2016年7月18日月曜日

エンジニアのジレンマ 

10年後、生き残る理系の条件
竹内 健
朝日新聞出版 (2016-01-20)
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10年後、生き残る理系の条件
朝日新聞出版 (2016-02-29)
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イノベーションのジレンマで、クリステンセンは成功した企業ほど新たなイノベーションを成功させることが困難であることを述べました。
企業は新たな市場を創出することに失敗し、別の企業が作った市場に飲み込まれていってしまいます。


そういったビジネスの新陳代謝は、最近の日本メーカーに大打撃を与え、誰もがヒトゴトとしては考えられない時代になってきました。


そういったメーカーで働くエンジニア達は、ここまで不透明になった時代をどのように生きていけば良いのでしょうか?


エンジニアのキャリアを一緒に考え、確認していくのが本書です。
著者は、自身も東芝のエンジニアとして活躍しながら、アメリカでMBAを取得し、現在は大学教授として活躍する竹内氏です。


エンジニアのジレンマ


エンジニアは、一つの技術領域の専門性を高くすることが求められます。
しかし、産業の新陳代謝が早くなった今の時代では、それだけでは、新たな市場の登場に対応できない可能性があります。

会社のビジネスが突然成り立たなくなると同時に、エンジニアの仕事も存在しなくなる可能性があるということです。

ひとつの技術で成功している期間が長いほど、新たな技術領域の分野に転身することも非常に難しくなってしまいます。

これは、イノベーションのジレンマに習って、エンジニアのジレンマと言っても良いのではないでしょうか?


エンジニアのジレンマにどう対応するか?


このエンジニアのジレンマにどう対応するべきでしょうか?

恐らく一つの解はないと思いますが、いくつかヒントになることはあると思います。
個人的に、意識したいことをいくつか抜粋しました。

☆個人のスキルの伸ばし方
 ・T型人材
 ・階層的なスキル向上
 ・一つの分野を深く掘った後は、横にその穴をつなげていくことが重要
 ・自分の強みを抽象化する(隣の分野が分からないのはみんな同じ)
 (半導体の回路設計 → 
  電子回路、ストレージ → 
  自動車、医療機器への応用 データベースやデータセンタなどのサービス)
 ・技術を追っているだけでは勝つことができない
 ・マネタイズの視点をもち、ソフトとハードの両輪でソリューションを提案する
 ・課題解決の前に良質な情報のインプットを行うこと
 ・ロールモデルを探す
 ・シンプルなルール
  1.新たに挑戦したい分野の先駆者に聞く
  2.やると決めたら自分が挑戦することを周りの人に宣言する
  3.チャンスが来たら全力でやり遂げる
 ・人生は逆張り

☆組織と個人のあり方
 ・よい時代は長くは続かず、次の苦境に備える必要がある
 ・組織を飛び出す勇気も時には必要
 ・組織が不安定だからこそ活躍するチャンスが与えられることも
  (半導体のエンジニアはサービス企業に転身すればよい)
 ・異分野連携のキーパーソンはエンジニアだ
 ・ソフトとハードの最適化に成功するには、社内でバラバラのデータを統合・活用する必要がある 

☆その他
 ・転職の活動をするには、推薦者などが2〜3名必要となる
 ・大手企業の人事制度は国の制度とも連結し、実質空洞化している
  

エンジニアも変わりましょう♪

2016年5月4日水曜日

保険を選ぶ際に学んだメモ

最近、保険を見直し始めています。
その際に学んだことをメモします。

・ファイナンシャルプランナーに必ず相談する

保険の内容をいきなり理解することは難しいです。
とはいえ、人生で2番目に大きな買い物といわれているので、慎重に選びたいところです。

そこで助けになるのが、複数の保険会社の代理店となっている乗合代理店のFPです。

代理店が扱っている保険会社の種類や、担当となったFPの方の、FP技能士(国家資格)、AFPやTLCなどといった資格の有無を確認しましょう。

・学資保険は、返戻金のある死亡保障保険を利用する人も

子供が生まれると学資保険を検討する人がいると思います。

しかし最近では、学資保険の代わりに、低解約返戻金型保険を利用する人が増えているようです。
途中解約した時は返戻金が元本割れしますが、もらい方を自由にできたり返戻率が学資保険より高いものが多いなどメリットもいくつかあります。

以下を参考にしてください。
http://hokensc.jp/gakushi/teikaiyaku.html

・更新型の定期保険。若い時は安く見えるが、要注意。

自分はFPと、生命保険会社の営業マンの両者に生命保険を相談しました。
生命保険会社の営業マンから強く勧められたのが、更新型の定期付終身保険でした。

更新型の定期保険は、若いうちに入る時は保険額が安く見えますが、更新時に保険料が多く増え、払えなくなることや見直しをするのが一般的です。

実はこの保険、FPには強く否定され、生命保険会社の営業マンには強く勧められたため、印象深かったのを覚えています。

FPの方が仰る、必要な量に必要な額だけを最低限で保険をかけるべき。という考え方とはあっていなかったようです。

・家を買う前の方が死亡保障に必要な金額は増える

家を買う時は、ローンを組む際に、団信などの生命保険に加入するのが一般的です。

自分は家を買う時に生命保険に加入するのだから、賃貸の間は保障の少ない生命保険で良いだろう。と考えていました。

でも、それは必要な補償額を考えると誤りです。

家を買う前に生計主が亡くなった場合は、家族のその後の住居代が必要になるため、保障額が多くなってしまうからです。

なので、賃貸の場合は、そういった注意も必要です。

しかし、家を買うと死亡保障は減るものの、地震や火災などのリスクから家財や建物を守る保険が必要になってきますので、別途考えないといけないものも増えてきます。

・控除もあることを忘れずに

一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除があり、それぞれ最大4万円の所得税控除と2万8千円の住民税控除が期待できます。

・先進医療特約。使う可能性も少ないし、高額なものも限られるが。
先進医療特約は、使う可能性も少ないですし、意外に高額な治療となる先進医療も少ないです。しかし、月額負担も少ないため入る人が多いとのことです。
http://hokensc.jp/iryou/senshin.html

・保険会社の破綻リスク
頭の片隅に保険会社の破綻リスクがあることを覚えておきましょう。

・結婚も出産も晩年化している現代。早めにあえて保険に入るという選択肢も

子供が生まれてから保険に入るより、健康状態もよく出産時の保障も入りやすい若い時に保険に入ることを考えるのは悪くないと思います。

得に、今は晩婚化しているので、健康状態が悪くなり、必要となった時に保険の選択肢が限られてしまう可能性もないわけではありません。

自分は、一切保険に入らずに20代を終えようとしていましたが、何か病気になっていたらと思うと少し怖い部分がありました。


以下は、自分が読んだ本の中でオススメを残しておきます。


内容も読みやすく、主張もシンプルです。
一冊目の導入としては、これが良いと思います。
自分に必要な保障額の考え方と、最低限の保険の組み方の基本が理解できます。


生命保険「入って得する人、損する人」 (講談社+α新書)
講談社 (2013-01-15)
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民間保険だけでなく、公的保障などについても書かれています。
一般的な知識を把握するのに良い本です。


「保険に入ろうかな」と思ったときにまず読む本
日本経済新聞出版社 (2013-01-28)
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保険の種類や仕組もなどが幅広く書かれている本です。
手元に一冊あると辞書的に使えて便利です。


生命保険のカラクリ (文春新書)
岩瀬 大輔
文藝春秋
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保険業界全体の問題点や日本独自の歴史を把握するのに良いです。
一時期世間を騒がした、不払い問題についても書かれています。
保険会社に対する目が変わってきますよ。
ネット生命の副社長の岩瀬さんが書いている本なので、個人的な保険の組み方を考えるというより、保険業界を知るという意味で面白いです。

2016年3月5日土曜日

製造業に勤めるエンジニアが知っておくと便利な統計の基礎 その②  -平均推定-

前回は、

・標本分散と不偏分散の違い
・分散の点推定と区間推定
・何故不偏分散はn-1で割るのか?

を学びました。

今回は、
・平均の点推定と区間推定
を学びましょう

その② 母集団の平均を推定する

☆平均の点推定について

点推定は、一般的に言われる平均なので簡単です。
$$\frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n}x_i$$

☆平均の区間推定について

分散の時と同様に、区間推定を学びましょう。

前回の考え方と同じように、ある限られたデータから母集団の平均を推定したい時、平均もある確率で分布します。

平均の区間推定の場合は以下の法則を利用しましょう。

データが正規分布に従う時、$ t = \frac{\overline{x}-\mu}{\sqrt{V/n}}$は自由度n-1のt分布に従う

上記の法則から、確率95%の分散の区間推定は、自由度φの場合、以下のようにかけます。

$$ \overline{x} - t( \phi , 0.05) \sqrt{V/n} \leq \mu \leq \overline{x} + t( \phi . 0.05 ) \sqrt{V/n}$$

(注意 0.025じゃないの?と思うかもしれませんが、t分布の場合は、左右対称分布なので$\chi^2$分布の時とは、記号の表し方が異なることが一般的です。)

次回は、これを例題を使って解いてみましょう。

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2016年2月29日月曜日

Kindle 3 を分解しました。 〜Kindle 3 Teardown〜

いらなくなったKindle 3を分解しました。

コントラストを向上したE Ink Pearlを採用。
2010年発売のものです。
日本では直接販売はありませんでした。

主な仕様は、ウィキペディアを参照ください。





3年間ほど使っていませんが、E Inkなのでバッテリ切れの状態が表示されたままです。



以下分解の手順です。ゆるーく記録として残しておきます。

①バックカバーを外す。

 爪で引っかかっているので、それを剥がします。
 周囲と内部に爪があります。それらを取ると中味が見えます。




iPadと比べると、バッテリの大きさが小さく、電気基板の割合が全体の半分程度を占めています。

E-Inkのディスプレイなので消費電力も少なく、液晶タブレットと比較してもバッテリ容量の制限が少ないのかもしれませんね。



また、バックカバーには、UPMと書かれた近距離無線用のタグがついています。ググると色々情報が出てきますね。それぞれのKindleを識別するのに使われているのかな?




スピーカー用のメッシュも、バックカバーに両面テープで貼られています。忘れがちですが、MP3の再生機能があります。



②内部のネジをとり、各種コネクタを外すと、基板、バッテリなどが外れます。
 そのままマグネシウム合金っぽい板も外れます。
 
電気基板を外しました。

裏側です。色々と気になる点ありますね。



バッテリです。



電気基板とバッテリを外した状態です。このマグネシウム合金っぽい板の反対側にE-Inkディスプレイが配置されています。



ネジは、緩みどめ機能のある特殊ねじのように見えます。一部に使われています。



マグネシウム合金っぽい板を外したところです。ここに、キーボドと左右に配置されるページ送り用のフレキが配置されています。また、写真上部についている樹脂は、両面テープで貼られています。



ちなみに外観に出るキーボードは、こんなフィルム状のもので実装されています。



マグネシウム合金っぽい板を外すとフロント側だけになります。
E-Inkディスプレイの裏側が見えますね。ガラス基板のE-Inkディスプレイのようで、プラスチック基板ではないんですね。あまり重さを気にしたことはありませんが、プラスチックベースのE-Inkになると、もっと軽くなりそうですね。



フロントカバーのページ送り用の左右のスイッチは、板金類が配置され、少し変わった構造になっています。



③最後に、E Inkのディスプレイを両面テープから外すとそれぞれ分解されます。
 全体としてはかなり楽でした。

ディスプレイを剥がした状態です。



E-Inkディスプレイだけの状態です。きちんとこれでも表示はされています。



全体的な構造としては、かなりシンプルな構成でした。



KindleTips

2016年2月14日日曜日

製造業に勤めるエンジニアが知っておくと便利な統計の基礎

製造業に勤めるエンジニアが、業務を行う際に知っていると便利な統計の基礎を復習します。

特に、サンプルデータから母集団を推定する方法を考えていきます。

その① 母集団の分散を推定する

☆標本分散と不偏分散(点推定)

まずは、分散といえど2種類あることに注意しましょう。
標本分散と不偏分散です。


標本分散は以下で計算できます。
$$\frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n}(x_i - \overline{x})^2$$

不偏分散は以下で計算できます。
$$\frac{1}{n-1}\sum_{i=1}^{n}(x_i - \overline{x})^2$$

nで割るか。n-1で割るかの違いです。



この違い正しくわかっていますか?



業務に応じて、目的にそった方法で計算する必要があります。



例えば、



全数検査を行う場合は、

全数検査集団 = 母集団

なので、標本分散でOK!



しかし、抜き取り検査である場合は、

抜き取り検査集団 ≠ 母集団

のため、不偏分散で計算しましょう!
標本分散で計算すると、実際の母集団の分散より小さい値になってしまうことが知られています。



そのため、母集団の分散を推定するために、抜き取り検査を行っている場合(たいていそうだと思いますが)は、不偏分散で計算しましょう!



ただ、安心してください!
たいていの場合、一般的な計算では、n-1で計算されています。



本題は次です。



☆不偏分散が求まればOKなの?

不偏分散が求まればOKなのか?



そうとは限らない場合があります。



限られたデータから考えた場合、求めた分散もある分布をもってバラつくからです。



分散がバラつくので、母集団を厳密に評価できたとは限りません。
そのため、確率的に、分散がどのくらい異なってくるかを判断する必要があります。



その分散のバラつき具合を推定することを区間推定といいます。

一方で、先ほどの不偏分散だけで計算するのは、点推定といいます。


では、区間推定の方法について、次は学んでいきましょう。



☆区間推定(分散編)

得られたデータから分散の区間推定をする方法を覚えておきましょう。



データが正規分布に従う時、区間推定を行うために、以下の法則を利用します。



平方和を $ S= \sum_{i=1}^{n}(x_i - \overline{x})^2$と定義したとき$\frac{S}{\sigma^2}$は自由度n-1の$\chi^2$分布に従う。



上記の法則から、確率95%の分散の区間推定は、以下のようにかけます。
$$ \frac{S}{\chi^2(n-1,0.025)} \leq \sigma^2 \leq \frac{S}{\chi^2(n-1,0.975)}$$



以下の例題を使って覚えてみましょう。



例題
あるエンジニアがりんごを作りました。
そのりんごの重さを10個測定したところ、以下の重さでした。
296,299,302,298,301,297,304,303,305,294[g]
このりんごの母集団の分散の95%信頼区間を推定します。
ただし、りんごの重さの母集団は、正規分布とみなしてよいとしましょう。



◯Excelで計算する

点推定:$\sigma^2$ VAR(データ)=13.4
残差平方和:S DEVSQ(データ)=120.9

下側カイ二乗分布:CHIINV(0.025,9)=19.0
上側カイ二乗分布:CHIINV(0.975,9)=2.70

区間推定結果:S/CHIINV(0.025,9) = 6.4 ≦ $\sigma^2$ ≦ 44.8 = S/CHIINV(0.975,9) 



◯Scilabで計算する

A = [296,299,302,298,301,297,304,303,305,294]
点推定:$\sigma^2$ variance(A)=13.4

残差平方和:S = variance(A)*9 
区間推定結果:S/cdfchi("X",9,0.975,0.025) = 6.4 ≦ $\sigma^2$ ≦ 44.8 = S/cdfchi("X",9,0.025,0.975)



標準偏差は、2.5 ≦ $\sigma$ ≦ 6,7 [g]になります。
3$\sigma$は、最大で20[g]です。



こんな感じです。



正しく使えるかが重要かもしれませんね。



☆何故、不偏分散は、n-1で割るのか

これについては、実務レベルで毎回考える必要ないと思いますが・・・
ただ、この状態は気持ち悪いと思うので以下に分かりやすいリンクを残しておきます。


分散の期待値を計算していくと、n-1で割っているのが分かりますよね。

標本分散は、求めた平均(標本平均)が母平均と異なるため、分散が小さくでてしまいます。

標本分散に対して、n/(n-1)倍したものが、母分散の推定量と一致すると覚えておきましょう!


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2015年11月8日日曜日

小説家 村上春樹に学ぶプロフェッショナルになるための6つの条件

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村上春樹
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小説にかぎらず創作活動をする人は、自分の中に深く潜りながら、作品を長期間作り続けていく必要があります。体力も気力もいる大変な仕事です。

本書は、小説家として創作活動を長く続けてきた、村上春樹さんの仕事への取り組み方が垣間見える一冊です。

そんな本書から、プロフェッショナルとして創作活動を続けるために学びたいと思ったことピックアップしました。

その1 現状を変化させるために、新たなことに挑戦する

・海外への進出

初めて書いた小説が新人賞を受賞し、1987年に出版した「ノルウェイの森」が国内で異例の大ヒットを記録するなど、小説家としての成功を早い段階から納めていた村上さん。

しかし、小説家としての安定が見えてきた前後に、海外へと活動拠点を移し、更には海外での出版を積極的に進めるなどの活動を始めています。

その理由の一つに、自分の環境を変える必要性を感じていた”から。と述べています。

また、環境をただ変えるだけではなく、米国では、自らエージェントや出版社を探すなど、四十代にして、自分を”新人状態”へと戻した。と語るほど、新たな挑戦も行っています。

それらの新たな挑戦の成果は、欧州や米国、アジアなど広くに読者を獲得し、今では全米の新刊売上部数ランキングで1位を獲得するまでとなっています。 

・小説的テクニックの向上

小説的テクニックでも、自らの表現の幅を増やすために、新たな挑戦を行っています。

・言葉のもつ使い方を思いつく限り試してみる。
・1人称から3人称へ小説の書き方を発展させてみる。

など、技術的な表現方法についても、かなり意識して挑戦されていたことが本書を読むと分かります。

・挑戦はランニングにも
 
そういった日頃から挑戦する姿勢は、村上さんのライフワークであるランニングにも見られると思っています。100kmマラソンに挑戦した後、今度は、新たな舞台としてトライアスロンに挑んでいます。

しかも闇雲に練習するのではなく、きちんと自分なりに課題を見つけ、一つ一つ丁寧に改善しながら、ランニングを行っています。そういった姿勢も見習いたいものです。

その2 自分の内面に日頃からマテリアルをため、ある時に引き出す

・たくさんのガラクタは、ある日魔法で書くべきマテリアルに生まれ変わる

創作者は、自分の作品を作るために、内面から出てくる引き出しを持っている必要があると思います。

そういった引き出しを用意続けるにはどうするか。意外にその答えはシンプルで、”日頃からマテリアルを集めること”だったのです。

村上さんほどの人でも、そうなんだ。と僕は安心しました。

常日頃から、ある意味”ガラクタ”とも呼べる、”ある事実の興味深い細部”を記憶するようにしているそうです。それを自分の中でも無意識でも意識的にでも、反芻するのでしょう。

一つ一つのマテリアルや素材はガラクタでも、ある日それが魔法のようにつながり、書くべきこと、書くべきマテリアルへと変化する。

小説に限らず、いろんな分野に通じるのではないでしょうか?

・小説家としての成功の確信

ちょっと自分には信じられない、驚くべきことが本書には書いてあります。
ある意味、村上さんに関する”ある事実の興味深い細部”です。

村上さんが、小説を書き始めたきっかけについてです。
野球観戦をしていたある瞬間に、自分も小説が書けるかもしれない。と思い立ち小説を書き始めます。

これもなかなか興味深いエピソードですが、それだけではありません。

初めて書いた小説”風の歌を聴け”の選考結果が出る前に、ふと散歩にでかけた村上さん。

傷ついた伝書鳩を見つけ、交番に届ける途中で、ふとまた思い立ちます。

自分は、群像新人文学賞を受賞し、今後小説家として成功することに間違いない。と確信した。と述べています。

ちょっと信じられないですね。

ここからは、自分の勝手な憶測ですが、昔から小説を読み漁っていた村上さんは、自分が書いた小説の価値を無意識的に評価できたのじゃないでしょうか?

それが、何かのタイミングで、確信に変わった。
その瞬間を与えてくれたのが、伝書鳩だったのでしょう。

日々自分の内面に貯めていた色々なマテリアルが、違う意味をもって、意識的な所に上がってきた瞬間だったのかもしれません。

得に、村上さんは、最初の段階から書きたい小説の理想があった。とも述べています。
これも、昔から小説を読んでいる人じゃないと難しいだろうな。とも思います。

もちろん、こういった無意識的な話だけではなく、小説を書く時は、意識的にマテリアルを引き出し、書いている。とも述べています。

自分の中に、必要なマテリアルをため、それを引き出していく。非常に重要なことだと思います。


その3 公私共に信頼できる仕事仲間がいて、尊重した関係を築いている

・第三者のフィードバックをもらう

小説を一度書くと、何度か綿密に書き直しを実施するそうです。
その際に、必ず第三者からフィードバックをもらっている。とのこと。

しかも、指摘された所は、自分が納得しなくても、必ず書き直す。とのことです。

人に何か言われる。というのは、その指摘が正しいか正しくないかは別として、何か問題があるのは間違いないと考える。とのことでした。
(自分だったらそのままにしてしまうでしょう。。。見習うべきですね。)

指摘内容よりも書き直すということが大事。

また、フィードバックをもらう相手は、最初は奥さんと決めている。とのことでした。
長年の夫婦関係が、仕事にも重要な観測定点として機能しているのは、素敵なことです。

・翻訳者との信頼関係

小説において、作家と翻訳家はビジネス的な関係だけだと思っていました。
出版社が、適当な翻訳家を探し翻訳してもらい、海外展開する。
そんなシンプルな流れを想像していましたが違ったようです。

翻訳者は海外に展開する小説家にとって、とても大切なパートナーである。
と村上さんは述べています。

特に、翻訳者が一方的に骨の折れる仕事を実施しているのはフェアではない。
なので、ギブアンドテイクの関係でいないといけない。とも述べています。

そういった仕事の姿勢からか、何人かの翻訳者とはプライベートでも親密な関係を築いているようです。

自分が仕事をするうえでも、仕事の投げっぱなしがないようにしたいものです。それだけでなく、信頼できる仕事仲間を長期的に築いていきたいものです。

その4 長期的に集中できる基礎体力がある

たまたま良い作品を書くことができても、一発屋にならずに継続的に作品を築いていくには基礎体力がやはり必要です。

村上さんの場合は、言わずもがなジョギングがそれを助けているでしょう。

ジョギングについては、下記の本に詳しく書かれています。
読むと、走りたくなる本です。

走ることについて語るときに僕の語ること (文春文庫)
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その5 自分のやり方を見つける

本書には、何人かの小説家の仕事方法について、言及されています。
村上さんとの共通点も見られます。

とはいえ、村上さんの仕事への考え方、日頃の取り組み方(長編小説の時は、必ず原稿用紙1日10枚は書く。ほぼ毎日ランニングする。など)は、村上さんの環境、生い立ち、日々の試行錯誤の結果からできたものでしょう。

その働き方に適しているのは、村上さんだけでしょうし、他の人が真似しても、ベストな結果が得られるとは限りません。

大切にしたいことは、自分の中で試行錯誤して、自分なりな仕事に対するやり方や考え方を築いていくということでしょう。

その6 やりたいことをやる。だけでなく、顧客との関係も築いている

”全ての人を楽しませることはできない。だから、自分が楽しいと思うことをやればいい。”と本書では書かれています。

また、楽しいことや、求めていることを探すには、逆に何かを求めていない自分を探すことをアドバイスしています。

こういった、”自分が求めることをやるべきだ。”というのは、色々な方が述べていることです。自分も素直にそう思います。

でも、ここではもっと大事なことがあると思っています。

顧客である読者は無視しているのか?

というと、決してそんなことはないです。

村上さんはWeb上でホームページを開設し、読者のメールの質問に答えたり、海外では少し趣旨は違いますが講演などを行っています。

村上さんがそういった活動を続けた結果、”この人たちは総体として、とても正しく深く僕を、あるいは僕の小説を理解してくれているんだ”と認識したとのことです。

確かにフィジカルな意味で積極的ではないですが、きとんと読者との関係を大切にしている姿勢を自分は感じます。そもそも、”職業としての小説家”という本書を出す上でも、村上さんは我々読者との間の関係を今後も築いていこう、という意思を感じます。

少なくとも、独りよがりにならず、かといって読者に媚びて自分を崩さずに、村上さんと我々の微妙なバランス関係をうまく築いてきたからこそ、今でも多くの読者に期待される存在でいるのでしょう。



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2015年10月29日木曜日

トヨタ 危機の教訓

トヨタ 危機の教訓
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トヨタってやっぱりすごい会社ですね。

2008年に発生したトヨタのリコール問題。電子制御トラブルも疑われた当時、一体何が起きていたのか、発生した課題にどのように対応したのか、トヨタの社外の人間が活かせることはあるのか?それらを、多くの関係者からのインタビューや調査から説明しているノンフィクションです。
(豊田章男社長も、インタビューに応じてます)

・企業文化がいかに重要か

 改善活動、リーン生産方式、ゲンチゲンブツ、5つの何故、などを産んだトヨタの文化。そういった企業文化をトヨタウェイと呼んでいます。このトヨタウェイが今回の危機でもひとつのキーになっていると思います。

 例えば、今回の危機では、実際の数字的な評価よりも、市場の評価はどんどん悪化していきました。
 これは、米国の市場の空気感と、日本の幹部の空気感との間に差異があったため、適切な対応を早い段階でできていなかったためです。トヨタにとっては、ゲンチゲンブツが疎かになっていたといえます。

 一方で、トヨタはトヨタらしい組織づくりを地道に行っていた部分もあります。リーマン・ショックが発生した時、急激な減産に自動車メーカーは襲われました。その時の対応は、海外メーカーとトヨタでは大きく違いました。海外メーカーは、経営的な指標を維持するため、人材をカットし、なんとか危機を乗り越えようとしていました。
 その中でトヨタは、一人一人の社員をトヨタウェイを知る貴重な人材と考え、減産の中でも基本的には社員を維持しました。苦しい状況でも、社員が率先して改善活動を実施していた例として、本書では取り上げられています。
 こうして、生産の増減に対応できる体制を地道に作り、何よりも一人一人が、トヨタウェイを実践できる組織へと変化させることを優先させていました。これは、組織文化の大きな違いだな。と感じます。

 しかし、世界一の販売数を達成しようと急激な成長をしていたトヨタは、今回の危機に改めて直面し、増えた従業員に対して十分にトヨタウェイを知る人材を教育できていなかった。と考えるようになります。彼らは、今回の危機から、原因を考え、教育を変える必要がある。という新たな改善策を見出しました。これもトヨタウェイに即していますね。
 (リコールの対応を従来より早める。など、実際的な対応もしています。)

 トヨタウェイのような組織の文化を習得するには、長年の実践的な教育が必要になるでしょう。いわゆる人材の流動性を良しとするアメリカ型といわれるような組織づくりとは変わった手法で、トヨタはより、強い会社に毎日なろうとしています。

 話は変わって、VolksWagenの不正排ガス問題。ドイツの自動車メーカーのVolksWagen。彼らは今回のことで何を学び、どういった組織を作っていこうとするのか、将来が気になるところです。

 組織文化について考えさせられた一冊でした。


トヨタ 危機の教訓
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ザ・トヨタウェイ(上)
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