2015年10月29日木曜日

トヨタ 危機の教訓

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トヨタってやっぱりすごい会社ですね。

2008年に発生したトヨタのリコール問題。電子制御トラブルも疑われた当時、一体何が起きていたのか、発生した課題にどのように対応したのか、トヨタの社外の人間が活かせることはあるのか?それらを、多くの関係者からのインタビューや調査から説明しているノンフィクションです。
(豊田章男社長も、インタビューに応じてます)

・企業文化がいかに重要か

 改善活動、リーン生産方式、ゲンチゲンブツ、5つの何故、などを産んだトヨタの文化。そういった企業文化をトヨタウェイと呼んでいます。このトヨタウェイが今回の危機でもひとつのキーになっていると思います。

 例えば、今回の危機では、実際の数字的な評価よりも、市場の評価はどんどん悪化していきました。
 これは、米国の市場の空気感と、日本の幹部の空気感との間に差異があったため、適切な対応を早い段階でできていなかったためです。トヨタにとっては、ゲンチゲンブツが疎かになっていたといえます。

 一方で、トヨタはトヨタらしい組織づくりを地道に行っていた部分もあります。リーマン・ショックが発生した時、急激な減産に自動車メーカーは襲われました。その時の対応は、海外メーカーとトヨタでは大きく違いました。海外メーカーは、経営的な指標を維持するため、人材をカットし、なんとか危機を乗り越えようとしていました。
 その中でトヨタは、一人一人の社員をトヨタウェイを知る貴重な人材と考え、減産の中でも基本的には社員を維持しました。苦しい状況でも、社員が率先して改善活動を実施していた例として、本書では取り上げられています。
 こうして、生産の増減に対応できる体制を地道に作り、何よりも一人一人が、トヨタウェイを実践できる組織へと変化させることを優先させていました。これは、組織文化の大きな違いだな。と感じます。

 しかし、世界一の販売数を達成しようと急激な成長をしていたトヨタは、今回の危機に改めて直面し、増えた従業員に対して十分にトヨタウェイを知る人材を教育できていなかった。と考えるようになります。彼らは、今回の危機から、原因を考え、教育を変える必要がある。という新たな改善策を見出しました。これもトヨタウェイに即していますね。
 (リコールの対応を従来より早める。など、実際的な対応もしています。)

 トヨタウェイのような組織の文化を習得するには、長年の実践的な教育が必要になるでしょう。いわゆる人材の流動性を良しとするアメリカ型といわれるような組織づくりとは変わった手法で、トヨタはより、強い会社に毎日なろうとしています。

 話は変わって、VolksWagenの不正排ガス問題。ドイツの自動車メーカーのVolksWagen。彼らは今回のことで何を学び、どういった組織を作っていこうとするのか、将来が気になるところです。

 組織文化について考えさせられた一冊でした。


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