前回の続きを考えていきます。
前回は固有ベクトルについて考えました。
固有ベクトルは行列をかけても、向きを変えることなく、大きさだけ変えるというベクトルでした。そして、そのベクトルはN次元の場合はN個存在し、それぞれのベクトルは直行している。という性質があるものでした。
よく考えてみると、興味深い性質をもっていますが、”で、それで?”となる人もいるかと思います。
固有ベクトルを説明した理由を解説する前に、もう少し数学の下準備をします。
一般固有値問題について考える
前回考えた固有値問題は以下のような数式から始めました。
今回は、一般固有値問題について考えます。
[A]と[K]という正方対称行列を考え、この行列にベクトル{φ}を積した時を考えます。ベクトル{φ}が変換されたとしても、同様に向きをかえずに大きさだけが異なるベクトル{φ}について考えてみます。
もともとの固有値問題の単位行列[I]を、正方対称行列[K]にしたので、一般固有値問題とよぶのでしょう。
結論からいうと、一般固有値問題も通常の固有値問題も本質的には同じです。
具体的には、行列[K]をコレスキー分解というテクニックを使うことで、通常の固有値問題として解くことができます。
コレスキー分解を行うには、三角行列を知る必要があります。三角行列は、対角項と右上の項が零ではなく、それ以外の左下の項が零である行列をいいます。以下のような行列です。
この三角行列Uを使って、行列Kを分解します。
これをコレスキー分解といいます。
ここで、三角行列を使ってベクトル{φ}をかけます。これを{ψ}とします。
さて、ここでもともとの以下の行列を考えてみましょう。
左辺は、こうかけますね。
右辺は、こう展開できます。
左辺と右辺に、それぞれ行列Uの転値行列の逆行列をかけてみます。
左辺は、行列Bを与えることで、以下のようにかけます。
右辺は、
この左辺と右辺をつなげると、
ということで、一般固有値問題は通常の固有値問題と同じになることがわかります。
細かいところを考えるのが面倒な人は、色々と数式をいじれば、一般固有値問題も普通の固有値問題と同じで扱えて、その固有ベクトルも直行していて、N次元ならN個存在するんだ〜って覚えておけば良いと思います。
色々と数式をいじってみましたが、何よりも結論をよく覚えておくことが大事です。
さて、やっと次回に物理の話に進みましょう!
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