原賀 康介 佐藤 千明
日刊工業新聞社
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マルチマテリアルを活かすための接着技術を知るのに
経産省もまとめているように、マルチマテリアルという考えが今後の構造材料の世界で求められていくと考えられています。
鋼やアルミ、CFRPなどのようなそれぞれ異なる特性を持った材料を必要に応じて使い、またそれらをうまく結合・締結することによって、今までとは異なる次元の軽量化や高強度化を達成しよう。というのがマルチマテリアルの考え方でしょう。
もちろん、それぞれの材料の特性が向上していくことも非常に重要なことですが、マルチマテリアルの設計を行う上では、異種の材料を結合する結合技術が非常に重要になってきます。
本書はその結合技術のひとつである”接着”を、マルチマテリアル化を目指す機械設計者に向けて、説明している本です。
今後も期待が大きい接着剤
マルチマテリアルを考える上では、重要となる接着技術ですが、今までの構造材ではあまり接着は積極的に使うものではなかったように感じます。
というのも、
・分解できない(やり直せない。検査もしにくい。)
・硬化時間が必要
・バラつきやすい
・接着剤が多く選定も難しい
・被着材も変われば接着剤との相性も変わり、更に選定を困難にさせる。
・被着材の表面状態に影響を受けやすい
(・化学結合なので機械エンジニアから敬遠される)
という短所が目立ったからだと思います。
しかし、異種材料を結合するという点では、多様な材料に用いやすいのはもちろん、ひずみの集中を避けれたり、高剛性化しやすやったり、シール性や振動などといった面では長所もあります。
短所と考えられてきた部分を補い、マルチマテリアル化という大きな長所を得ることは、接着に対する今後の重要な大きな仕事とも思えます。
といってもすでに、自動車分野では、軽量化を十分に発揮するために、BMW i3(下の動画の1分くらいから、接着剤を塗布している様子が見れます。)やトヨタのLFAなどは構造材に接着剤を使って締結しています。(どちらもCFRPをボディに用いています。)
BMW i3は電気自動車です。電気自動車の重要な指標のひとつは航続距離だと思います。なので、接着技術を使って、無駄なく材料特性を活かすことも重要な要素です。
(正直、CFRPボディを接着材で結合していると知った時は、”何かあった時、怖いな。”と思いましたが、多くの自動車メーカーが量産化(一般的な大衆車ではないが)しているというのは、うまくコントロールしている。というのを実証している気もします。
もちろん、本書にもあるように、リベットと接着を併用するなど、設計側でも安全性を考えることで成り立っているのだと思います。)
本書は、こういった注目をあびている接着技術の、持つべき観点や知識を、マルチマテリアルという軸をもって広く説明していますので、多くの方に参考になるのではないでしょうか?
以下は個人的なメモです
・塗装の焼付け工程の時に接着剤の硬化も同時に行うことがある。
・CFRPとの線膨係数や耐蝕性の観点から、航空機ではチタンが選ばれやすい。
・異種材を締結する場合、全体の剛性を維持しつつ、熱応力の緩和を考える必要がある。
ドアのインパネとアウターを接着する際もいえる。
・接着材の粘弾性特性を周波数に応じて変えられれば、熱応力や衝撃耐性、剛性維持との併用に応用できる可能性がある
・ラジカル重合で硬化するアクリル系接着剤は硬化時間と可使時間の比率が短縮しやすい。また、2液を混合する比率が厳密でなくても強度がでやすく、混合装置がなくても重ね塗布や、別々に塗布することが可能な場合も。
本書は、アクリル系接着剤を将来的に有望な接着剤と推奨しています。
・接着剤は硬化し、収縮するのが普通で、界面を引っ張ろうとする。
・外気に触れる量で、耐久性が変わる。
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