2010年8月7日土曜日
リバタリアニズムの英雄達
不道徳教育
これからの「正義」の話をしようを読んだ影響で,「自由」について考えてみようと思い,まず手にとった本だ.「正義」本がリバタリアンに否定的な主張であるのに対し,こちらはリバタリアンを擁護する内容となっている.しかし,読み物としては,あまり面白くなく,今更大きな新しい発見もなかっので,お勧めはあまりしない.今,世の中でよく聞くリバタリアンの主張が,確認することはできる(ただし,大雑把だが).また,翻訳者である橘 玲氏の意訳以上の翻訳が(訳者あとがきでも触れているが) ,個人的には失敗だったのではと憶測する.内容が非常にチープになってしまった感がいなめなかった.
ただ,この本の価値ある部分は同時に翻訳者の橘玲氏の,まえがきにある.ここで,僕が誰かにはっきり言ってもらいたかった事が書いてあった.
"すべての不幸は国家によって引き起こされている.・・・.国家が国民の福祉を増進するというのは幻想であり,歴史的事実は,強制力をともなう巨大な権力が,一人ひとりの人生にとてつもない厄災をもたらすことを教えている.・・・.人類の理想とは国家の存在しない世界である.・・・.「市場原理主義」こそが,人々に自由と幸福をもたらす唯一の希望でである."
まえがきでは,このようなリバタリアンの主張から始まり,リベラリズム,保守主義へとつながる.特に,乱暴ではあるが以下の文章は,印象的だった.
"リベタリアニズムというのは,ようするに次のような政治思想だ.
人は自由に生きるのがすばらしい.
これに対して,リベラリズムは若干の修正を加える.
人は自由に生きるのがすばらしい.しかし,平等も大事である.
「自由主義」に対抗する思想として保守主義が挙げられるが,それとても「自由」の価値を否定するわけではない.彼らは言う.
人は自由に生きるのがすばらしい.しかし,伝統も大事である."
なんと 分かりやすい.
そして最後に,訳者は以下のように結ぶ.
"リバタリアニズムの本質は「自由な個人」という近代の虚構(というかウソ)を徹底する過激さにある.その無謀な試みの先に,国家なき世界という無政府資本主義(アナルコ・キャピタリズム)のユートピアが蜃気楼のように浮かぶとき,人はそれを「希望」と呼ぶのかもしれない."
実は,このまえがきにこの本の全ては収録されている.あとは,様々なリバタリアニズムの英雄達が,風刺的に描かる.はじめにリバタリアンを勉強するために,手にする本としては,間違っていたかもしれないが,これほどリバタリアニズムを直感的に分かりやすく解きほぐしてくれたことには感謝したい.
それと,個人的に心に留めておきたい文章も残しておく.
"特殊な技能をもつ労働者は「投資家」であると同時に「資本家」でもある."
今後エンジニアとして食っていくには,この文章を忘れてはいけないと思った.
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