ジェフリー・ムーア
翔泳社
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キャズム
革新的といわれ、驚嘆された製品はなぜ市場から姿を消したのか?
その疑問に新しいヒントを与えてくれる古くからある良書です。
改めてキャズムとは。
”この製品は、まだキャズムを超えていない。”
ビジネス書で時折見る言葉です。
メインストリームと言われる大きな市場にまだこの製品は受け入れられていない。技術オタクにしか浸透していないという意味で使われます。
大きな市場へと繋がる深い溝(キャズム)を、その製品は超えていないのです。
テクノロジーのライフサイクルには、イノベーター、アーリーアダプター、アーリーマジョリティー、レイトマジョリティー、ラガードという5つの顧客層に分けて考えることができます。
それぞれの顧客層の間には、それぞれのクラックが存在しますが、最も大きなクラックがアーリーアダプターとアーリーマジョリティーの間に存在するキャズムです。
例えば、PDAはキャズムを説明するのに代表的な製品でした。iPhoneが出たことにより適例ではなくなりましたが。
また、電子ブックは、一昔前はキャズムを超えられていない典型例だった様です。しかし、現段階ではAmazonのKindleとクラウド化技術の躍進により米国ではキャズムを超えたと言っていいのでしょう。
キャズムを超えられなかった、ハイテクオタクに昔から人気だった技術として、AI(人工知能)や音声認識もあります。これに関しては、まだキャズムを超えたといえるものは少ないと思います。しかし、iPhoneのSiriには、キャズムを超えてくれるような夢を感じさせてくれますが。
掃除機とキャズム
以上の例と、今の国内事情を考えて思ったのですが、米国でキャズムを超えたものは、再び日本でキャズムに悩まされるであろうことが想像できます。
日本が保守的で、ガラパゴスな発想も問題かもしれませんが、販売チャンネルの確立、国内固有の問題などを解決し、アーリーマジョリティーに受け入れていもらうには、単純に米国の成功だけの事例ではうまくいかないでしょう。
まさにその例だと思うのはiRobotのルンバです。
米国では大ヒットした商品ですが、日本ではまだ誰もが買いたいと思う製品ではなく、キャズムを超えたとは言えないでしょう。
その理由として、日本の家庭事情と、米国の家庭事情の違いがあると思います。床に座る文化で、部屋も狭い日本ではルンバが掃除できないであろう空間は残念ながら多いでしょう。なので、床を掃除することはそこまで苦ではなく、床をルンバが掃除できるように維持しておくことのが苦だと思います。他にも、日本特有の事情が、キャズムを超えさせていない理由もあるのでしょうが。
何はともあれ、キャズムを超え、日本の掃除事情を変えてくれることを期待しています。
個人的には、家庭環境にフォーカスせず、体育館や展示場などを休みの日に自動で掃除してくれれば、良い需要があるのかな?とか思ってます。
キャズムを超えるには
内容を本に戻し、キャズムを超えるにあたって気になった部分をピックアップします。
・ユーザーの問題と量を的確に捉える
そのユーザーの市場はニッチだから、メインストリーム市場への橋かけとして期待できない。と考えてはいけません。
狙いを定めるべきメインストリームの市場につなげるためには、初期のターゲットを明確にし、製品のシナリオを作り、問題を明確にし改善する。その結果からメインストリームへとつなげていくことを考える。
なので、キャズムを超えようとする際は、ターゲットを限定する必要があえてある。
特に、最も重要なアーリーマジョリティー(実利主義者)は、技術ではなく、その製品がトータルとして競争相手に差をつけ、最大限の利益を得ることができ、自分たちの問題を解決してくれるかを考えています。
・ホールプロダクト
キャズムを超えるには、アーリーマジョリティーが重要だが、彼らは前述したように、実利主義者とも呼ばれる。彼らに受け入れてもらうには、彼らが欲しているものを提供する必要がある。彼らは、ホールプロダクトを欲している。
・エレベーターテスト
メッセージの作成。エレベーターの中に乗っているくらいの短い時間で、その製品のメッセージを伝えられないといけない。
・競争力を高めるポジショニング
テクノロジー製品が5つの顧客を表したベルカーブの図を左から右に流れていく時に、それぞれのターゲット・カスタマーが何に対して価値を置いているかは異なる。
最後に
ある市場には、似たような思考を持った人が集まっていると、時折錯覚してしまいがちですが、そこには色々な思考を持った人が存在します。
ハイテク製品でメインストリーム市場で売れた製品は、多かれ少なかれ、キャズムのベルカーブのモデルの各クラックを飛び越え、多くの人に受けいられてきたのでしょう。
では、キャズムを超えるために、まずはどのようにシナリオを組むべきか。少し考えてみたいところです。