2012年12月8日土曜日

クリステンセンの最後のテーマは素朴で重要なものでした。

イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ
クレイトン・M・クリステンセン ジェームズ・アルワース カレン・ディロン
翔泳社
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あの”イノベーションのジレンマ”のクリステンセンが、彼らの経済学での理論をベースに人生の課題解決について語ります。

僕は、自分の人生に影響を与えた本を上げてくれ、と問われれば、そのひとつにクリステンセンの”イノベーションのジレンマ”をあげるほどなので、クリステンセンの本は時間とタイトルに興味があれば時間を割くようにしています。

本の冒頭に、以下の問いが書かれています。
・どうすれば幸せで成功するキャリアを歩めるだろう
・どうすれば伴侶や家族、親族、親しいたちとの関係を、ゆるぎない幸せのよりどころにできるだろう?
・どうすれば誠実な人生を送り、罪人にならずにいられるだろう?

自分のキャリアに不安を抱え始めている、社会人成り立ての自分は、ハーバードを卒業していった優秀でモチベーションも人一倍ある彼らが、時にこれらの質問に答えられず、大きな過ちを犯していることをクリステンセンが嘆いているのを知り、三度クリステンセンの本を手に取りました。


以下、個人的メモと共に、この本を振り返ってみます。

第一部

わたしには意見がない、理論には意見がある。

クリステンセンの書籍である、イノベーションへの解を読んだことがある人なら、クリステンセンらしい主張だなと笑みがこぼれるだろうと思います。

クリステンセンは様々な書籍でこう述べています。相関ではなく因果関係を、事例ではなく理論を。様々な課題に対する答えは、常日頃、状況と共にも変わります。人生の課題への解答であれば、唯一解は存在しません。もちろんです。クリステンセンは、答えではなく、理論を人生に役立てろというヒントを示しています。

衛生要因でなく、動機付けでモチベーションを維持する。

衛生要因。なぜ、あえてこの言葉を使うのか、個人的には理解に苦しむところですが、簡単にいってしまえば、金銭や役職になるでしょうか。この、金銭や役職を得ること以外から出る欲求と、金銭を得るためだけの欲求が満たされたのでは、人間のモチベーションへの達成感が大きく違うことは、よく理解できるところです。

創造的戦略と意図的戦略のバランスを図る

成長した新興企業の9割以上は当初使っていた戦略を途中で変更しています。ホンダのスーパーカブがその事例として述べられています。確信の得られる戦略が得られるまでは、ひとつひとつの戦略から学びつつ修正していく必要があり、これをすばやく繰り返す必要があります。

新しい仕事を引き受ける前に仮定への立証

成功するために必要な仮定のうち、どれが立証される必要があるかをよく考える必要があります。

自分の資源をどのように費やすか

企業も、人生も同じで、自分の資源をどのように費やすかを考える必要があります。制度によっては、会社の長期的成長を阻害するように、社員の資源を投資するような制度も存在しています。人生も短期的な見返りを求めていては、もうすでに資源を投資するタイミングを逃してしまう時もあるでしょう。

第二部

第一部では上述したように、どちらかといえば仕事についてのアドバイスが多いです。
しかし、最もページ数を割いている第二部では、プライベート(得に家族)についての、記述となっています。クリステンセンが、これだけのページ(原作もそうなのかは不明だが)を割いたのには、強い意思がここにあるのだろうと思います。
個人的には、これからの人生へのアドバイスとして読み進めていきました。

良い金と悪い金

意図的戦略が定まる前は、”成長は気長に、利益は性急に”
意図的戦略が定まれば、”成長は性急に、利益は気長に”
自分の資源をどのように費やすか。にもつながりますが、もうすでに、人生の様々なことに、投資するべき時期は始まっているのかもしれません。

全ての生徒が学校で達成感を味わえるわけではない

生徒は学校にいくことが用事ではなく、用事を片付けるために雇う手段でしかない。

犠牲と献身

相手が必要としている用事を理解し、行動にうつすこと。

未来をアウトソーシングしていないか

子供に必要な経験を与えているか。

経験の学校ともつながります。
課題を解決するのに、最も役立つ人は、その課題に似た課題を解決してきた人だ。

第三部

限界費用と総費用

ひとつの嘘をつく限界費用は、総費用を見ると大きくかえってくる。それに気づかず短期的な視点しか見ていないことがあります。



クリステンセンが、長く考えてきた経済問題が彼の人生にも大きく影響を与えてきたんだということが、よく分かる書籍でした。彼のように、日頃からカオスな世界を少しは理論だてて見る目を持っていたいところですね。

(なんだか、読み返してみると、古くから語られている生活の上での哲学な気もしますが、これを経済学と結びつけているというのが、最近の流行りにも合致している気もしますね。)

全体的に、良い本でした。