2013年10月22日火曜日

モード解析ってなんだ?って人のための固有値問題と振動モードについて その4

モード解析入門
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その1で固有値問題を、その2で一般固有値問題を、その3で多自由度の振動の運動方程式が一般固有値問題であることを説明しました。

では、もう少し、振動の運動方程式が一般固有値問題であることの、物理的な意味を考えてみます。

数学的な特徴と物理的な意味を考える


上の式より、振動の運動方程式は一般固有値問題であることが分かりました。つまり上の式を満たすベクトル{X}は、固有ベクトルであり、N自由度であれば、N個存在し、それぞれのベクトルは直行することになります。また、固有ベクトルは絶対値としてではなく、ベクトル{X}の要素の比としてしか表すことができません。
(ベクトル{X}は、各質量の振動の最大振幅を表します。)

そして、この比は、その1ではλの二次方程式の解で決まったように、ΩのN次代数方程式としで決まることになります。Ωは、角振動数ですから、N個の角振動数によって、最大振幅の比が決まります。

つまり、N個の固有ベクトル{X}を求めることは、N種類の振動の状態を求めていること、と言って良いと思います。本書から抜粋すると、
"振幅は、絶対値が不定のままで特定の振動の形(モード)をとり、しかもその形は・・・・系固有の質量とばねこわさのみで決まる値であるから、これらを固有モード(natural mode)という。・・・・これらが、外作用を受けない自由な状態で持続する自然な(natural)な振動数であり形だかたである。"
(振動の絶対値が不定なのは外力が確定していないからです。)

つまり、振動を固有値問題を解くことによって把握できるということです。

更に、嬉しいのは、固有ベクトルの直交性です。ここでは結論だけ書きます。

固有ベクトルの直交性のために、各振動モードは、力学的にも独立し、エネルギー的にも無関係に考えることができます。得に、強制振動において、ある固有モードにおける加振力は、その固有モードの振動を生じさせるだけで、他の固有モードは決して励起することはありません。

(ちょっと、飛ばしますが、)つまりは、多自由度の振動問題をもっとシンプルに一自由度の振動として考えられること、また、ある振動モードの振る舞いも独立して考えることができるといえます。

得に、工学的に重要な低次の振動モードを考えていけば良く、複雑な他自由度の振動問題をシンプルに扱うことができる恩恵は大きいといえます。

では、次回は実際に解析も踏まえて何か振動問題を考えてみたいと思います。

2013年10月21日月曜日

モード解析ってなんだ?って人のための固有値問題と振動モードについて その3

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前々回は固有値問題を扱いました。
ある正方行列Aに対して、向きを変えずに大きさしか変えないベクトルである固有ベクトルが存在することが分かりました。

前回は、正方対称行列を用いて、一般化固有値問題について学習し、一般化固有値問題と通常の固有値問題が同質であることを示しました。

また、重要な性質として、固有ベクトルが、N次の場合は、N個の固有ベクトルが存在し、これらのベクトルは直行するということを覚えておきましょう。

さて、やっと物理の話に入っていきましょう。

振動問題について考える

ここで、二自由度の振動の運動方程式を考えてみましょう。

一般的に以下のように、行列を使えば一自由度の運動方程式のように表現することができます。


ここでは、簡単のため外力は考えず、減衰もない運動を考えます。
各行列は以下のようになります。(aとbは、振動する各質量とバネモデルだと思ってください。)




1自由度のように運動を考えると、各質量の運動は以下のように複素指数関数のように表せます。


なので、以下のようにかけます。



これを行列式に代入すれば、

更に、




とかけます!
以下のように、書いてもいいですね。(こちらの書き方の方がイメージしやすいかもしれません。[K]も[M]も、正方対称行列なことに注意!)


はい!なんということでしょう!!
正方対称行列の一般固有値問題じゃん!ということに気づきます。

なので、固有ベクトル{X}が2つ存在します。その固有ベクトルは、前々回に書いたように大きさがある比の形でしか決まりません。また、それぞれの固有ベクトルは直行しています。

これは、二自由度でなくて、N自由度でも同じです。

ここまでで、振動の運動方程式を展開すると、一般固有値問題になることが分かりました。が、それが物理的に意味すること。そして、我々への恩恵は何でしょうか?

次回は、もう少し踏み込んで、数学的な特徴と物理的な意味のつながりを考えたいと思います。

2013年10月14日月曜日

モード解析ってなんだ?って人のための固有値問題と振動モードについて その2

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前回の続きを考えていきます。

前回は固有ベクトルについて考えました。
固有ベクトルは行列をかけても、向きを変えることなく、大きさだけ変えるというベクトルでした。そして、そのベクトルはN次元の場合はN個存在し、それぞれのベクトルは直行している。という性質があるものでした。

よく考えてみると、興味深い性質をもっていますが、”で、それで?”となる人もいるかと思います。

固有ベクトルを説明した理由を解説する前に、もう少し数学の下準備をします。

一般固有値問題について考える

前回考えた固有値問題は以下のような数式から始めました。


今回は、一般固有値問題について考えます。


[A]と[K]という正方対称行列を考え、この行列にベクトル{φ}を積した時を考えます。ベクトル{φ}が変換されたとしても、同様に向きをかえずに大きさだけが異なるベクトル{φ}について考えてみます。

もともとの固有値問題の単位行列[I]を、正方対称行列[K]にしたので、一般固有値問題とよぶのでしょう。

結論からいうと、一般固有値問題も通常の固有値問題も本質的には同じです。

具体的には、行列[K]をコレスキー分解というテクニックを使うことで、通常の固有値問題として解くことができます。

コレスキー分解を行うには、三角行列を知る必要があります。三角行列は、対角項と右上の項が零ではなく、それ以外の左下の項が零である行列をいいます。以下のような行列です。


この三角行列Uを使って、行列Kを分解します。


こんな感じです。
これをコレスキー分解といいます。

ここで、三角行列を使ってベクトル{φ}をかけます。これを{ψ}とします。


もちろん、以下の関係も成り立ちます。


さて、ここでもともとの以下の行列を考えてみましょう。



左辺は、こうかけますね。

右辺は、こう展開できます。


左辺と右辺に、それぞれ行列Uの転値行列の逆行列をかけてみます。

左辺は、行列Bを与えることで、以下のようにかけます。


右辺は、

という感じになります。

この左辺と右辺をつなげると、

ということで、一般固有値問題は通常の固有値問題と同じになることがわかります。
細かいところを考えるのが面倒な人は、色々と数式をいじれば、一般固有値問題も普通の固有値問題と同じで扱えて、その固有ベクトルも直行していて、N次元ならN個存在するんだ〜って覚えておけば良いと思います。

色々と数式をいじってみましたが、何よりも結論をよく覚えておくことが大事です。

さて、やっと次回に物理の話に進みましょう!

モード解析ってなんだ?って人のための固有値問題と振動モードについて その1

最近モード解析を以下の本を使って勉強しました。

モード解析入門
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振動のモードの意味をよく分かっていなかったのですが、今回勉強して少し感動したので、まとめておきます。知っている人には当たり前ですが、知らない人がモード解析する場合は、必ず知っている方が良いと思います。

固有値問題について復習しましょう

早速ですが、固有値問題から、復習します。(モード解析と、固有値問題がつながると感動するので、このまま進んでください。)

(行列Aは二行二列の行列とします。)

左辺は、{φ}ベクトルに行列Aを積します。
右辺は、{φ}ベクトルに単位行列をλだけスカラー倍したものと積します。

幾何学的に考えると、
左辺は、{φ}ベクトルに変換行列Aをかけています。
右辺は、{φ}ベクトルに単位行列をスカラー倍なので、{φ}ベクトルを単純に方向を変えずに、大きさだけが変化しています。

つまり、変換行列Aに対して、方向を変えずに、大きさだけが変化する{φ}ベクトルが存在するということになります。

ここで、上式を展開すると、

となります。

この式がベクトル{φ}=0の解にならないためには、{[A]-λ[I]}の行列式が0であることが条件となります。連立方程式の解がもつ条件の逆になる。と考えれば、分かるかと思います。(連立方程式の解が存在する場合は行列式が0にらないが、解は自明の解であるベクトル{φ}=0になってしまい、方向を変えずに、大きさだけが変化する{φ}ベクトルが存在しない。という意味になります。そのため、方向を変えずに、大きさだけが変化する{φ}ベクトルが存在するためには、行列式が0である必要があります。)

{[A]-λ[I]}の行列式が0になることは、行列式を展開すれば、λの二次方程式を解くことにつながります。一般的な二次方程式なのでλの解はふたつ存在することになります。

さて、この場合、ベクトル{φ}の解は、先ほどの説明からも分かるように、一意的に決まらず、ベクトル{φ}の各要素の比としてしか答えが求まりません。ベクトル{φ}の各要素を{φ_1,φ_2}とおけば、φ_1/φ_2 = αというような形になる答えしかとりません。

また、λの解がふたつ存在するので、実際は、φ_1/φ_2 = α_1、φ_1/φ_2 = α_2というふたつの解の状態になります。

つまりは、単純に方向を変えずに、大きさだけが変化する{φ}ベクトルは、行列Aに対して以下のふたつのベクトルが存在するということです。(2次元なので2つです。省略しますがN次元でれば、N個存在します。)


このベクトルを固有ベクトルと呼んでいます。

しかも、おもしろいことに、この2つのベクトル{φ}は直行する性質を持ちます。
この、直行する性質を持つというのが、物理的な意味でモード解析を考える時には、面白い意味を与えます。

以上の説明がよく想像できない場合は、以下のサイトも見てみてください。
http://homepage2.nifty.com/eman/math/linear09.html

数学の話しかしていませんが、続きは、また次回書きます。