは、設計者として誤った判断をしていなかったことが伺えます。仕様だけでは埋まらないニーズを考え、設計上の優先順位を判断し、当時の情勢からの制約条件を見極め、慣例的な設計手法を疑い、信念と共に進んでいった堀越二郎氏から学ぶべきことがたくさんあると思います。

そして、設計者としてでなく、一個人としての戦争体験記としても興味深い書籍になっています。特に、軍部から発注を受ける立場にいたので、当時の軍や政府の戦略のなさについても知ることができます。読み物としても、オススメです。


エンジンのロマン―技術への限りない憧憬と挑戦
鈴木 孝
三樹書房
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一つの製品を丹念に知ることも勉強になりますが、一つのキーパーツの設計の歴史や変遷を追うのもおもしろいものです。

この書籍の面白いところは、設計の失敗事例の製品がわかりやすく記載していることです。斬新な発想や、アイデアに溺れ、最終的なバランスを欠いてしまった製品。発想の転換を迫られながらも、そこまで深められなかった製品。問題があることに目をつぶり、先に進んでしまった製品。

もちろん、成功した歴史的な製品も知ることができますし、エンジンの重要なキー技術についても分かりやすく解説しているのではないでしょうか。更には、それらのエンジンの搭載された、自動車、戦車、航空機の逸話も書かれていて面白いです。僕はエンジンに興味がなかったのですが、エンジンに興味をもてるようになる本です。

時代の関係からか、”車輪の再発明”的な話がよく出てくるのが、個人的には印象深かったです。”車輪の再発明”は、個人的には”無駄なこと”だと思っていました。しかし、現状の問題を正しく分析するには、前例を見ないことが、時には功を奏することがあるのだと知りました。

白黒ながら、写真が豊富なのもいいですよ。


クルマはかくして作られる 4 レクサスLFAの設計と生産 (別冊CG)
福野 礼一郎
カーグラフィック (2013-03-06)
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ナショナル ジオグラフィック〔DVD〕 レクサスLFA スーパー・ファクトリーのすべて
ナショナル ジオグラフィック
日経ナショナル ジオグラフィック社
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レクサスLFAの設計と生産についてのおおよそを知ることができます。スパーカーなので、僕には馴染みのない世界なのですが、写真が豊富で見やすいですし、工程なども見ることができます。正直、ここまでやってるのか!、そして見せるのか!と驚いたことばかりです。

レクサスLFAは500台の完全限定生産で、価格設定が3750万します。これでも、基本的には利益が出ないようです。その理由も、本書を見れば納得でしょう。非常に手間のかかった生産方法をしていますし、設備や材料ももちろん、細部にもこだわりを感じます。

自分はスーパーカーと大衆向け自動車の開発がどういう関係をもっているのか、理解していませんが、こういった技術的にも尖った製品が将来の大衆向け自動車の技術を支えるのでしょうか?

何はともあれ、一つの製品を軸に、多くの部品の設計や生産の様子を知ることができるので、全体のコンセプトと各部品設計への反映がどうされているのかな?というのを想像しながら読むことができるので、面白いです。

本自体は誰にでも読みやすく書かれていると思いますので、オススメです。

2013年8月14日水曜日

RunningLean 解決すべき課題が正しいかを検証する方法

Running Lean ―実践リーンスタートアップ (THE LEAN SERIES)
アッシュ・マウリャ
オライリージャパン
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本書はリーンスタートアップを実践する人に向けた書籍となっています。

そもそもリーンスタートアップとは?

あなたが今考えている”素晴らしい製品”は、市場では”取るに足らない製品”である可能性があります。

市場であなたのビジネスアイデアを、効率よく検証するのを提唱したのが、トヨタ式を参考にしたリーンスタートアップです。

多くのメーカーは、製品仕様が決まり、莫大な開発時間を通して、製品発表を行います。そして、始めて製品に対する市場のリアクションを把握することになります。いってしまえば、博打に近い状態かもしれません。

CPUの計算速度を十倍にする。とか、形の決まった技術に対する継続的なイノベーションに関しては、企業は市場のリアクションを十分に読むことができるでしょう。

しかし、今までに市場にない製品、もしくは新たな付加価値をつけるような製品の場合、あなたが考える”素晴らしい製品”は、市場では”大したことのない製品”になる可能性が十分にあります。

少し昔の時代では、それらの失敗によって失われた開発コストを補うことができたかもしれませんが、今の競争過多の時代にはわずかな失敗が大企業にも大きなリスクになるのではないでしょうか?

そういった失敗をなくすために、リソースを使い切る前に正しい方向転換を行いましょう。というのが、リーンスタートアップだと思います。

本書は何を説明しているか?

個人的には、体系的にリーンスタートアップを行う手順書(プロセス)。という気がします。
ひとつひとつは、些細なことかもしれませんが、それらは経験からくる情報をもとに書かれています。

また、面白いのが、この本の出版そのものが、ランニングリーンの実践のひとつとして作られていることです。
本を出版するにあたって、ランディングページを公開し、本を執筆した際に購入するかを閲覧者に問いました(解決すべき課題なのかどうかの確認)。また、ランディングページをきっかけに1000個ほどのメールアドレスを得たり(潜在的な見込み客)、小さな反復を繰り返すために、本の出版前にワークショップを開きます。これらのことを進行することにあたって、本の内容も反復的にリリースを行い、最終的に出版という形になっています。

具体的な方法は?

具体的な方法は本書を読んで頂くのが一番かと思いますが、以下のWebを見てみてもなんとなく全体像をつかむのに一助になるかもしれません。

Slide Share : Running Lean 入門ワークショップ
Lean Canvas - Your Startup Blueprint

本書を読んでいると、ビジネスプランを最初に文書化する部分(リーンキャンバス)ばかりに目が捕らわれてしまいますが、実際は拡大・成長していく流れなのかで、文書化したプランが検証していけるように作られています。

そのため、実際の流れのなかで文書化したプラン(リーンキャンバス)がどのように使われているかを確認しながら読むのがひとつ重要かなと思います。

外に出ることが重要だ

確かに、これが一番難しい問題なんだと思います。会社組織にいると、なかなか直接お客さんの意見を聞ける機会は時折というのが現状ではないでしょうか?

とはいえ、この本が、どのように行動すべきかの一助にはなるのではないでしょうか?


リーン・スタートアップ  ―ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす
エリック・リース
日経BP社
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2013年1月8日火曜日

トヨタ式顧客開発法

リーン・スタートアップ  ―ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす
エリック・リース
日経BP社
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新年に読むにふさわしい本です。
変化の激しいこの時代では、多くのエンジニアが読むべき本だと思います。

クリステンセンはイノベーションのジレンマ(本Blog記事:努力が我が身を滅ぼす時)で、破壊的イノベーションと継続的イノベーションの差異を説明し、ジェフリー・ムーアは、キャズム(本Blog記事:キャズム)で顧客セグメントの断絶を示しました。

しかし、多くのスタートアップがキャズムに出会えるのは幸運で、その前に製品開発ではなく顧客開発という言葉で、顧客の課題を的確に捉えることがスタートアップの第一歩だと示したのが、アントレプレナーの教科書(まだ本Blogにまとてません。)です。

では、その顧客開発を科学的に管理し、システムとして組織が行うことは可能なのか。それを端的に示したのが本書だといえると思います。

しかも、個人的に感動したのがトヨタ生産方式を参考に、このスタートアップの方法をまとめていることです。

トヨタ生産方式
トヨタ生産方式
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ダイヤモンド社 (2012-09-14)
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トヨタ生産方式―脱規模の経営をめざして
大野 耐一
ダイヤモンド社
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トヨタ生産方式は、よく誤解がありますが、ニーズからの出発を掲げています。
それは、当時でいうと少量多品種の市場のニーズを満たすことでした。

そのためには、フォード流の単純大量生産方式では、太刀打ちできないという課題がありました。そこで、徹底的にムダを省くことに着目し、方法としてジャスト・イン・タイムと、自働化の二本柱で実行が勧めらました。

ジャスト・イン・タイムは当時としてはコペルニクス的展開だったと思います。大量バッチの生産の方が単純作業で、効率的と考えますが、全体として見た時に最適でないことが本書を読むとわかると思います。

また、トヨタ生産方式が優れていることは、これがトヨタの経営/組織体質と一体化していることです。本書でも、”経営に直結する製造技術”と述べています。


話をリーンスタートアップに戻しましょう。
顧客開発では、満たすべくニーズが本当に正しいかを組織として無駄なく見つける必要があります。

本書で、自分が開眼した部分があります。

アイデアを出し、製品化し、市場からのフィードバックをもらう(データ)。
大雑把にいうと、製品の開発のループはこうなるでしょう。

このループで、多くの人は、すばらしいアイデアを出し、品質の高い製品を作ることに多くの時間を割きます。(少なくとも自分はすばらしいアイデアが出た時に、そのアイデアに酔いしれるタイプですし、多くの人はそのアイデアを具現化するために、多くの時間を費やして製品化を行うと思います。)
しかし、"むしろ大事なのは、このフィードバックループの一周に要するトータルの時間を最小にすることだ。"とリーンスタートアップは示しています。

なぜなら、その素晴らしいアイデアは、困ったことに市場でまったく成功しないからです。

ムダの少ないトヨタ生産方式のように、ムダの少ない顧客開発を行うには、実用最小限の製品(MVP:Minimum Viable Product)で、客観的にも判断できる正しい計測尺度でフィードバックをし学習する必要があると主張します。
なぜなら価値を本当に生み出す顧客のニーズにあった製品開発以外はムダだからです。
(トヨタ生産方式では、付加価値を生むのに必要でない作業はムダとして改善するべきものと考えます。)

では、そのような組織体制を作るにはどうすればいいのででしょうか。

そのためには、トヨタ生産方式と同じで、開発の体勢もバッチサイズをどんどん小さくする必要があると述べています。ソフトウェアでは、このバッチを小さくするという概念は適応しやすい分野です。それは、細かいバーションアップや、機能の追加は比較的容易だからです。

しかし、ハードウェアでも、近年は多くのツールが開発されています。今ではお馴染みの、3DCADや、Augmented Realityなどを駆使すれば早い段階で、様々な問題点を把握できますし、今流行出している3Dプリンターも活用できます。

開発のバッチサイズを小さくし、早い段階でループの学習を行う必要があるのです。ソフトウェア開発ではウォーターフォール型での開発体勢ではなく、アジャイル型の開発を行うべきなのです。


Appleはスティーブ・ジョブズという天才的な経営者であり、かつ、消費者がいたために、市場のニーズを満たした破壊的イノベーションを行うことができました。しかし、一人の天才に会社の組織を任せられる企業がどれだけあるでしょうか。

日本は、継続的イノベーションは得意で、破壊的イノベーションは苦手だといわれることを耳にします(かつてのSONYなど、破壊的イノベーションを実践した企業があるにもかかわらず)。

しかし、システム的に改善していくことには非常に長けていると言われます。もし、その噂が事実だとして、リーンスタートアップが科学的に優れた手法であるなら、そういった開発体勢を構築し展開できる人物が日本にもいれば、新たなスタートアップが日本の企業でも多く躍進できることになるかもしれません。

そうです。トヨタが経営にまで影響を与えている、トヨタ生産方式を日本で生み出したように、イノベーション工場が日本で"オペレーション"される日も近いのでは。とそんな期待を新年から抱かせてくれる。そんな本でした。

今年もよろしくお願いします。

Memo

food on the table
http://www.foodonthetable.com/
(個人的に使ってみたいサービス。日本では展開していない模様)

コホート分析
http://jp.techcrunch.com/archives/20110923kissmetrics-helps-you-hone-in-on-stats-that-actually-matter-with-cohort-reports/
Evernoteでのコホート分析について
http://jp.techcrunch.com/archives/20100528video-evernote-ceo-phil-libin-shares-revenue-stats-and-how-to-make-freemium-work/

アジャイル開発
http://japan.zdnet.com/sp/sp_06sp0130/20248727/

スプリットテスト

フレデリック・テイラー
科学的管理手法

2012年12月8日土曜日

クリステンセンの最後のテーマは素朴で重要なものでした。

イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ
クレイトン・M・クリステンセン ジェームズ・アルワース カレン・ディロン
翔泳社
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あの”イノベーションのジレンマ”のクリステンセンが、彼らの経済学での理論をベースに人生の課題解決について語ります。

僕は、自分の人生に影響を与えた本を上げてくれ、と問われれば、そのひとつにクリステンセンの”イノベーションのジレンマ”をあげるほどなので、クリステンセンの本は時間とタイトルに興味があれば時間を割くようにしています。

本の冒頭に、以下の問いが書かれています。
・どうすれば幸せで成功するキャリアを歩めるだろう
・どうすれば伴侶や家族、親族、親しいたちとの関係を、ゆるぎない幸せのよりどころにできるだろう?
・どうすれば誠実な人生を送り、罪人にならずにいられるだろう?

自分のキャリアに不安を抱え始めている、社会人成り立ての自分は、ハーバードを卒業していった優秀でモチベーションも人一倍ある彼らが、時にこれらの質問に答えられず、大きな過ちを犯していることをクリステンセンが嘆いているのを知り、三度クリステンセンの本を手に取りました。


以下、個人的メモと共に、この本を振り返ってみます。

第一部

わたしには意見がない、理論には意見がある。

クリステンセンの書籍である、イノベーションへの解を読んだことがある人なら、クリステンセンらしい主張だなと笑みがこぼれるだろうと思います。

クリステンセンは様々な書籍でこう述べています。相関ではなく因果関係を、事例ではなく理論を。様々な課題に対する答えは、常日頃、状況と共にも変わります。人生の課題への解答であれば、唯一解は存在しません。もちろんです。クリステンセンは、答えではなく、理論を人生に役立てろというヒントを示しています。

衛生要因でなく、動機付けでモチベーションを維持する。

衛生要因。なぜ、あえてこの言葉を使うのか、個人的には理解に苦しむところですが、簡単にいってしまえば、金銭や役職になるでしょうか。この、金銭や役職を得ること以外から出る欲求と、金銭を得るためだけの欲求が満たされたのでは、人間のモチベーションへの達成感が大きく違うことは、よく理解できるところです。

創造的戦略と意図的戦略のバランスを図る

成長した新興企業の9割以上は当初使っていた戦略を途中で変更しています。ホンダのスーパーカブがその事例として述べられています。確信の得られる戦略が得られるまでは、ひとつひとつの戦略から学びつつ修正していく必要があり、これをすばやく繰り返す必要があります。

新しい仕事を引き受ける前に仮定への立証

成功するために必要な仮定のうち、どれが立証される必要があるかをよく考える必要があります。

自分の資源をどのように費やすか

企業も、人生も同じで、自分の資源をどのように費やすかを考える必要があります。制度によっては、会社の長期的成長を阻害するように、社員の資源を投資するような制度も存在しています。人生も短期的な見返りを求めていては、もうすでに資源を投資するタイミングを逃してしまう時もあるでしょう。

第二部

第一部では上述したように、どちらかといえば仕事についてのアドバイスが多いです。
しかし、最もページ数を割いている第二部では、プライベート(得に家族)についての、記述となっています。クリステンセンが、これだけのページ(原作もそうなのかは不明だが)を割いたのには、強い意思がここにあるのだろうと思います。
個人的には、これからの人生へのアドバイスとして読み進めていきました。

良い金と悪い金

意図的戦略が定まる前は、”成長は気長に、利益は性急に”
意図的戦略が定まれば、”成長は性急に、利益は気長に”
自分の資源をどのように費やすか。にもつながりますが、もうすでに、人生の様々なことに、投資するべき時期は始まっているのかもしれません。

全ての生徒が学校で達成感を味わえるわけではない

生徒は学校にいくことが用事ではなく、用事を片付けるために雇う手段でしかない。

犠牲と献身

相手が必要としている用事を理解し、行動にうつすこと。

未来をアウトソーシングしていないか

子供に必要な経験を与えているか。

経験の学校ともつながります。
課題を解決するのに、最も役立つ人は、その課題に似た課題を解決してきた人だ。

第三部

限界費用と総費用

ひとつの嘘をつく限界費用は、総費用を見ると大きくかえってくる。それに気づかず短期的な視点しか見ていないことがあります。



クリステンセンが、長く考えてきた経済問題が彼の人生にも大きく影響を与えてきたんだということが、よく分かる書籍でした。彼のように、日頃からカオスな世界を少しは理論だてて見る目を持っていたいところですね。

(なんだか、読み返してみると、古くから語られている生活の上での哲学な気もしますが、これを経済学と結びつけているというのが、最近の流行りにも合致している気もしますね。)

全体的に、良い本でした。

2012年11月18日日曜日

REVERSE INNOVATION リバース・イノベーション

リバース・イノベーション
ビジャイ・ゴビンダラジャン クリス・トリンブル
ダイヤモンド社
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個人的メモ。

課題は、課題をいかに見つけ、定義するかだと思う

”リバースイノベーションは、発明からではなく、忘れることから始まる”

富裕国の成功体験は、多くの場合は富裕国の課題を解決したことから根ざしている。新興国の課題は、富裕国の場合は多くの場合は違う。それも、コストという面だけではない。(コスト対策は、富裕国でいう、グレードの低い技術を使えばよいうという意味でもない。)

このギャップをまず認識すること。

なので、グローカリゼーション(富裕国の成功体験の製品を、新興国向けにカスタマイズしたレベルの製品で、新興国に販売展開を行うこと)ではいけない。本書でいうリバースイノベーションが必要となる。
そのための第一歩が、新興国に向かうにはイノーベーションが必要だ。という認識をまずは持つことが最低条件となる。

インパクトのあるケーススタディ

GEヘルスケアの小型超音波診断装置「ヴィースキャン」が、リバースイノベーションのケーススタディのひとつとして出てくる。これは、グローカリゼーションではなく、新興国の課題に直に目をむける組織作を持てたからこその、成功体験である。

米ディアと印マヒンドラ・アンド・マヒンドラのトラクターのケーススタディも興味深い。

課題はどう見つければいいのか?
課題を見つけたらどう動けばいいのだろうか?

いくつかのケースにヒントは提示されているが、まだ少し考えてみたいところである。

2012年8月15日水曜日

I'd hate to die twice. It's so boring.

ファインマンさんは超天才 (岩波現代文庫)
C.サイクス
岩波書店
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ファインマンさんは超天才
クリストファー・サイクス
岩波書店
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知っているようで知らなかった、ノーベル物理学賞を受賞したリチャード・P・ファインマンについての書籍。

彼の書籍は多く出ていますが、この本は、本人や関係者の様々なインタビューや記録を通して彼の生涯を見ていく形式になっており、第三者的な視点になってファイマンを見ていくことができて、非常に愉快な本です。



彼はどんな人間だったのか。彼の死の間際に発した言葉に全ては集約されています。

末期のガンを宣告され、自分の余命が後わずかである事を知ったファイマン。死期が近づくにつれ、意識不明な状態と意識が戻る状態とを繰り返していました。そんな時期、意識が戻った時に彼が最後に発した言葉です。



"I'd hate to die twice. It's so boring."
(2度死ぬなんて、まっぴらだよ。全くつまんないからね)



仕事や人生を楽しみ、徹底的に興味あることを探求していくこと。それが彼の生き方でした。死はそんな彼にとって、退屈な仕事だったのでしょう。そういった、ファイマンの一貫した生き方は様々な重要な仕事の断片にも伺うことができます。

・ノーベル賞受賞の研究のきっかけ

 ファイマンは当初、自分の研究がうまくいかずウツ気味だったとインタビューで答えています。実際に問題を考えてみても、前に進めない。そんな状態がずっと続いていたのです。研究をしているとよくあることですが、あのファイマンもレベルは違えど、そういった壁にぶつかっていたのです。しかし、周りはそれとは違い、ファイマンを高く評価し、より重要なポストを用意すると、ファイマンに対してオファーが飛びかっていました。(一層、それがファイマンを当時苦しめるのですが。)

 そんな時に、ふとファイマンは思うのです。自分が今まで得てきた物理学の結果は、自分が純粋に楽しんでやってきたものだと。今後も、周りが期待するような対した仕事ができなくても、自分がただ楽しんでやっていればそれでいいじゃないか。と、ある意味開き直るわけです。そして、ウツ気味な研究分野を少しずつシフトしていくのです。

 しかし、これがうまくいってしまうんです。”こうして昔のようにのんびりと遊び続けていると、まるで瓶の栓でも抜いたようにすべてがすらすらと流れ始めた。そして、まもなく後のノーベル賞受賞の基礎になった仕事をやり遂げたわけだよ

 楽しいことを仕事に。とは、本当に色々な人がいうことです。ファイマンもまた、”楽しい”が様々なことにおいて活力だったようです。

・手術の間際に解く二次元弾性論

 ガンを宣告され、手術が間近に迫ったある時期。ファイマンの共同研究者のデービット・グッドスティーンは二人の論文の反論に対応するために、ファイマンに計算の依頼を行いました。手術前にもかかわらず(死のリスクを伴う手術だったと書いてあります。)彼は、その日の一日中を、計算のための時間としてあてがいました。
 
 デービット・グッドスティーンは彼の仕事を見ながらこう思ったようです。"彼は今奈落に面しており、今週一杯を生きぬけられるかどうかさえ覚束ないというのに、生死にかかわりもないこの二次元弾性論などに夢中になってるとは!"。

 もちろん、ファイマンも手術の不安はあったと思いますが、彼の仕事への向き合い方が分かる一節です。

・原子爆弾の作成

 彼の仕事に対する”楽しい”は、様々な場面でもたらされていますが、最も有名な仕事としては、原子爆弾の作成に携わっていたことだと思います。当時の科学者らのインタビューは非常に興味深いです。
 
 多くの科学者は、爆弾作成時には、ひとつの目標に向かって、全力で仕事を成し遂げていた様子が分かります。彼らは、知的興奮として、原子爆弾の作成を楽しんでいたように思えます。しかし、作成できた原子爆弾の結果を見て、彼らは180度変わっていきます。悲観的になり、世界破滅論を唱える科学者も出てきました。

 センシティブな問題ですが、”楽しむ”を信条にしていたファイマンも、ここでは自分達が何をしようとしてたのか、考えるべきだったかもしれない。と述べている部分もありますが、最終的に、彼は”積極的無責任”という立場をとります。ファイマンらしい生き方です。(個人的には、原子爆弾作成に携わった科学者をせめても仕方がないでしょう。それは、歴史的に必然として生まれるべくして生まれるものなのでしたから。彼らが携わらなかったら、別の誰かが間違いなく原子爆弾を発明したと思います。)


他にもファイマンの生き方が分かる、ファイマンらしい仕事は多くあります。チャレンジャー号の原因追求の仕事に関しても、僕は一読の価値があると思います

ファイマンが多くの仕事や趣味を楽しんでいたことはよく分かりました。あのスティーブ・ジョブズも、”楽しいを仕事に”と述べていました。

最後に、彼らのすごい所は、”楽しい”から、世間が認める”結果”として、世の中に形として出していることです。色々な制約事項がある中で、”楽しい”をモチベーションにして、しっかりとした目に見える”結果”に結びつけるのは、そんな容易いことじゃないと思います。その辺り、彼らは楽しむと同等に、重要なファクターを、無意識的かもですが、知っていたのではないかと思います。彼らの人間力に脱帽し、それに少しでも見習えるところがあればと思います。どうすれば、そういった成果まで結びついていくのか、少しずつ紐解ければと考えています。

2012年8月6日月曜日

確かに。放射線科医はおもしろそうだ。


だから放射線科医はおもしろい! 電子書籍アプリ版 App
カテゴリ: ブック
価格: ¥1,000


健康で周りに病気の方もいなければ、”放射線科医って何?”という方もいそうだが、そういう人でも読める本です。

この本は以下のことを知るのに良い本です。

・放射線科医について
 放射線科医がドクターズドクターと呼ばれる理由。放射線科医を見直すのに非常に重要な本だと思います。また、日本の放射線科医の実情も分かります。

・米国の放射線科医の実態
 米国の遠隔画像診断の実態。また、年収1億円といわれる、米国の放射線科医事例を知るには、分かりやすい本だと思います。更に、遠隔画像診断の安全に関する取り組み” Patient Safety”に関する活動などは、多くの人が知りたいところだと思います。

・日本の遠隔画像診断の実情
 日本の遠隔画像診断でのリーディングカンパニーといわれている株式会社ドクターネットの創業をされた著者による日本の遠隔画像診断の実態を知ることができます。日本では、”放射線科医=勤務医”という常識だった時代に、変化をもたらしたようです。

・画像診断の国際化へ
 米国、日本という実情を読めば納得するように、今後は画像診断に対して、ひとつの大きな国際化の枠組みができていくであろうことが分かります。その辺りに関しても、簡単に言及されています。

 日本の医療崩壊に対する言及もされていますが、これに関しては本ブログで紹介した、改革のための医療経済学 Health Economics for Reform 兪 炳匡に詳しいです。

 
本書を読んでいると実感しますが、医療画像がデジタル化し、クラウド化が進むにつれ、遠隔画像診断により医療の世界が大きく変わっていることが分かります。

著者が提案する、”顧問医”の仕組みでは、早期診断できる状態を作りあげるのがひとつのキーだと思います。クラウド化や医療画像の標準化が進みつつある今では、今後より障害が少なく、なおかつ低コストで画像をとれるデバイスやモダリティの進化も重要となるのではないでしょうか?

体内の見えなかったものが、以前より低侵襲で簡単に見えるというのは、一人の健康だけでなく、社会システムも含めて大きな変化をもたらすことなのだと、改めて実感させられました。

2012年1月8日日曜日

キャズム ジェフリー・ムーア

キャズム
キャズム
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ジェフリー・ムーア
翔泳社
売り上げランキング: 3047


キャズム


革新的といわれ、驚嘆された製品はなぜ市場から姿を消したのか?
その疑問に新しいヒントを与えてくれる古くからある良書です。

改めてキャズムとは。

”この製品は、まだキャズムを超えていない。”

ビジネス書で時折見る言葉です。

メインストリームと言われる大きな市場にまだこの製品は受け入れられていない。技術オタクにしか浸透していないという意味で使われます。

大きな市場へと繋がる深い溝(キャズム)を、その製品は超えていないのです。




テクノロジーのライフサイクルには、イノベーター、アーリーアダプター、アーリーマジョリティー、レイトマジョリティー、ラガードという5つの顧客層に分けて考えることができます。


それぞれの顧客層の間には、それぞれのクラックが存在しますが、最も大きなクラックがアーリーアダプターとアーリーマジョリティーの間に存在するキャズムです。

例えば、PDAはキャズムを説明するのに代表的な製品でした。iPhoneが出たことにより適例ではなくなりましたが。

また、電子ブックは、一昔前はキャズムを超えられていない典型例だった様です。しかし、現段階ではAmazonのKindleとクラウド化技術の躍進により米国ではキャズムを超えたと言っていいのでしょう。

キャズムを超えられなかった、ハイテクオタクに昔から人気だった技術として、AI(人工知能)や音声認識もあります。これに関しては、まだキャズムを超えたといえるものは少ないと思います。しかし、iPhoneのSiriには、キャズムを超えてくれるような夢を感じさせてくれますが。

掃除機とキャズム

以上の例と、今の国内事情を考えて思ったのですが、米国でキャズムを超えたものは、再び日本でキャズムに悩まされるであろうことが想像できます。

日本が保守的で、ガラパゴスな発想も問題かもしれませんが、販売チャンネルの確立、国内固有の問題などを解決し、アーリーマジョリティーに受け入れていもらうには、単純に米国の成功だけの事例ではうまくいかないでしょう。



まさにその例だと思うのはiRobotのルンバです。

米国では大ヒットした商品ですが、日本ではまだ誰もが買いたいと思う製品ではなく、キャズムを超えたとは言えないでしょう。

その理由として、日本の家庭事情と、米国の家庭事情の違いがあると思います。床に座る文化で、部屋も狭い日本ではルンバが掃除できないであろう空間は残念ながら多いでしょう。なので、床を掃除することはそこまで苦ではなく、床をルンバが掃除できるように維持しておくことのが苦だと思います。他にも、日本特有の事情が、キャズムを超えさせていない理由もあるのでしょうが。

何はともあれ、キャズムを超え、日本の掃除事情を変えてくれることを期待しています。

個人的には、家庭環境にフォーカスせず、体育館や展示場などを休みの日に自動で掃除してくれれば、良い需要があるのかな?とか思ってます。

キャズムを超えるには


内容を本に戻し、キャズムを超えるにあたって気になった部分をピックアップします。

・ユーザーの問題と量を的確に捉える

そのユーザーの市場はニッチだから、メインストリーム市場への橋かけとして期待できない。と考えてはいけません。

狙いを定めるべきメインストリームの市場につなげるためには、初期のターゲットを明確にし、製品のシナリオを作り、問題を明確にし改善する。その結果からメインストリームへとつなげていくことを考える。

なので、キャズムを超えようとする際は、ターゲットを限定する必要があえてある。

特に、最も重要なアーリーマジョリティー(実利主義者)は、技術ではなく、その製品がトータルとして競争相手に差をつけ、最大限の利益を得ることができ、自分たちの問題を解決してくれるかを考えています。


・ホールプロダクト

キャズムを超えるには、アーリーマジョリティーが重要だが、彼らは前述したように、実利主義者とも呼ばれる。彼らに受け入れてもらうには、彼らが欲しているものを提供する必要がある。彼らは、ホールプロダクトを欲している。


・エレベーターテスト

メッセージの作成。エレベーターの中に乗っているくらいの短い時間で、その製品のメッセージを伝えられないといけない。

・競争力を高めるポジショニング

テクノロジー製品が5つの顧客を表したベルカーブの図を左から右に流れていく時に、それぞれのターゲット・カスタマーが何に対して価値を置いているかは異なる。


最後に


ある市場には、似たような思考を持った人が集まっていると、時折錯覚してしまいがちですが、そこには色々な思考を持った人が存在します。

ハイテク製品でメインストリーム市場で売れた製品は、多かれ少なかれ、キャズムのベルカーブのモデルの各クラックを飛び越え、多くの人に受けいられてきたのでしょう。

では、キャズムを超えるために、まずはどのようにシナリオを組むべきか。少し考えてみたいところです。

2011年10月2日日曜日

日本企業にいま大切なこと

日本企業にいま大切なこと (PHP新書)
野中郁次郎 遠藤功
PHP研究所
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日本企業にいま大切なこと (PHP新書)



日本企業は、「世界で戦えない」


この言葉に反旗を翻した本。

米国の華やかな企業経営から流行した科学的経営や、効率的経営ばかりに主眼をおいた経営に対して疑問視すると同時に、かつてから日本が得意とした現場の「暗黙知」などに重点を置き、情緒的でよくないと批判された日本企業だからこその強みを説明している。

以下は気になった言葉をまとめます。

・"In the beginning was the Word."か、"In the beginning was the Experience"か。
 仮説とは経験から生まれるもの。イノベーションは平凡な日常からしか生まれない。

・イデオロギーだけでなく、リアリスティックも。
 理念を実行にうすつには、現実主義の視線から柔軟な発想が必要となる。

・「サイエンス」というより、むしろ「アート」
 個人的に、イノベーションのジレンマのような、経営から法則性を探しだすことは良いと思うが、最終的にそれを日常で実践できるのは、机上の計算だけでない実践的な指導者も必要。それは、「サイエンス」というより、むしろ「アート」に近い。

・「共同体の善」
 CSRが叫ばれる前から日本には共同体の善を実践していく企業が多くあった。しかし、「共同体の善」がこの多様化した社会で簡単に同意を得られるかは難しいところかも。また、各企業がどんな善を目的として事業を行うかを考えることは今後より重要となる。

・サムスンの課題はサステナビリティ。
 事業規模のスケールでは他を圧倒しているが、「集団」としてのパワーには疑問符がつく。個々の社員は高いパフォーマンスを発揮するが、それだけで長く企業として続くのだろうか。(また、サムスンの得意とする事業のモデルが世界的にソフトの仕組みづくりが主力になっている点からも、今までの事業の方法では難しいのではないかと思う。)

・アジャイルスクラム
 知的創造には他社と共鳴しあう「場」が必要。

・日本の弱点は「モノ」と「モノ」をつなぐ「コト」のイノベーション。
 これは、iPhoneやAmazon、Googleなどと比較されてよく言われることですね。

・ミドルを踊らせる。
 会社の中間層をどう踊らせるか。それが、経営者の重要な点。

・一社で様々なリソースを持っている。
 総合力を今後うまく活かすことができたら、日本の企業は化ける可能性がある。

2011年9月25日日曜日

特許の考え方を知るのに

御社の特許戦略がダメな理由
長谷川 曉司
中経出版
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御社の特許戦略がダメな理由

特許と事業のあり方を知る第一歩によい本だと感じました。

よく語られる特許"戦略"とは実際何を意味しているかを教えてくれます。特許戦略に対する基本的な考え方を学ぶことで、特許提出を仕事とする技術者が、どう考えて行動していくべきかの指針を得ることができます。(技術者でなくても、特許に携わる方にはおすすめです。)


失敗事例から学ぶ


革新的技術が生まれ、特許も提出したが、その特許の情報によって他社が自社より短い開発期間で似た技術を達成してしまうという事例が多く存在します。かの有名な、サラリーマン研究員がノーベル賞を取得した技術でさえ、特許化したものの実際に稼いだのはドイツのメーカーであったそうです。

特許の重要な役割として、技術の独占と引き換えに技術情報の開示が存在します。しかし、そのために他社が隙をついて(特許を侵害しないように)、技術を模倣することを容易にしてしまいます。一見想像しやすいこの状況も、特許が重要と叫ばれる近年には、企業が陥りやすい罠だと筆者は主張します。

それは、競合企業の存在が予想でき、権利の広い特許を書かなくては、と日頃から考えていても、戦略として十分に特許を機能できていないからです。これでは、特許によって、むしろ技術を模倣させ他社の研究開発期間を短縮することを容易にしているとしかいえません。


必要な特許戦略とは何か


では、行うべき特許戦略とは何でしょうか?

ここで、少し話を変えましょう。そもそも、特許を提出する目的は何でしょうか?

特許を提出することは目的ではありません。特許は手段のひとつです。では、何の目的があるでしょうか?

筆者は"企業の利益を最大化すること"と述べています。


一般的に特許というと、他社が先行して特許を取得することから”守る”ため。という声があがります。


残念ながら、”守る”特許からは、事業としての利益は生まれません。(パテントだけで稼ぐ企業もなくはないが、多くの企業の考え方とは相容れないでしょう。)

では、相手企業が特許を侵害したときに、権利を主著し、損害賠償を得るためでしょうか?

そういった事例もありますが、これは事業利益を増大させるとはいえず、継続的なイメージを持つ”戦略”とはかけ離れていると筆者は述べます。

筆者は、特許は”攻め”の道具のために使うべきだと主張します。(”攻め”や”守り”とは、言葉のイメージの問題なので、ここで変な誤解をうむ可能性もありそうですが。。。)

筆者の主張する、特許の”攻め”とは、具体的には排他力の効果的な活用といえると思います。”競合する他社の前に協力な特許網を築きあげることによって、その他社が自ら事業を断念するか、事業への参入が大幅に遅れるというような状況を意図的に作り上げることができれば、これこそ優れた特許の活用ということができるのではないかと思う。

つまり、戦わずして勝つことこそ最大の”攻め”なのです。

これにより、他社が参入しないことによる利益の増大と、他社が参入に遅れたことによる、先駆者の利益が期待できます。


言うは易し行うは難し


では、そのような特許戦略はどのように実践していけばいいのでしょうか?

よく述べられる、曖昧な”広い”特許では、不十分だと言えます。競合他社が分かる場合は、これらの会社の技術の流れを包括した”戦略的な範囲で広い”特許を取る必要があるのです。つまり、具体的な他社が技術情報を見た時に、どう模倣するかを含めて特許の戦略を考える必要があります。

しかし、まだ事業化もされてない、競合他社もわからない技術の場合はどうすれば良いのでしょうか?この場合は、発明の本質は何か?ということから議論を行い、わざわざ発明を限定的にする必要はないと述べています。

これらの戦略をきちんと明らかにし、組織的に行なっていくには、三位一体型の特許戦略が重要と筆者は述べます。三位一体とは、”研究・開発”、”知財”、”事業部”の三つです。これらが、何を事業の目的とし、事業展開上何が懸念され、そのためにどういった戦略を取るべきかを専門家たちが決定します。


成功事例から学ぶ


この本の最もいいところは、失敗だけでなく、何故あの戦略は成功したのか。という事例まで含めている所です。実際に複数の競合企業の存在する材料メーカーが、他社の状況から描いた戦略による成功例などが述べられています。


最後に


企業の新技術を”攻め”の特許で、戦わずして勝つ事業展開をすることは、一見消費者に不利益に見えるかもしれません。しかし、安易な模倣ばかりを許すより、違う観点からブレークスルーが期待できるという点からも重要だと筆者は述べています。

開発者・研究者のモチベーションは、技術により事業を成功させ、世界にも貢献できることだと思います。しかし、本書でも述べられている”知的創造サイクル”を実践していくためには、ルールにのっとり、発明は保護されると同時に、その利益と情報により、新たな価値を創造していく必要があると思います。

特許がイノベーションの障害になるという見方もありますが、きちんとした特許戦略を描くことにより、”知的創造サイクル”というのを実践していく必要があるのでしょう。

2011年8月29日月曜日

ジョブズ・ウェイ 世界を変えるリーダーシップ Jay Elliot William L. Simon

ジョブズ・ウェイ 世界を変えるリーダーシップ
ジェイ・エリオット ウィリアム・L・サイモン Jay Elliot William L. Simon
ソフトバンククリエイティブ
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ジョブズ・ウェイ 世界を変えるリーダーシップ

数あるJobs本の中でも、この本はシンプルでかつすばらしいメッセージを放っています。そのメッセージとはJobs風に言えば、以下の一言に収まるでしょう。

"Why join the navy if you can be a pirate?"

・起業家精神のある企業風土。
・なぜ、こうなのか?ではなく、なぜできないのか?
・次の成長、利益ではなく、価値観の変化を。世界を変える次の製品に。
・宝くじにあたったらあなたは仕事をやめますか?

数ある言葉で、ジョブズが情熱をどこにフォーカスしていたかをこの本では表現しています。そして、その驚異的な成果をもたらしたジョブズの精神は、ジョブズだけの専売特許ではないはずです。

また、ジョブズも自分が何に得意であるかと気づくまでには、多くの失敗に時間を費やしました。そして、僕達の得意な分野はジョブズとは違うはずでず。

もちろん彼ほどストイックになれる人は世界にはなかなかいないでしょう。
日本にはかつて盛田昭夫がいましたが。

そして、そんな彼らをこう呼ぶ人もいます。

ジョブズは発明ではなく盗作の天才だった

確かにジョブズの人生に大きなアイデアを与えたのは、HPのパロアルト研究所だったかもしれません。しかし、彼には製品を誰よりも愛し、世界を変えようとする情熱が誰よりもありました。彼は、エンジニア以上の情熱を持ち合わせていました。その結果のひとつが、ホリスティックな製品開発だったのかもしれません。

本気で変えようとする情熱家達を応援し、僕達もその一員になろうではありませんか。しかし、数字を追うだけで、製品を愛していない企業も残念ながら存在することも確かです。

news - HPのctrl+alt+delが英断どころか油断だらけの理由

あなたは、海軍の一員になりたいですか?海賊の一員になりたいですか?あなたが、海賊の一員になろうというなら、この本は読まなければいけないでしょう。あなたが、情熱を持って注ぐべき仕事は必ずあるはずです。

2011年7月13日水曜日

医療産業の変革 劇的なタイミング





現在の医療産業を勉強しようと思い手にとった本。
様々なキーワードを広く学ぶことができ、その分野のトップで働いている人の講座が読むことができる。現在の医療業界が抱えている問題を広く知るには非常に良い本。

以下は各講座毎の個人的メモ

第1講座 未来の医学のヒントは「臨床」にある。

日本での、臨床研究がいかに不足しているかが分かる。「Nature」などの基礎研究での雑誌には、日本は3.3%と世界4位なのに対し、臨床医学で質の高い雑誌には、0.6%と低い。基礎研究は、まだ頑張れているのも意外な話だが。また、これには日本の大学病院が不健全な経営体質の強化を行ったため、重要な臨床研究に予算が割かれなかったと述べられている。アメリカでのベッド数あたりの職員の数が日本より多いのも意外だ。日本には医療の人材に余裕がない。

「ドラッグ・ラグ」(医薬品が世界ではじめて上市された時点と、それぞれの国で上市された時点の差)はやはり、日本は米国や英国と比べると2.5年多い。この原因に、(独)
医薬品医療機器総合機構の審査遅滞が指摘されるが、それだけでなく、治験前の開発・設計が企業側で非常に遅れていることもあると、述べられている。今後審査体制は増員するようだ。また、制度の変更や、財政的問題もある。今後は、薬事法や治験に詳しい専門家をどんどん病院におく必要がある。ここでも、制度の話もあるが、人材の問題が大きなポイントになっている。

また、臨床研究の負担が少なく、データの信頼性をあげる仕組みが必要。IT化やクラウドがキーワードとなる。また、今後臨床のレベルをあげ、世界に通じる産業に育てていくためには、国民も含めた大きな覚悟が必要。人材レベルを量的にも質的にもあげ、臨床の機会を増やし、ドラッグ・ラグの短縮を行い、世界規模の産業に育てる意気込みが大事。

第2講座 進化するグローバル R&D戦略と日本の役割

この講座では、武田薬品と第一三共の役員が講演を行っている。

上市一品目あたりでの、平均研究開発費の推計が著しく近年高くなっている(2006年で1246億円)ことと、開発期間も上がっていることを述べている。また、そのため生産効率は低下し、承認された新薬数が低下し、ピークを下回っていることを述べている。どういった技術が将来的に熟すかというのが分かりづらくなっているということだ。

武田薬品で面白いと思ったアプローチのひとつに、マルチINDエンジンモデルがある。一社ですべてのイノベーションを賄うことは難しく、多くの企業が各々のイノベーションを持ち寄ることで新薬が生まれるという、「Lesson from 60 years of pharmaceutical innovation」の分析から由来している考え方である。各地の研究の中心地に研究所を設立し、研究者がハブとなってネットワークを組み、R&Dをグローバル化し、臨床なども含め得意な地域で研究やINDを行っていくという考え方で、長期視点のある日本的な強い経営と、各国の得意とする分野をあわせて研究していこうとする方法。これが、成功すれば、武田はおもしろい会社になるのではないかと思う。もちろん、多くの会社のようにそれを管理するのは非常に難しいと思うが。

こういった試みは、第一三共にもみられる。製薬は他の産業よりもいち早く、グローバルなイノベーション競争の舞台に立ったというのは、よく理解できる。第一三共では、その中でもハイブリットビジネスモデルを提唱し、ジェネリック医薬品など、今までの産業構造を厳しくしていく制度を逆手に利用し、新興国などに従来の製薬を販売し多様化するニーズを満足させると同時に、世界的にもイノベーションのある新薬を開発していくという、ふたつの軸から成る経営方針を掲げている。ブロックバスターモデルというのが、今までの製薬の業界の高い収益を支えていたのは勉強になった。

また、製薬会社の規模は昔ほど追い求められていない。イノベーションの創薬を行うのは、規模の問題では必ずしもない。しかし、今後の研究費が膨れ上がる一方なら、ある程度の規模は必ず必要となるのではないか。そして、今後の研究費の削減には、バイオマーカーの技術に期待を寄せている。また、企業形態も統合型の企業から、分散型のネットワーク企業へと以降していくだろうと述べています。パソコンの業界事例を思い出させます。

第3講座 オープンイノベーションが動かす世界の医薬品産業

要約が本書にあるので、割愛。今後、オープンイノベーションや、産学連携などとどう向き合うべきかについて書かれている。産学連携のより密な連携は、どの業界でも言われていることであるが、リスク分散の観点から製薬の場合は非常に重要となると言われている。

第4講座 医薬品産業を一変させるジェネリック医薬品


英国、米国、ドイツなどがジェネリック医薬品で60%の浸透率をもつなか、日本は二番目に大きい医薬品市場の中、14%とかなり低い浸透率。また、日本のジェネリック医薬品メーカーも世界の中では、下位に位置する。その中で、ジェネリック医薬品のメーカーが、競争に打ち勝っていくためには、コストの改革と、付加価値による差別化が重要だと述べる。

また、テバの社長は、高い品質をいかに低価格でコスト競争力をもって提供できるかが重要と述べている。これは、スケールメリットが大きいという。このテバという会社おもしろい。買収の成功率100%を自負し、企業買収で大きくなり、しかも確実に協力者を増やしている印象だ。世界の主要市場でジェネリックで大きな成果を出している。しかし、日本のような新興国でありながら、ジェネリック医薬品が低シェアである、低ジェネリック医薬品業界を胎児的ジェネリック市場と呼ばれる市場もある。このような市場は大きな潜在的価値をもっているが、認可の問題で、テバはスケールメリットが活かせないという。日本と米国の認可が別々なのは個人的には致し方ないと思ってしまうが。。。しかし、このような市場の特殊性は各国様々にあるという。このような、問題をどう対応するかでも、各社のメーカーの考え方は異なる。また、バイオシミラー「バイオ後続品」が、薬剤費削減として期待されていることを知った。これだけ、医療の場では、医療費の削減が大きなキーワードとして、低価格でのコスト競争力が重要な部分であることが分かった。

確かに、ジェネリックがコスト競争力の問題が多く出されるので、劣悪という印象が持たされるのもわかるが、そこは生産においてイノベーションを起こす企業が強いということである。品質に関しては、しっかりと審査する必要があるのは言うまでもないが、後発だからこその品質の安定性もあると主張する。ただ、新薬メーカーの防護策が、誰のための医療なのかと思ってしまう。

今後の日本のジェネリックの浸透を行うには、日本の環境の特異性を理解し、薬剤師や医師にジェネリックへのインセンティブを与えると同時に、それらのサポート体制や情報公開などの仕組みをしっかりと構築していくことが重要であるようだ。

第5講座 日本発の医療技術イノベーション


まず、日本の医療機器・医薬品などの産業分野では輸入が輸出を大幅に上回っており、1,200%近い輸入超過になっている。東大は日本の産業を活発にするために、「ナノバイオ・インテグレーション拠点」を創設。研究を現場に活かすことを目標に富士フイルム、ニコン、日立製作所などと一緒に研究を行っている。そのなかでも、いつでも、どこでも、誰にでも、経済合理性を無視せずに、現場に届けようよしている。やはり、昨今は経済合理性を無視することは、医療にはできない。また、どこでも誰にでも、その研究結果を活かせるという目標設定は素晴らしいと思う。

潜在的市場の大きい医療産業としてバイオチップ(数千億円規模)や、ドラッグデリバリーシステム(DDS)(10年後に5兆円)、治療と診断を一体化した医療機器(一兆円)などを挙げており、患者への治療だけでなく、産業としての活性化も目指している。また、大学としての人材育成も目指している。

この章では、富士フイルムとテルモの幹部による講座がある。富士フイルムは、このまま目標通りライフサイエンスやメディカルの分野で成長を遂げることができれば、非常に医療分野で存在感の大きな会社になっていくと考えられる。個人的には、フイルムが衰退していく中で、これほど生まれ変われたというのは、正直すごいと思いました。

個人的には、売上は長らく医療をやってきた割に少ないながらも、テルモの講座について色々と感心させられた。まず、医療機器の発展が今後、医療経済性を改善することを述べた後、日本と他国の医療機器開発における現状の違いについて述べています。特に米国では、バイオメディカルエンジニアリングを習う場所がしっかりと存在することと、この医療の分野でもベンチャーなどの存在が大きいようです。特に、優秀な臨床医(Gruentzig, Fogarty, Yockなどが紹介)が、自分のアイデアを元に、人を集めベンチャーを作り、大企業に買収されていくということが大きな成果を生んでいる様子。また、テルモに目を向ければ、製品への着眼点がユニークな所や、自らトレーニング施設と呼ばれる、実験室や手術室を持っており、個人的には感心しました。

第6講座 先端ニーズが切り開く高度診断・支援ツール

個人的キーワード
オーダーメイド医療
パーソナライズドメディスン

生体検査について。臨床検査には二種類ある。検体検査と生体検査で、前者は試薬が付加価値を提供し、後者はCTやMRIなどの、機器が付加価値を提供する。これらの検査分野は、診療報酬体系により、当該産業団体は、大きな影響を受ける。そのため、医療費全体が伸びない今、業界全体としても、大きく成長していない。

GEのメディカルについて。インビトロ(人為的にコントロールされた試験管などの環境)からインビボ(体内)へと、診断の世界を変えていく。(X線→CT→PET)そのため、DNAを新バイオ医薬、診断機器へと結びつけることが重要。研究拠点も世界中にある。社会に対する目標設定が数字で、しっかり語られている印象があるので、これだけの多くの人を巻き込みながら成長していけるのだろう。特に、画像診断機器の充実や、病院内のITを地域にも広げようとするヘルスケアITの目標が今後気になるところ。(GEは、解決すべき世界の問題として、医療と環境の2つをあげている。)

第7講座 医療の物流・情報流に挑む異業種の新戦略

マイクロソフトの医療のIT化やクラウド化などの試みについて説明されている。過去、デジタル化していく世界で、アプリケーションやソフトで、邁進したマイクロソフトが新たな時代に、デジタル化の遅れた印象のある医療業界で、AmalgaやHealth Vaultなどのサービスを行っている。ただ、やはりここでもマイクロソフトはソフトウェアベースの古い戦法をとっているのではないかと気がしてなりません。今後医療業界では、世の中で起こったデジタル化の流れを再び再現しようとしているのかもしれません。つまりは、より社会的インフラが整った頃には、医療情報もよりクラウド化し、更にその先の医療のIT化が待っているかもしれません。

第8講座 高密度化する「医療専門職」の役割

平成8年と今(平成22年?)を比べると、救急の搬送出場件数は38%の増加の中、救急隊員数は8%の微増となっている。この増加の原因は、高齢者の増加だと考えられている。また、二次救急医療機関(入院治療を必要とする重症患者に対応する機関)が10年間で4000から3000に減少し、通報を受けてから病院に受け入れていただくまでも、8.3分の遅延となって、35分となっている。救急搬送に関して、ルール作りを行うとしているが、素人目では、こここそIT化してしまえば良いのにと思ってしまう。

看護職に関して。医師不足以上に深刻とされている、看護師不足。新卒就業者が必要数に足りないばかりか、中途退職も多い世界なので、免許はあるけど、働いていないという人が多い。こういった潜在看護職は55~65万人いると推定されている。再就職も、日進月歩の医療の世界では、そう単純ではないようです。そのため、現場の看護職の働きやすさの環境の充実が求められています。

また、看護は最近になり、専門学校から大学化へという流れが多くありました。これは、学生の大学・短大志向を指しているとされています。また、大学化して、教育のレベルを上げることは、現場の病院に入って中途退職者を減らすことになるとも考えているようです。

個人的には、本書でも指摘しているように、看護職の働く環境が向上されない限り、この今の中途退職の多さはなくらなないと思います。多くが女性で構成される職場で、半分以上が子育てをしながらの勤務になっています。そして、交代勤務や時間外での患者の病気に対する知識を得る時間の必要性などを考えると、仕事を続けるには、肉体的にも精神的にもタフさが必要ですし、家族の理解も普通以上に必要となるでしょう。

特に、以下の記述は驚いたので、掲載しておきます。これは、男性が行うような工場勤務より時間的にはきついものだと思います。"夜勤が月9回以上の看護職が50.7%、10回以上の看護職が26.2%、変則を含む3交代の平均夜勤回数は8.5回でした。超過勤務の実態に至っては、全国の病院勤務の看護職の約2万人が過労死危険レベルにありました(通常、過労死の認定は月80時間程度で、看護の場合は50~60時間以上とされています)。3交代で働く看護職に、さらに超過勤務をさせる国は先進国では他にないでしょう。看護職は24時間勤務の職種にも関わらず、さらに超過勤務があり、過労死の認定に当たる人が2万人もいるのです。・・・100床あたりの看護師の数が米国300人強、カナダ250人、イタリア180人、日本66.8人。"という現状を知っていたら、多くの人は辞めたがるでしょう。また、これは看護職だけの問題でなく、患者側にも大きなリスクとなります。看護師の数が減るほど、患者の死亡率は上がるとされているからです。

管理栄養士について。現在の医療費は34兆円。2025年には、45兆円になるという試算もある。これは、国力の低下を招く。これに対して医療費削減の目的とし、一次予防を提案している。平均寿命が高い日本はQOLが高いということはなく、むしろ間違いと述べている。寝たきりや欝病患者の多い日本では、むしろQOLは低い。これらは、習慣的な一次予防から改善できるとのこと。QOLが高い高齢者が増えれば、高齢者医療費は増えない。

薬局薬剤師について。本書で指摘しているように、薬剤師が処方箋しか見れないのは、おかしい事だと思われる。よく、薬剤師に"今日は〇〇の病気ですか?"と聞かれるが、あれは薬剤師が病名も知らない相手に、言われた通りに薬を配布しろという今の仕組みからきている。患者さんの情報にアクセスして、長期戦となる生活習慣病などに対応していくには、こういったチーム医療がより円滑に行える仕組みづくりが重要となっていくのではないだろうか?医療には、こういう早く変えれば良いのにと思われる部分が多々あるのだが、それは何故進まないのだろうか?

最後の永井良三氏の講座は非常に興味深い。日本がベット数あたりの患者が多いのは、ベット数が多いから。他国では、ベット数を少なくする変わりに、それを包括する社会システムが存在する。また、医師不足と言われていても、医師は他国より人口比でみると多い。しかし、手術件数になると、それが逆転する。実は、医師が手術を行う期間は限られ、ピラミッド型の組織が人材の有効活用を阻害していると言います。また、救急や看護師などに対して、ただ数を増やすだけでも、問題は解決しないとのべています。社会のシステムとして、これらの問題をどう解決するのかが重要であると。

具体的な例としてコロンビア大学と東大の大学病院を比較しています。同規模の病院であるにも関わらず、手術症例数は、コロンビア大学が1500で、東大が350です。この原因は、医師補助士がコロンビア大学には30人いるからだと言います。このように、ただ増やすのではなく、役割をうまく分けてシステムをよくすることが重要だと述べています。

いかに患者を増やさないために予防を行っていくか、それも地域レベルで。また、ただ量を増やすだけでなく、専門的に役割分担を行い、社会システムを構築していくかを議論していく必要があるようだ。

第9講座 医療・社会システムへの決断


冨山和彦氏の今の社会システムの講座も、非常に面白く、医療というより、何故国力が衰えているか、今後どうしていくべきかを論じています。リーマンショック以降、世界がState-Capitalismに軸足を変えていると述べている。一方、日本はSocialism-Stateとなっているとのこと。これは、既得権益を支持し、イノベーションの逆の道をいくとの主張。

米国では、現在ホワイトハウスが強いリーダーシップの元、研究開発だけでなく、公共政策を、きちんと政策ベースで考えている。

都市部のが高齢者の増加が著しいとのこと。今後、ますます都市部は住みづらくなるようだ。

この講座のパネルディスカッションも興味深い。研究が企業から大学へ以降したのは、米国の場合は強すぎる市場のプレッシャーが大きかったと述べている。また海外の大学の多くはキャピタリストがつくってきたため、日本も同じような形で企業から大学へと以降することが困難であった。なので、日本独自の解を今後は求めていく必要があると。また、すりあわせの技術が得意な日本の会社が海外に広く展開し、海外に雇用を多くつくるのではなく、そのすりあわせの技術を海外の会社が日本にお金を落としてくれるような、仕組みづくりが重要であるとも述べています。

本書の最後の"リアリストであれ"というのは、非常に良いメッセージだと思いました。フランスのミッテラン大統領を例にあげ、資産家から貧困層への再分配重視の政策ばかりを考えていましたが、現実を直視し、結果として成長を阻害し、再分配するものもなくなるとし、経済を立て直した経緯を紹介しています。

また、冨山和彦氏の"暴力的に年寄りを殺していく"というのも、時代の変わり目の今、若者は考える必要があるのかもしれません。個人的には、何が既得権益ばかりを保護し、何が結果的に成長を阻害しているか、真摯な目で見ていく必要があると思います。また、自分が本当に良いと思うことを行うことができず、それが阻害する環境ばかりが存在するなら、それは周りに対して冨山氏の表現を借りれば戦っていくしかないのかもしれません。

2011年7月11日月曜日

Why do you want you to do?


サイモン シネック: 優れたリーダーはどうやって行動を促すか


学生時代に、チームで行動している時に、あなたのビジョンは何かと問われた。

また、自分のラボでは、何故(どういった信念で)その研究を行っているのかを、ボスに問われた。

社会人になって、ただ仕事を求めている人ではなく、どういった信念でこの人は、仕事をしているのかを知りたいと思った

そして今、僕自身はWhyを元に働いているだろうか?自分のWhyを人に伝え、自分も行動できているだろうか?



一枚のゴールデンサークルの絵から、ここまで語ることのできる、プレゼンにも注目です。