2013年8月25日日曜日

機械設計者にオススメの本 設計の面白みを知るのに

最近読んだ本で、設計の面白さを知ることのできる書籍、三冊を紹介したいと思います。


零戦 その誕生と栄光の記録 (講談社文庫)
講談社 (2013-07-26)
売り上げランキング: 24

”風立ちぬ”で更に有名になった、堀越二郎氏の設計です。海軍から与えれた要求仕様を満足するために、設計主任として、どういった優先順位で設計を行なったかが分かると思います。特に、当時の日本の情勢から、使える材料、エンジン、人材が限られているという条件の中で、最適と思える判断していたことは、感心するばかりです。

また、零戦が当時の日本の戦略の上で重要な役割を担っていたことを知ることもできます。資源や人材に乏しい日本が、戦争の初期において、戦果を出せていたのは、零戦が大きな役割をしていたことを、僕は初めて知りました。また、諸外国での零戦に対する脅威や、航空機後進国であった日本が最先端ともいえる飛行機を作ったという実績を知ることもできます。

このように、設計した航空機が重要な成果を果たしたことは、設計者として誤った判断をしていなかったことが伺えます。仕様だけでは埋まらないニーズを考え、設計上の優先順位を判断し、当時の情勢からの制約条件を見極め、慣例的な設計手法を疑い、信念と共に進んでいった堀越二郎氏から学ぶべきことがたくさんあると思います。

そして、設計者としてでなく、一個人としての戦争体験記としても興味深い書籍になっています。特に、軍部から発注を受ける立場にいたので、当時の軍や政府の戦略のなさについても知ることができます。読み物としても、オススメです。


エンジンのロマン―技術への限りない憧憬と挑戦
鈴木 孝
三樹書房
売り上げランキング: 94,546

一つの製品を丹念に知ることも勉強になりますが、一つのキーパーツの設計の歴史や変遷を追うのもおもしろいものです。

この書籍の面白いところは、設計の失敗事例の製品がわかりやすく記載していることです。斬新な発想や、アイデアに溺れ、最終的なバランスを欠いてしまった製品。発想の転換を迫られながらも、そこまで深められなかった製品。問題があることに目をつぶり、先に進んでしまった製品。

もちろん、成功した歴史的な製品も知ることができますし、エンジンの重要なキー技術についても分かりやすく解説しているのではないでしょうか。更には、それらのエンジンの搭載された、自動車、戦車、航空機の逸話も書かれていて面白いです。僕はエンジンに興味がなかったのですが、エンジンに興味をもてるようになる本です。

時代の関係からか、”車輪の再発明”的な話がよく出てくるのが、個人的には印象深かったです。”車輪の再発明”は、個人的には”無駄なこと”だと思っていました。しかし、現状の問題を正しく分析するには、前例を見ないことが、時には功を奏することがあるのだと知りました。

白黒ながら、写真が豊富なのもいいですよ。


クルマはかくして作られる 4 レクサスLFAの設計と生産 (別冊CG)
福野 礼一郎
カーグラフィック (2013-03-06)
売り上げランキング: 7,130

ナショナル ジオグラフィック〔DVD〕 レクサスLFA スーパー・ファクトリーのすべて
ナショナル ジオグラフィック
日経ナショナル ジオグラフィック社
売り上げランキング: 132,873


レクサスLFAの設計と生産についてのおおよそを知ることができます。スパーカーなので、僕には馴染みのない世界なのですが、写真が豊富で見やすいですし、工程なども見ることができます。正直、ここまでやってるのか!、そして見せるのか!と驚いたことばかりです。

レクサスLFAは500台の完全限定生産で、価格設定が3750万します。これでも、基本的には利益が出ないようです。その理由も、本書を見れば納得でしょう。非常に手間のかかった生産方法をしていますし、設備や材料ももちろん、細部にもこだわりを感じます。

自分はスーパーカーと大衆向け自動車の開発がどういう関係をもっているのか、理解していませんが、こういった技術的にも尖った製品が将来の大衆向け自動車の技術を支えるのでしょうか?

何はともあれ、一つの製品を軸に、多くの部品の設計や生産の様子を知ることができるので、全体のコンセプトと各部品設計への反映がどうされているのかな?というのを想像しながら読むことができるので、面白いです。

本自体は誰にでも読みやすく書かれていると思いますので、オススメです。

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