勘違いしないで欲しくないのは、ストリートビューに使われている車ではない。(関係なくはないが。)
Googleが自律移動の車を開発したというニュースである。
詳しくは、影木准子氏の記事を参照して頂くのがよい。
米グーグルが自律ロボット車を開発した理由(ウォール・ストリート・ジャーナル)
Autonomous Car Masterminds Converge at Google(Getrobo Blog)
記事にも出てくる、セバスチャンスランは、ロボットの研究者として現在第一人者であり、確率ロボティクスの著者、Grand ChallengeでのStanfordの優勝チームのプロジェクトのトップとして有名である。Stanfordでサバティカルでgoogleにいるらしいという噂は耳にしていたが、本格的にそこで自律移動車を開発しているとは考えていなかった。
以前に、このブログでも触れたが、Grand ChallengeはCMUとStanfordの戦略の違いが、ドラマチックな結果をもたらし、研究者でなくても興奮する内容であることは間違いない。
研究者からみれば、より複雑な環境であれば、CMUが勝っていただろうと考えるし、CMUの研究者達もそう答えるだろう。
特に印象的なのが、本番前の両者のチームの行動の違いだ。CMUは、事前に配布されるウェイポイントのデータから、速度やロボットに適した経路を人海戦術で、事前に与えるのに対し、Stanfordは、その状況を走りながら搭載したセンサの情報から速度を決めるので、人海戦術を必要としなかった。実際どの程度の事前情報の与え方に、違いがあったかは分からないが、終始少人数でスマートに研究開発を行ってきたStanfordは、このGrand Challengeの勝者となった。
少し話がそれたが、ロボットはその場で得られる情報と、事前に与えられる情報から最適な行動を選択を行う。しかし、一般的にはロボットはどの程度事前に色々な場所の情報を得ることができるのだろうか?乱暴かもしれないが、そのひとつの答えが、Cloud Roboticsなのかもしれない。クラウドに保持し得られる情報は人間だけでなく、ロボットや車も利用すれば良いのである。そして、クラウド化といったらGoogleである。多くの情報を処理することは、Googleの得意技であり、得られる情報を処理し、その環境に適応して行動するのがロボットのひとつの形である。
ロボットにとって必要な情報は目的によっても様々な議論があろうが、ストリートビューの車にレーザーも搭載して走らせている、Googleはこの分野では、圧倒的に有利な立場にあるだろう。実際に、上記の記事中にも、”いずれの経路も、まずは人間が先に車を運転しながら車線表示や信号機の場所、道路状況といった膨大な情報を取得する。それを持ち帰ってグーグルのデータ・センターで処理し、この中から必要な情報だけを抽出してロボット車のコンピューターに載せ、自律で走らせるという仕組みだ。”とある。Googleのお家芸がまさに、自動車の自律移動に生きているのである。
長年、自動車は日本の主要産業であったが、次の大きなイノベーションはGoogleから現れるかもしれない。もちろん、日本車メーカーもこの機会を見逃してはいない。セバスチャンのいるStanfordでは、自律自動車の研究が日本自動車メーカーを含む多くの会社から出資され、研究が行われている。もちろん、海外メーカーも参入している。最近では、アウディが山岳コースを自律移動したニュースが有名である。また、趣旨が異なるかもしれないが、"Car as a wireless device"と述べた、フォードも印象的である。どちらかというと日本は遅れている印象だ。それは、ただ単にオープンにしていないだけなのか。トヨタの裾野にある東富士研究所では、Google Carの頭上にも搭載されているvelodyneのlidarが装備された自動車が実験を行っているという噂も耳にする。このへんの議論については、小川浩氏の記事が参考になる。
はてさて、ここまでくるとビジネスモデルはどのようにするのだろうか、というのが疑問である。自律移動車は、アメリカらしく、軍事研究から始まり、民生化しようとしている技術のひとつである。インターネットがそうであったように、需要をさがすのではなく、新たな需要を人々に提供する、そんな想像もつかない世界が待っているかもしれない。もちろん、そういう意味で、Googleとセバスチャンスランには今後も目が離せない。
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