2011年8月29日月曜日

ジョブズ・ウェイ 世界を変えるリーダーシップ Jay Elliot William L. Simon

ジョブズ・ウェイ 世界を変えるリーダーシップ
ジェイ・エリオット ウィリアム・L・サイモン Jay Elliot William L. Simon
ソフトバンククリエイティブ
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ジョブズ・ウェイ 世界を変えるリーダーシップ

数あるJobs本の中でも、この本はシンプルでかつすばらしいメッセージを放っています。そのメッセージとはJobs風に言えば、以下の一言に収まるでしょう。

"Why join the navy if you can be a pirate?"

・起業家精神のある企業風土。
・なぜ、こうなのか?ではなく、なぜできないのか?
・次の成長、利益ではなく、価値観の変化を。世界を変える次の製品に。
・宝くじにあたったらあなたは仕事をやめますか?

数ある言葉で、ジョブズが情熱をどこにフォーカスしていたかをこの本では表現しています。そして、その驚異的な成果をもたらしたジョブズの精神は、ジョブズだけの専売特許ではないはずです。

また、ジョブズも自分が何に得意であるかと気づくまでには、多くの失敗に時間を費やしました。そして、僕達の得意な分野はジョブズとは違うはずでず。

もちろん彼ほどストイックになれる人は世界にはなかなかいないでしょう。
日本にはかつて盛田昭夫がいましたが。

そして、そんな彼らをこう呼ぶ人もいます。

ジョブズは発明ではなく盗作の天才だった

確かにジョブズの人生に大きなアイデアを与えたのは、HPのパロアルト研究所だったかもしれません。しかし、彼には製品を誰よりも愛し、世界を変えようとする情熱が誰よりもありました。彼は、エンジニア以上の情熱を持ち合わせていました。その結果のひとつが、ホリスティックな製品開発だったのかもしれません。

本気で変えようとする情熱家達を応援し、僕達もその一員になろうではありませんか。しかし、数字を追うだけで、製品を愛していない企業も残念ながら存在することも確かです。

news - HPのctrl+alt+delが英断どころか油断だらけの理由

あなたは、海軍の一員になりたいですか?海賊の一員になりたいですか?あなたが、海賊の一員になろうというなら、この本は読まなければいけないでしょう。あなたが、情熱を持って注ぐべき仕事は必ずあるはずです。

2011年8月7日日曜日

改革のための医療経済学 Health Economics for Reform 兪 炳匡

「改革」のための医療経済学
兪 炳匡
メディカ出版
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医療政策を論じるならば、この本は必読。そして、多くの医療従事者も必読。様々な医療政策に存在する"誤解"を知るには良書。少なくとも僕は目からウロコの連続で、いかに医療に対する通説が間違っているか、政策決定の考え方が間違っているかを理解させてくれました。

まず、以下の文章を読むだけでも、個人的には衝撃的。"医療費高騰の犯人探しについて、今まで言われてきた5 つの要因(人口の高齢化、医療保険制度の普及、国民所得の上昇、医師供給数増加、医療分野と他産業分野の生産性上昇格差)は、あまり寄与していないことは欧米の実証研究が示唆している。これらの要因の寄与率を全て足し合わせても米国の総医療費上昇率の25~50%しか説明できない。残りの説明できない75~50%を占める、医療費高騰の黒幕ないし真犯人は、医療経済研究者の間では「医療技術の進歩」と予想されている。"また、予防医療が本当に医療のコストを下げない理由や、米国の医療の満足度が高いという識者の包括的分析の欠如。日本の政策決定のためのデータの決定的不足。多くが衝撃的です。また、日本の医療が偶発的に安くあがっているという事実も驚きできした。

ただ、強いて難癖をつけるならば、今叫ばれている医療改革制度が間違っていることは述べられているが、具体的に日本が直面している医療政策の問題と、解決策の提言を豊富に述べて欲しいところ。

しかし、それらを本当に議論するには、日本の政策決定を行うためのデータが著しく欠如している。つまりは、そこが問題なのだが、それだけでは読み物としては、寂しいものがある。

最後に、政策決定を決めるにはどういった理念を持つべきがという問題にいきつく。私たちがどういう世界を望むか。それは、私たち一人ひとりの読者の問題でもある。

以下は個人的メモ

2章 比較による医療の相対的位置づけ


ここでは、各国の指標を比較することの医療経済学における重要性を述べています。それと同時に、比較はあくまでも相対的なものであること、また、指標のつまみ喰いによる、特定の主張者の存在に注意を喚起しています。そして、日本は医療経済に対しのアカデミックな部分はやっと成長しはじめたばかりなようです。何はともあれ、相対的な位置を把握し、政策決定などの助けとしようとのことでしょう。

続いて、社会保証の支出の変動を実際の資料を使って議論します。よく、社会保障に使われる伸び率が大きいと言われているようですが、公共事業関係費よりも少ないとされています。そして、他国との比較では、先進国の中では医療に対する社会保障費が少ないようです。

ここで驚いたのが米国の医療支出です。"米国の社会保障に含まれる医療とは、公的医療プログラムである、全人口の14%をカバーする高齢者対象のメディケア(Medicare)と、約13%をカバーする低所得者対象のメディケイド(Medicaid)を補助・運営するだけでGDPの約6%を投じています。同じGDPの約6%を投じて、補助・運営される日本の公的医療保険が人口の100%をカバーしていることを考慮すれば、日本の医療は国際的水準からみても「安くあがっている」といえるでしょう。"とのこと。

また、個人の医療支出を含めて全医療費の支出でも、日本は英国と同じレベルで新興国の中で低い水準となっています。一方で米国の医療費は群を抜いて高いと言われています。そして、日本は「アクセス」(病院への受けやすさ)もかなりいいとのこと。待ち時間が長いといわれている日本の病院でも、海外から比べるとだいぶ良く、米国では15分の診断を受けるのに一週間の予約が必要であったり、保険会社が受ける医療機関を制限したりしているとのこと。また、有保険者とそうでない人の差別もやはりあるようです。

一般的に医療費が高い国が、医療の質が良いとされているが、その例外が日本と米国。日本は低いのに質が高く、米国は高いのに質が低い。日本の特徴としては、診療に従事する医師の数が少なかったり、CTやMRIの装備が数倍以上の規模であったり、現在は変わってきているが、「薬漬け診療」があったりしたよう。むしろ、今では「過少投薬」を心配する声も。また、医師の必要数の地域による偏りは大きいようです。

各国の医療満足度はデータのつまみ喰いの仕方や、患者の住む場所、患者が中流以上かそうでないかなどによる見方によって、大きく変わるようですが、全般としては日本は高い位置にいるようです。

3章 医療経済学に何ができるのか

医療経済学がどういうものなのか、どういう目的のある学問なのかということを、説明しています。経済学と経営学の違い、社会全体の効率と福祉を最大化し、資源をどのように配分するかなど、経済学の無縁の僕にも分かりやすく書かれています。特に、予防接種の一例は非常に勉強になり、「市場の失敗」についても学びました。このような、全体視点から物事を考える事も非常に今後大事だと痛感しました。

また、規範的な、しかも広い範囲を扱った、経済学の命題(「民営化によって医療全体の効率が向上するか否か」)についての、断片的な話があげられるときは、まず疑った方が良いと主張しています。このような命題に対して、単純明快な解は今後も存在せず、前提条件であるX,Y,Zがほぼ満たされた時に限り、解決策はAとなる。としか答えられず、おのずと答えも複数となる。

最後に、医療経済学を専門的に学ぶにはどうすれば良いかについて答えています。

4章 医療費高騰の犯人探し

本書のひとつの醍醐味はこの章にあると思います。従来、医療費高騰に寄与していると思われている、いくつかのファクターについて、小物(実際はそこまで寄与していなかった)であることを説明します。このような、間違った犯人を示すことは、政策決定上、意味のないものにヒトとお金を使う必要がなくなり、大変重要です。

高齢化社会が医療費高騰に寄与しているかの問いに、相関性なし、もしくは、あっても非常に軽微という研究結果が多いようです。これはかなり意外です。急性期の医療費はみなほとんど同じで、寿命に関係なく、介護医療費を上昇させると述べています。しかし、高齢者の総医療費の3分の2は急性医療費がしめています。しかし、もちろん、年金などによる財政の圧迫の可能性と、慢性疾患などについては厳密に判断できないと留保する部分もあります。

続いて、医療保険における医療費高騰についてです。ここでは、医療保険制度が必要か。という、根本的な疑問から議論しています。この手の議論には「RAND医療保険研究」がこの分野で、「知らなければモグリ」といわれるほど有名なようです。まず、保険制度がパレード最適配分という言葉で、社会全体の経済厚生を高めることができるとまず説明しています。しかし、モラルハザードが起こる可能性が医療には十分にあるため、最適な措置ではないが、次善の策であるという認識があることを説明しています。RAND医療保険研究をまとめた「Free for All」の内容は個人的に驚きました。患者負担レベルを分けたグループの、医療の受診率、健康状態、医療費などの違いについて調査したこの研究は、最終的にどのグループも、医療費全体の増大を起こさなかったと述べています。しかし、5%以上の患者負担がある方が、低所得者の健康状態は悪化します。しかし、健康な人にとっては、医療保険制度は資源の浪費、上述のモラルハザードを誘発し、患者負担が低いほどその度合いが顕著になるため、「Free for ALl」では、全ての人が窓口負担がゼロで受信できことに対して疑問を呈しています。本書では、モラルハザードの問題も含めて、功が罪を上回る可能性が十分あるため、「次善の策として必要」との合意に、多くの医療経済学者は至っていると述べています。

長期介護医療費は、総医療費からみればわずかですが、人口の高齢化が施設介護費を大きくあげているのは事実。また、家族介護を考えれば、精神的負担は大きく、財政上の問題も大きいのではないかと想像します。この部分の問題は、未だ良い解決策があるとは思えません。

5章 改革へのロードマップ

医療保険を民営化して大失敗をした米国や、チリ、フィリピンを例に議論が行われています。民営化=効率化という図式が簡単には当てはまらないこと。また、「最低限の医療は基本的人権」という理念を選択する以上、政府のある程度の介入は不可欠で、市場に任せた医療に困難が多くみられていることが述べられています。結果的に多くの諸国が民営化されていない保険のが効率が良いと述べられているのは、注目に値すると思います。また、各医療機関(病院)などが、市場原理主義的に競争にさらされても、医療費の効率が上がるとは限らないようです。(サービスは、費用を上乗せすることであがるかもしれません。患者の待遇など)また、地域に医療施設が少ない場所では、競争的医療市場が存在しない場所が多く存在するため、競争が意味をなさないとも言われています。また、民営化によって構造的二層化が生じると、効率が悪化するばかりでばく、後戻りがしずらいといったことも懸念されています。

日本の問題として、費用対効果・便益分析(CEA・CBA)が非常に遅れていることが指摘されています。インプットに対して、どれだけの健康などが促進されたかというアウトプットが、より一層あがるには、これらの考え方が重要かもしれません。

日本の医療機関はNPOで、株式会社の参入は許されていません。これは、医者が経営方針に依存する場合が多いため、効率化に対してよく疑問視される部分であるようです。しかし、株式会社が一部医療機関を運営している米国などは、残念ながら効率的とは反対方向の医療へと進んでいるようです。著者はここで、効率化を促進できるNPOの体制構築を提言しています。また、NPOのより一層の地域住民との関わり合いを促進するため、税控除などの法整備を行うべきだと主張しています。



統括として、日本は偶発的に他国と比べて質の高い医療を安く提供できた事実があります。しかし、昨今の医療政策を変えようという働きは、短絡的な見方が多く悪い方向に政策が転換される可能性は拭えません。医療経済学という観点から見るならば、投入した金額に対して、どれだけの健康を促進できたか。限られた資源を最も効率良く分配できたか。という視点からきちんと物事を考える必要があります。また、より一層の効率化のため、株式会社ではなく、NPOという形式の中で医療を改善していける法整備と、中立的な視点から議論を行うためのデータの収集が必要です。日本の医療政策決定が貧弱な印象を覚えるのは、データからモノを考えるという、極めて基礎的な仕組みができていないからなのでしょう。

2011年7月13日水曜日

よくわかる医療機器業界・最新勢力地図





俗に言う業界本かと思ったが、中味はそれとは違い、それ相応の内容があったのと、情報も最近のモノなので、いくつか勉強になりました。

ニッチ市場としての集積としての巨大市場

医療機器業界はその市場規模は3兆円を超えるという市場規模を持っていますが、それぞれの各分野で高いシェアを持っていても、売上としては少なく、他の業界と異なり、高いシェアをあるニッチな市場で得たとしても、平面展開がしずらいといった店があります。これは、同じ医療といっても、医薬品とは大きく異なる所です。しかし、そのニッチ市場性が、新規参入しやすい市場でもある。これは兼業メーカーが多いことからも伺え、審査は厳しいが、アイデアと技術、生産能力があれば、広く参入がしやすい。もちろん、きちんと現場のニーズを理解できる必要はあるだろう。

デバイスラグ

ドラッグラグだけでなく、デバイスラグという言葉がある。そのせいで、海外で使われている機器が日本で使えないという事態が発生する。平均で19ヶ月といわれている。ドラッグラグにおいては29ヶ月。本書では、ドラッグラグにおいては、副作用の存在と、日本人と欧米人の人種による差から、ある程度は仕方ないと述べている。しかし、デバイスラグにおいては、一部の医療機器を除き、ほとんど副作用がないので、理論的にゼロでよいとのべている。このデバイスラグの原因は厚生労働省の怠慢という。これはたったの48人というスタッフの少なさが物語っている。また、PMDAでもスタッフが結局足りないと、主張されている。(PMDAについては、こちら

審査が厳しすぎるのも大きな問題のようだ。それらのせいで、海外では一般的に普及している医療機器も、日本では普及しないという事態が発生している。今後の計画でこれらが、きちんと改善されるかが、重要な問題である。今の状態では、海外で認可されてからそれをわざわざ日本で申請するという現象がおきている。本書では、テルモの補助人工心臓などを例に、この問題について解説している。

国の対応として、スーパー特区の話がよく出てくる。一箇所にお金を一気に集中させるのは、日本らしいやり方。よく、京大のiPS細胞が例に出てくるが、iPS細胞の将来の価値はそれほど大きいのだろうか、個人的には詳しくないので知りたいところ。また、筆者はこの、日本の弱かった横断的なスーパー特区のプロジェクトに大きく期待をしているよう。日本らしき解となるのか、将来が気になるところ。



本書の後半は各日本企業の会社の紹介となっている。富士フイルムの、現在の成長の早さにはやはり目の見張るものがあるようだ。日本では存在しなかった、総合医療メーカーが誕生するかもしれない。現状でも、医療のネットワークシステムで高い評価をシェアを持っているのは知らなかった。しかし、外資系に強く負けたこの状況はいつまで続くのだろうか。。。日本も積極的に医療市場を取り込んでいき、今後も今も大きな問題となっている医療業界を大きく変えていかないといけない。また、日本だけでなく、やはり今後は海外市場が大きなマーケットとなるようだ。最後に、よく言われることでもあるが、M&Aも単純なスケールメリットが活かせないというのは、勉強になった。

医療産業の変革 劇的なタイミング





現在の医療産業を勉強しようと思い手にとった本。
様々なキーワードを広く学ぶことができ、その分野のトップで働いている人の講座が読むことができる。現在の医療業界が抱えている問題を広く知るには非常に良い本。

以下は各講座毎の個人的メモ

第1講座 未来の医学のヒントは「臨床」にある。

日本での、臨床研究がいかに不足しているかが分かる。「Nature」などの基礎研究での雑誌には、日本は3.3%と世界4位なのに対し、臨床医学で質の高い雑誌には、0.6%と低い。基礎研究は、まだ頑張れているのも意外な話だが。また、これには日本の大学病院が不健全な経営体質の強化を行ったため、重要な臨床研究に予算が割かれなかったと述べられている。アメリカでのベッド数あたりの職員の数が日本より多いのも意外だ。日本には医療の人材に余裕がない。

「ドラッグ・ラグ」(医薬品が世界ではじめて上市された時点と、それぞれの国で上市された時点の差)はやはり、日本は米国や英国と比べると2.5年多い。この原因に、(独)
医薬品医療機器総合機構の審査遅滞が指摘されるが、それだけでなく、治験前の開発・設計が企業側で非常に遅れていることもあると、述べられている。今後審査体制は増員するようだ。また、制度の変更や、財政的問題もある。今後は、薬事法や治験に詳しい専門家をどんどん病院におく必要がある。ここでも、制度の話もあるが、人材の問題が大きなポイントになっている。

また、臨床研究の負担が少なく、データの信頼性をあげる仕組みが必要。IT化やクラウドがキーワードとなる。また、今後臨床のレベルをあげ、世界に通じる産業に育てていくためには、国民も含めた大きな覚悟が必要。人材レベルを量的にも質的にもあげ、臨床の機会を増やし、ドラッグ・ラグの短縮を行い、世界規模の産業に育てる意気込みが大事。

第2講座 進化するグローバル R&D戦略と日本の役割

この講座では、武田薬品と第一三共の役員が講演を行っている。

上市一品目あたりでの、平均研究開発費の推計が著しく近年高くなっている(2006年で1246億円)ことと、開発期間も上がっていることを述べている。また、そのため生産効率は低下し、承認された新薬数が低下し、ピークを下回っていることを述べている。どういった技術が将来的に熟すかというのが分かりづらくなっているということだ。

武田薬品で面白いと思ったアプローチのひとつに、マルチINDエンジンモデルがある。一社ですべてのイノベーションを賄うことは難しく、多くの企業が各々のイノベーションを持ち寄ることで新薬が生まれるという、「Lesson from 60 years of pharmaceutical innovation」の分析から由来している考え方である。各地の研究の中心地に研究所を設立し、研究者がハブとなってネットワークを組み、R&Dをグローバル化し、臨床なども含め得意な地域で研究やINDを行っていくという考え方で、長期視点のある日本的な強い経営と、各国の得意とする分野をあわせて研究していこうとする方法。これが、成功すれば、武田はおもしろい会社になるのではないかと思う。もちろん、多くの会社のようにそれを管理するのは非常に難しいと思うが。

こういった試みは、第一三共にもみられる。製薬は他の産業よりもいち早く、グローバルなイノベーション競争の舞台に立ったというのは、よく理解できる。第一三共では、その中でもハイブリットビジネスモデルを提唱し、ジェネリック医薬品など、今までの産業構造を厳しくしていく制度を逆手に利用し、新興国などに従来の製薬を販売し多様化するニーズを満足させると同時に、世界的にもイノベーションのある新薬を開発していくという、ふたつの軸から成る経営方針を掲げている。ブロックバスターモデルというのが、今までの製薬の業界の高い収益を支えていたのは勉強になった。

また、製薬会社の規模は昔ほど追い求められていない。イノベーションの創薬を行うのは、規模の問題では必ずしもない。しかし、今後の研究費が膨れ上がる一方なら、ある程度の規模は必ず必要となるのではないか。そして、今後の研究費の削減には、バイオマーカーの技術に期待を寄せている。また、企業形態も統合型の企業から、分散型のネットワーク企業へと以降していくだろうと述べています。パソコンの業界事例を思い出させます。

第3講座 オープンイノベーションが動かす世界の医薬品産業

要約が本書にあるので、割愛。今後、オープンイノベーションや、産学連携などとどう向き合うべきかについて書かれている。産学連携のより密な連携は、どの業界でも言われていることであるが、リスク分散の観点から製薬の場合は非常に重要となると言われている。

第4講座 医薬品産業を一変させるジェネリック医薬品


英国、米国、ドイツなどがジェネリック医薬品で60%の浸透率をもつなか、日本は二番目に大きい医薬品市場の中、14%とかなり低い浸透率。また、日本のジェネリック医薬品メーカーも世界の中では、下位に位置する。その中で、ジェネリック医薬品のメーカーが、競争に打ち勝っていくためには、コストの改革と、付加価値による差別化が重要だと述べる。

また、テバの社長は、高い品質をいかに低価格でコスト競争力をもって提供できるかが重要と述べている。これは、スケールメリットが大きいという。このテバという会社おもしろい。買収の成功率100%を自負し、企業買収で大きくなり、しかも確実に協力者を増やしている印象だ。世界の主要市場でジェネリックで大きな成果を出している。しかし、日本のような新興国でありながら、ジェネリック医薬品が低シェアである、低ジェネリック医薬品業界を胎児的ジェネリック市場と呼ばれる市場もある。このような市場は大きな潜在的価値をもっているが、認可の問題で、テバはスケールメリットが活かせないという。日本と米国の認可が別々なのは個人的には致し方ないと思ってしまうが。。。しかし、このような市場の特殊性は各国様々にあるという。このような、問題をどう対応するかでも、各社のメーカーの考え方は異なる。また、バイオシミラー「バイオ後続品」が、薬剤費削減として期待されていることを知った。これだけ、医療の場では、医療費の削減が大きなキーワードとして、低価格でのコスト競争力が重要な部分であることが分かった。

確かに、ジェネリックがコスト競争力の問題が多く出されるので、劣悪という印象が持たされるのもわかるが、そこは生産においてイノベーションを起こす企業が強いということである。品質に関しては、しっかりと審査する必要があるのは言うまでもないが、後発だからこその品質の安定性もあると主張する。ただ、新薬メーカーの防護策が、誰のための医療なのかと思ってしまう。

今後の日本のジェネリックの浸透を行うには、日本の環境の特異性を理解し、薬剤師や医師にジェネリックへのインセンティブを与えると同時に、それらのサポート体制や情報公開などの仕組みをしっかりと構築していくことが重要であるようだ。

第5講座 日本発の医療技術イノベーション


まず、日本の医療機器・医薬品などの産業分野では輸入が輸出を大幅に上回っており、1,200%近い輸入超過になっている。東大は日本の産業を活発にするために、「ナノバイオ・インテグレーション拠点」を創設。研究を現場に活かすことを目標に富士フイルム、ニコン、日立製作所などと一緒に研究を行っている。そのなかでも、いつでも、どこでも、誰にでも、経済合理性を無視せずに、現場に届けようよしている。やはり、昨今は経済合理性を無視することは、医療にはできない。また、どこでも誰にでも、その研究結果を活かせるという目標設定は素晴らしいと思う。

潜在的市場の大きい医療産業としてバイオチップ(数千億円規模)や、ドラッグデリバリーシステム(DDS)(10年後に5兆円)、治療と診断を一体化した医療機器(一兆円)などを挙げており、患者への治療だけでなく、産業としての活性化も目指している。また、大学としての人材育成も目指している。

この章では、富士フイルムとテルモの幹部による講座がある。富士フイルムは、このまま目標通りライフサイエンスやメディカルの分野で成長を遂げることができれば、非常に医療分野で存在感の大きな会社になっていくと考えられる。個人的には、フイルムが衰退していく中で、これほど生まれ変われたというのは、正直すごいと思いました。

個人的には、売上は長らく医療をやってきた割に少ないながらも、テルモの講座について色々と感心させられた。まず、医療機器の発展が今後、医療経済性を改善することを述べた後、日本と他国の医療機器開発における現状の違いについて述べています。特に米国では、バイオメディカルエンジニアリングを習う場所がしっかりと存在することと、この医療の分野でもベンチャーなどの存在が大きいようです。特に、優秀な臨床医(Gruentzig, Fogarty, Yockなどが紹介)が、自分のアイデアを元に、人を集めベンチャーを作り、大企業に買収されていくということが大きな成果を生んでいる様子。また、テルモに目を向ければ、製品への着眼点がユニークな所や、自らトレーニング施設と呼ばれる、実験室や手術室を持っており、個人的には感心しました。

第6講座 先端ニーズが切り開く高度診断・支援ツール

個人的キーワード
オーダーメイド医療
パーソナライズドメディスン

生体検査について。臨床検査には二種類ある。検体検査と生体検査で、前者は試薬が付加価値を提供し、後者はCTやMRIなどの、機器が付加価値を提供する。これらの検査分野は、診療報酬体系により、当該産業団体は、大きな影響を受ける。そのため、医療費全体が伸びない今、業界全体としても、大きく成長していない。

GEのメディカルについて。インビトロ(人為的にコントロールされた試験管などの環境)からインビボ(体内)へと、診断の世界を変えていく。(X線→CT→PET)そのため、DNAを新バイオ医薬、診断機器へと結びつけることが重要。研究拠点も世界中にある。社会に対する目標設定が数字で、しっかり語られている印象があるので、これだけの多くの人を巻き込みながら成長していけるのだろう。特に、画像診断機器の充実や、病院内のITを地域にも広げようとするヘルスケアITの目標が今後気になるところ。(GEは、解決すべき世界の問題として、医療と環境の2つをあげている。)

第7講座 医療の物流・情報流に挑む異業種の新戦略

マイクロソフトの医療のIT化やクラウド化などの試みについて説明されている。過去、デジタル化していく世界で、アプリケーションやソフトで、邁進したマイクロソフトが新たな時代に、デジタル化の遅れた印象のある医療業界で、AmalgaやHealth Vaultなどのサービスを行っている。ただ、やはりここでもマイクロソフトはソフトウェアベースの古い戦法をとっているのではないかと気がしてなりません。今後医療業界では、世の中で起こったデジタル化の流れを再び再現しようとしているのかもしれません。つまりは、より社会的インフラが整った頃には、医療情報もよりクラウド化し、更にその先の医療のIT化が待っているかもしれません。

第8講座 高密度化する「医療専門職」の役割

平成8年と今(平成22年?)を比べると、救急の搬送出場件数は38%の増加の中、救急隊員数は8%の微増となっている。この増加の原因は、高齢者の増加だと考えられている。また、二次救急医療機関(入院治療を必要とする重症患者に対応する機関)が10年間で4000から3000に減少し、通報を受けてから病院に受け入れていただくまでも、8.3分の遅延となって、35分となっている。救急搬送に関して、ルール作りを行うとしているが、素人目では、こここそIT化してしまえば良いのにと思ってしまう。

看護職に関して。医師不足以上に深刻とされている、看護師不足。新卒就業者が必要数に足りないばかりか、中途退職も多い世界なので、免許はあるけど、働いていないという人が多い。こういった潜在看護職は55~65万人いると推定されている。再就職も、日進月歩の医療の世界では、そう単純ではないようです。そのため、現場の看護職の働きやすさの環境の充実が求められています。

また、看護は最近になり、専門学校から大学化へという流れが多くありました。これは、学生の大学・短大志向を指しているとされています。また、大学化して、教育のレベルを上げることは、現場の病院に入って中途退職者を減らすことになるとも考えているようです。

個人的には、本書でも指摘しているように、看護職の働く環境が向上されない限り、この今の中途退職の多さはなくらなないと思います。多くが女性で構成される職場で、半分以上が子育てをしながらの勤務になっています。そして、交代勤務や時間外での患者の病気に対する知識を得る時間の必要性などを考えると、仕事を続けるには、肉体的にも精神的にもタフさが必要ですし、家族の理解も普通以上に必要となるでしょう。

特に、以下の記述は驚いたので、掲載しておきます。これは、男性が行うような工場勤務より時間的にはきついものだと思います。"夜勤が月9回以上の看護職が50.7%、10回以上の看護職が26.2%、変則を含む3交代の平均夜勤回数は8.5回でした。超過勤務の実態に至っては、全国の病院勤務の看護職の約2万人が過労死危険レベルにありました(通常、過労死の認定は月80時間程度で、看護の場合は50~60時間以上とされています)。3交代で働く看護職に、さらに超過勤務をさせる国は先進国では他にないでしょう。看護職は24時間勤務の職種にも関わらず、さらに超過勤務があり、過労死の認定に当たる人が2万人もいるのです。・・・100床あたりの看護師の数が米国300人強、カナダ250人、イタリア180人、日本66.8人。"という現状を知っていたら、多くの人は辞めたがるでしょう。また、これは看護職だけの問題でなく、患者側にも大きなリスクとなります。看護師の数が減るほど、患者の死亡率は上がるとされているからです。

管理栄養士について。現在の医療費は34兆円。2025年には、45兆円になるという試算もある。これは、国力の低下を招く。これに対して医療費削減の目的とし、一次予防を提案している。平均寿命が高い日本はQOLが高いということはなく、むしろ間違いと述べている。寝たきりや欝病患者の多い日本では、むしろQOLは低い。これらは、習慣的な一次予防から改善できるとのこと。QOLが高い高齢者が増えれば、高齢者医療費は増えない。

薬局薬剤師について。本書で指摘しているように、薬剤師が処方箋しか見れないのは、おかしい事だと思われる。よく、薬剤師に"今日は〇〇の病気ですか?"と聞かれるが、あれは薬剤師が病名も知らない相手に、言われた通りに薬を配布しろという今の仕組みからきている。患者さんの情報にアクセスして、長期戦となる生活習慣病などに対応していくには、こういったチーム医療がより円滑に行える仕組みづくりが重要となっていくのではないだろうか?医療には、こういう早く変えれば良いのにと思われる部分が多々あるのだが、それは何故進まないのだろうか?

最後の永井良三氏の講座は非常に興味深い。日本がベット数あたりの患者が多いのは、ベット数が多いから。他国では、ベット数を少なくする変わりに、それを包括する社会システムが存在する。また、医師不足と言われていても、医師は他国より人口比でみると多い。しかし、手術件数になると、それが逆転する。実は、医師が手術を行う期間は限られ、ピラミッド型の組織が人材の有効活用を阻害していると言います。また、救急や看護師などに対して、ただ数を増やすだけでも、問題は解決しないとのべています。社会のシステムとして、これらの問題をどう解決するのかが重要であると。

具体的な例としてコロンビア大学と東大の大学病院を比較しています。同規模の病院であるにも関わらず、手術症例数は、コロンビア大学が1500で、東大が350です。この原因は、医師補助士がコロンビア大学には30人いるからだと言います。このように、ただ増やすのではなく、役割をうまく分けてシステムをよくすることが重要だと述べています。

いかに患者を増やさないために予防を行っていくか、それも地域レベルで。また、ただ量を増やすだけでなく、専門的に役割分担を行い、社会システムを構築していくかを議論していく必要があるようだ。

第9講座 医療・社会システムへの決断


冨山和彦氏の今の社会システムの講座も、非常に面白く、医療というより、何故国力が衰えているか、今後どうしていくべきかを論じています。リーマンショック以降、世界がState-Capitalismに軸足を変えていると述べている。一方、日本はSocialism-Stateとなっているとのこと。これは、既得権益を支持し、イノベーションの逆の道をいくとの主張。

米国では、現在ホワイトハウスが強いリーダーシップの元、研究開発だけでなく、公共政策を、きちんと政策ベースで考えている。

都市部のが高齢者の増加が著しいとのこと。今後、ますます都市部は住みづらくなるようだ。

この講座のパネルディスカッションも興味深い。研究が企業から大学へ以降したのは、米国の場合は強すぎる市場のプレッシャーが大きかったと述べている。また海外の大学の多くはキャピタリストがつくってきたため、日本も同じような形で企業から大学へと以降することが困難であった。なので、日本独自の解を今後は求めていく必要があると。また、すりあわせの技術が得意な日本の会社が海外に広く展開し、海外に雇用を多くつくるのではなく、そのすりあわせの技術を海外の会社が日本にお金を落としてくれるような、仕組みづくりが重要であるとも述べています。

本書の最後の"リアリストであれ"というのは、非常に良いメッセージだと思いました。フランスのミッテラン大統領を例にあげ、資産家から貧困層への再分配重視の政策ばかりを考えていましたが、現実を直視し、結果として成長を阻害し、再分配するものもなくなるとし、経済を立て直した経緯を紹介しています。

また、冨山和彦氏の"暴力的に年寄りを殺していく"というのも、時代の変わり目の今、若者は考える必要があるのかもしれません。個人的には、何が既得権益ばかりを保護し、何が結果的に成長を阻害しているか、真摯な目で見ていく必要があると思います。また、自分が本当に良いと思うことを行うことができず、それが阻害する環境ばかりが存在するなら、それは周りに対して冨山氏の表現を借りれば戦っていくしかないのかもしれません。

2011年7月11日月曜日

Why do you want you to do?


サイモン シネック: 優れたリーダーはどうやって行動を促すか


学生時代に、チームで行動している時に、あなたのビジョンは何かと問われた。

また、自分のラボでは、何故(どういった信念で)その研究を行っているのかを、ボスに問われた。

社会人になって、ただ仕事を求めている人ではなく、どういった信念でこの人は、仕事をしているのかを知りたいと思った

そして今、僕自身はWhyを元に働いているだろうか?自分のWhyを人に伝え、自分も行動できているだろうか?



一枚のゴールデンサークルの絵から、ここまで語ることのできる、プレゼンにも注目です。



2011年6月19日日曜日

イノベショーンへの解 クレイトン・クリステンセン / マイケル・レイナー The Innovator's Solution




本書は、クリステンセンのイノベーションのジレンマの続編ともいうべき書である。"イノベーションのジレンマが理論の構築を目指したのに対し、本書の目的は読者に、理論を用いる方法を教えることであった。"とあるように、イノベーションのジレンマで示された破壊的イノベーションについて、担当者が実践していくには、どういう指針が必要かというのを論じている。つまりは、前作イノベーションのジレンマの理論の上に立つ本である。そのため、前作を読んでからこの本を読むことをおすすめする。また、イノベーションのジレンマほどの衝撃さはないものの、自分が新興企業や大企業での新たな成長事業を任されているのであれば、一読の価値はあるとおもう。そうでない人も、働く上で、継続的イノベーションと破壊的イノベーションに求められるものの違いを知るのは悪いことではない。僕自身は、前作に大きな衝撃を覚えたタイプであるため、自然とこの本に手が向いた。

各章ごとに気になった部分と、論点をまとめていきたいと思う。

第1章 成長という市場命令

なぜ、成長が必要かというのを説明する。特に、市場が期待する以上に大きな成長をしないと、企業は評価をうけないし、失敗するとそこから挽回するのが難しい。市場の期待以上に成長を行うには、イノベーションが不可欠である。しかし、イノベーションを成功させる明確な法則はあるのだろうか?本書では、単純な区分や相関性ではなく、状況に応じた因果関係を考える事で、事業成長の信頼性を上げることができると、述べている。

第2章 最強の競合企業を打ち負かす方法

イノベーションのジレンマの簡単なおさらいから。持続的イノベーションと破壊的イノベーションの違いについて述べている。特に、破壊的イノベーションが、より良い製品を与えるのではなく、一般的には、むしろ足りないと思わせる製品を与えている、という部分がおもしろい。もちろん、それには勝る別のメリットが顧客にはある。また、破壊的イノベーションも大きく二つに大別される。ローエンド型破壊と、新市場型の破壊である。

ローエンド型は以前から市場に存在した顧客に対して、攻略するものである。鉄鋼ミニミル、ディスカウント小売業者などが例としてある。"実績ある企業がローエンド型破壊者から逃げ出さずにいることは非常に難しい。"

新市場型破壊とは、"「無消費」、つまり消費のない状況に対抗するものとして捉えている。"つまり、新しいバリューネットワークに似ている。どこか、ブルーオーシャン戦略と似ている気がする。また、この破壊では、"既存のリーダー企業は、破壊が最終段階に至るまでまったく痛みを覚えず、脅威もほとんど感じない。"(ただ、最終的に新しいバリューネットワークに既存のリーダー企業のネットワークが取られることになる。)

これらの話から、これから考える新事業が、破壊的イノベーションとなりうるかという、リトマス試験(質問)が与えられる。

一組目の質問(少なくともひとつはイエス)新市場型
・これまで金や道具、スキルがないという理由で、これをまったく行わずにいたか、料金を支払って高い技能を持つ専門家にやってもらわなければならなかった人が大勢いるか?
・顧客はこの製品やサービスを利用するために、不便な場所にあるセンターに行かなければならないか?

二組目の質問(両方ともイエス)ローエンド型
・市場のローエンドには、価格が低ければ、性能面で劣る(が充分良い)製品でも喜んで購入する顧客がいるか?
・こうしたローエンドの「過保護にされた」顧客を勝ち取るために必要な最低価格でも、魅力的な利益を得られるようなビジネスモデルを構築することができるか?

三組目の質問
・このイノベーションは業界の大手企業すべてにとって破壊的だろうか?もし、一社もしくは複数の大手プレーヤーにとって持続的イノベーションである可能性があれば、その企業の勝算が高く、新規参入者の勝つ見込みはほとんどない。

第三章 顧客が求める製品とは

二章のような、破壊的イノベーションを実現するには、どのような製品を考えなければいけないか。
"マーケティングで狙い通りの成果をあげるには、・・・顧客が片付ようとする「用事」や、その用事を通じて達成しようとする成果が、状況ベースの市場区分を構成するのである。・・顧客が置かれている状況に絞る企業が、狙い通り成功する"。状況すなわち片付けたい用事に的を絞ることが重要だと述べてる。

ソニーの例がここでは述べられている。ソニーは、12回も破壊的イノベーションを達成した唯一の企業である。これは、創業者の一人である盛田昭夫の貢献であると述べえられている。盛田昭夫は、顧客が何の用事を片付けようとしているのかが、よく分かる人間であった。しかし、盛田昭夫が、日本の政治に関与し、経営から身をひいた時期から、持続的イノベーションはあるが、破壊的イノベーションを出す企業ではなくなってしまった。

また、この章では、破壊的製品をその用事を済ませたい顧客に結びつける、チャネルの獲得も重要だと述べている。

第四章 自社製品にとって最高の顧客とは

ローエンド型破壊では比較的、理想的な顧客を見つけるのは簡単である。しかし、新市場の顧客を見つけ出すことは困難である。この章では、新市場型の顧客、用途、チャネルの特徴などを述べている。

本書では、ソニーや血管形成術の事例などから、共通の4つのパターンについて述べている。
1、標的顧客はある用事を片付けようとしているが、金やスキルを持たないため、解決策を手に入られずにいる。
2、このような顧客は、破壊的製品をまったく何も持たない状態と比較する。そのため、本来のバリューネットワークのなかで、高いスキルを持つ人々に高い価格で販売されている製品ほど性能がよくなくても、喜んで購入する。こうした新市場顧客を喜ばせるための性能ハードルは、かなり低い。
3、破壊を実現する技術のなかには、非常に高度なものがある。だが、破壊者はその技術を利用して、誰でも購入し利用できる、シンプルで便利な製品をつくる。製品が新たな成長を生み出すのは「誰でも使える」からこそだ。金やスキルをもたない人々でも消費を始められるのだ。
4,破壊的イノベーションは、まったく新しいバリュー・ネットワークを生み出す。新しい顧客は新しいチャネル経由で製品を購入し、それまでと違った場で利用することが多い。

このような、無消費と呼んでいる新たな新市場に進出するのは、言われてみれば、歴史的によくあったことだし、よく言われることだと思う。しかし、本書では、実績ある企業が全く別のことを行っているという。これは、イノベーションのジレンマで述べられていたことだが、大企業は今の資本レベルに見合った、将来のリターンを自然と期待する。しかし、このようなリターンの存在する市場は、もうすでにできあがっている市場である。そして、このような市場は持続的イノベーションが鍵となるが、この市場での勝者は常に、その市場のトップにいる企業である。では、どのようにして違う資源配分プロセスを持って、破壊的イノベーションを可能にするかとつながる。

また、この章では、破壊的イノベーションには、破壊的チャネルも必要不可欠であると述べている。ここでも、チャネルの重要性があげられている。

第五章 事業範囲を適切に定める
第六章 コモディティ化をいかにして回避するか


五章と六章は内容が非常に近い。新市場型イノベーションが発生した時に、どのように市場の覇者が変わっていくかについて述べている。"新規製品の機能性と信頼性が顧客のニーズを満たすほど充分でない状況で圧倒的に有利な企業は、独自の製品アーキテクチャをもち、バリューチェーンのなかで性能を正やうしているインターフェースをまたいで統合されている企業である。だが、機能性と信頼性が十分以上になり、変わってスピードとレスポンスが「十分でない」次元になったときには、その逆、つまり特化型の専門企業で、相互作用の方式がモジュール型のアーキテクチャと業界標準によって定義されている企業が優位に立つ。(主としてローエンド型のイノベーション企業となる)"

この一例として、IBMをあげている。IBMはパソコンが「充分でない」時代に、パソコンの構成要素を、インテルとマイクロソフトに、外部委託をした会社で、当時は利益のあげにくい分野であったから、この判断は外部からは賞賛された。しかし、後に外部委託した、そのふたつは業界の利益のほとんどを牛耳るようになった。

このような、その時のコア・コンピタンス(IBMの場合はコア)の観点から、外部委託を判断すると、将来の大きな代償になりうることを示唆している。コア・コンピタンスの基準だけで考えるのではなく、顧客が高く何を評価するかを考える必要がある。また、従来の統合型アーキテクチャで、強みのあった会社は、モジュールを販売することを戦略としてかがげて、切り替える必要がある。しかし、多くの会社は、合理的な決定を下すかのように、外部委託を行い、ゲームが終了するころまで、気づかないということもある。

このような話は、よくAppleとマイクロソフトの事例として、とりあげられ、今ではAppleとGoogleの事例として議論されるのではないだろうか?クリステンセンの考えが、正しいなら、Googleが最終的にスマートフォンの勝者になるだろうが、果たして未来はどうなるのだろうか?(2010年のAppleから学ぶべき3つ不等式

また、自動車産業では、完成車メーカーが、利益を最も得ている産業形態が代わり、モジュール化が、消費者にとっても強く浸透するような世界になったら、自動車の部品メーカーに、昔のマイクロソフトのような強い会社が、日本でも出現するかもしれない。

第七章 破壊的成長戦略を持つ組織とは

新成長事業の運営を誰に任せるかという議論。特に、資源、プロセス、価値基準について述べている。

・資源
 人材や技術、ブランドなど。特に人材では、「経験の学校」という考えをもとに、そういって事業成長の指揮を経験したことのある人が、的確だと述べている。愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶという言葉もあるが、多くの場合、一度経験している人のがやはり適応性が高いのだろう。また、経験してない人でも、経験の場で、学べる資質を持っていることを判断することが重要。

・プロセス
 文書化されていないものも含んだプロセス。新しいプロセスを組織に作る段階では、重量級チームと呼ばれる、新しい方法を生み出す必要がある。このような場合は、全員が同じ場所で仕事をする必要がある。(そうなのだろうか?)

・価値基準
 従業員が仕事の優先順位を考えるときの価値基準。価値基準は前者2つと違い、何ができないかという制約を表すことのが多い。新しい価値基準を生み出すには、自律的な組織として、新しい事業部門を設置する必要がある。でないと、既存のコスト構造にみあうイノベーションしか優先できなくなる。

これらのプロセスや価値基準が、最終的に会社の文化を作るまでに至る。組織の能力が人材にあれば、変革は容易だが、文化にあれば、変革は難しくなる。

第八章 残略策定プロセスのマネジメント


意図的な戦略から始まった事業も、偶発的に発見した創発的な戦略をうまく受け入れることで、事業を本当に成長させていくことができる。つまりは、試行錯誤をすることが大事ってことだろうか?そう言われれば、至極当たり前だが、事業というものが、そうやって変わっていくものだということを頭に入れておく必要がある。これを、助けるのが発見志向計画法であるようだ。私たちは、思いがけない成功を探し求める必要がある。

第九章 良い金もあれば、悪い金もある

金の負のスパイラル(成長投資のジレンマ)について説明している。特に、利益を早く実現させ、成長を待てるようにする。という考えは、参考になった。(業界によって、その基準は異なる。)
M&Aも、成長勾配をそのままにして、量的に増えるM&Aではなく、成長勾配をより急にする破壊的戦略をもつ買収が重要であると述べている。

第十章 新成長の創出における上級役員の役割


必要になる前に始めるというのは、よく分かる。主力事業が倒れてからでは、本当に遅い。
ここは結構割愛。

終章 バトンタッチ


以下、本文からの引用。


"
1、実績ある競合企業に魅力的に映るような顧客や市場をターゲットとする戦略は、絶対に通してはならない。実績ある競合企業が喜んで無視するか背を向けるような破壊の足がかりを発見するまで、部下に一からやり直しを命じること。非対称的なモチベーションを生み出せれば、競合企業があならの勝利に手を貸してくれる。・・・


2、部下がすでに優れた製品を使っている顧客を標的にしようとしたら、無消費に対抗する方法を探し出すまで、やり直すよう命じること。顧客が何も持たない状態と比べるからこそ、シンプルで安価な製品を喜んで受け入れるとき、マーケティング基礎講座で学んだ、顧客を喜ばせる方法が、費用をかけずにしかも簡単に実行できてしまう。・・・


3、無消費がいない場合は、ローエンド型破壊戦略の可能性を、部下に検討させる。いま対価を支払わされている機能を使いこなしていない、ローエンドの顧客を捉えるために必要な割引価格でも、魅力的な利益を実現できるビジネスモデルを考案させる。・・・


4、・・・顧客がすでに片付けようとしていることを、一層手軽に安価にこなすのに役立つ方法を見つけるよう命じる。・・・


5、部下の製品計画やマーケティング計画が、社内の組織区分に沿って切り取られた市場分野を標的としていれば、あるいは標的市場が容易に入手可能なデータに沿って分類されていたら、やり直しを命じ、顧客が片付けようとしている用事に即した方法で、市場を分類させること・・・


7、破壊的製品やサービスがまだ十分でない状態で、部下が業界標準やそれに付随する外部委託や提携の話に心を奪われているなら、危険信号を出そう。モジュール方式・・・を時期尚早に追求したり、競争基盤が変化しても、独自アーキテクチャを非公開にしたりしてしまうと、成功はおぼつかない。・・・これから金が向う場所で必要となる能力を開発した方がいい。


・・・・"(疲れた。)

最後に。

"われわれの知る限り、破壊的成長エンジンを生み出し、それを持続的に作動させることに成功している企業は、ない。"

参考(Blog内)

努力が我が身を滅ぼす時

2011年6月6日月曜日

人生論 レフ・ニコラエヴィチ・トルストイ




友人の薦めで、トルストイの人生論を読んだ。

僕が思想書を読むのは、実はニーチェのツァラトゥストラはこう言った 上 (岩波文庫 青 639-2)以来だ。


なので、どうしてもニーチェと比較してしまう。個人的には、ニーチェは個人主義的な人生観を語っている印象をもっていたので、トルストイの"自分以外のすべての幸福を願う"と語る人生論は、それと対極に位置するように読み始めは考えていた。しかし、途中からは両者は両立できる考えなのでは、と感じた。

僕が、哲学や思想を語るレベルでないのは明らかなので、深くは語らないが、トルストイの人生論という本が、想像以上に心に染み、そして心を温めてくれる本であることは確かであった。

本自体は、結論が分かりやすいので、読みやすい。また、以下のブログが個人的にはおもしろく、よくまとまってます。



気になった文章のピックアップ

こうして人は、魂を引き裂くような恐ろしい疑問をかかえたまま、世界じゅうで一人ぼっちなのを意識する。それでも生きてゆかねばならない。
一方の自分、すなわち彼の個我は、生きてゆくことを命ずる。
が、もう一人の自分、すなわち彼の理性は言う。「生きてゆかれない」

人が何故自ら死の道を選ぶのか。個人的に感慨深い。

自分一人が幸せになるために生き、行動している。自分一人が幸せで、楽しくあり、自分には苦しみや死がないようにするために、すべての人やあらゆる存在が生きて活動してくれるように、望んでいるのである。

トルストイのいう動物的個我の欲求に、満足する人間になるのではなく、人間のもつ理性が何を求めるかを考えればいい。

では、どうすればいいか。動物的個我を否定し、真の愛をもって、他人を愛することだ。と語る。

最後に。

現代社会で、具体的にどう生きればいいか、残念ながらピンとこない。ガンディーのように生きることなのだろか?ベジタリアンはより、トルストイの語る人生観に近いだろうか?

何はともあれ、心の片隅には常に置いておきたい。そう思う一冊だった。